ライター藤田華子
【PR:ローソン×深浦康市九段】30年間、頭からつま先までほとばしる「地球代表」の一途な想い--深浦康市九段の素顔
ライター: 藤田華子 更新: 2022年05月05日
スイーツを口にする時間は、ホッと一息つき、素の自分に戻るとき。今回はローソンの「バスチー(バスク風チーズケーキ)」を食べながら、深浦康市九段の素顔に迫ります。
将棋に対する一途な想いが、頭のてっぺんからつま先まで詰まっている--対局中の深浦康市九段から発せられる空気から伝わる熱量の大きさ。タイトル戦登場8回、獲得3期。そのほか棋戦優勝は10回という成績を残し、棋士人生30年を超えた今なお、深浦九段の勝負にかける情熱はたぎり続けています。
そして藤井聡太竜王や羽生善治九段が将棋ファンから絶対的王者として「将棋星人」と呼ばれるのに対し、深浦九段には「地球代表」との呼び名が。ファイトあふれる戦いぶりで将棋星人から勝利をもぎ取っていく姿に、「地球を守れるのはこの人しかいない!」と思ったのです。
今回はその熱量について、お好きな作品『SLAM DUNK』『竜馬がゆく』と、エピソードを中心に迫りました。年齢を重ねた今だからこそのダンディなお姿に加え、呼び名にふさわしく水道橋の宇宙ミュージアムTeNQ(テンキュー)での撮影も決行。今日も、深浦九段は地球を守ります!
負けることも、曲がったことも大嫌い
――深浦九段といえば、粘り、根性などという熱いキーワードが浮かびます。ずばり、まっすぐに将棋に向き合い続けてこられた理由を教えていただけますか?
やっぱり一番大きいのは、負けず嫌いだからだと思います。それは子どものころからで、小学4年生の時にクラスで将棋が流行ったのですが、私が指しているときに口を出して助言してくる子がいたんです。助言は大きなマナー違反なのですが、その子は友だち同士だからいいかなって感じで。でも私はすっごく腹が立って「助言するなよ!」って。相手はクラスで一番体が大きくて喧嘩が強い子。「何だよ、深浦のくせに」と言われ、取っ組み合いの大喧嘩になりました。
――結果よりも、自分の勝負に口を出されたことに怒ったんですか?
そうですね、昔から曲がったことが嫌いです。
――お好きな作品として『SLAM DUNK』『竜馬がゆく』を挙げてくださいましたが、ますます深浦九段らしいと思いました。
たしかに、今のエピソードに通じる部分があるかもしれませんね(笑)。『SLAM DUNK』は、山王工業戦のシーン、何度読んでも感動してうるっとしちゃって...!
――作者の井上雄彦先生が「これ以上の試合は描けない」とおっしゃっている試合ですね。
ああ、そうなんですか!最後、同じチームにいながらずっとライバル関係にあった桜木花道選手と流川楓選手がようやく力を合わせて...ここでは結果は伏せますが、ずっとセリフが無いんですね 、あの数ページ。でも、とてつもない迫力がある。本当に印象に残っています。
――冒頭のお話を伺うと、熱く一本気な桜木選手と重なりますが、登場人物ではどなたに感情移入しますか?
たしかに...桜木選手に似ているかもしれません(笑)。自分としては、三井寿選手が好きです。才能を持ちながら、一時期バスケを離れて不良になってしまって。一度挫折してからまた全国大会に出場する選手になるんです。自分もかつて、リーグ戦に5~6年いて、なかなか芽が出ない時期がありました。そして初めてタイトルを獲得したのは35歳の頃。結果を出すのが遅かったのも、彼の軌跡と自分とを重ね合わせてしまう要素かもしれません。監督の安西先生に三井選手が「バスケがしたいです......」と素直な気持ちを発するシーンも、一途な想いが伝わってきます。
――「ABEMA師弟トーナメント」では、作戦会議で弟子の佐々木大地七段の「こんなふうに攻めようと思います」という発言に、深浦九段が「それが君らしいよ」と何気なく返されたシーンがありました。深浦九段は、お弟子さんからしたら、選手の自主性を伸ばす安西監督のような存在でもあるのかなと。
あっ、それは嬉しいなあ。そういう存在になれたらとは思います。師弟関係はいろいろあります。弟子が悪いことをしたら注意はしますけど、本人が悩んで決めたなら、よほどのことがない限りは「それで行こう!」と背中を押しています。私も昔は兄弟子や地元の方に背中を押してもらっていて、安心感がありました。同じように佐々木に接したいと思いますね。
――負けず嫌いとのことですが、負けた悔しさで壁をたたいて怪我をしたこともあるとか?
そんなにひどい怪我ではないんですが、めちゃくちゃ痛くて(笑)。ある日お風呂に入っているとき、それを水面でやれば問題ないと気づいて、それから負けた日の夜はグーで水面を叩いています。我ながらいい発見だと思うんですよね。
――今もですか?
今もです。
――ご家族は驚かれないですか、お風呂でバシャバシャ!と。
もう慣れたんじゃないですかね。勝ったら静かに入浴しますし(笑)。
――長い棋士人生のなかで、勝負にかける熱量は変わらずでしょうか。
昔も今も、まったく変わらないですね。奨励会の頃は三段リーグの厳しさに触れて、棋士の先輩から「遊びに行こう」って言われても対局の3日前からもう断ったりしていて。いまは3日前ならば飲みにいきますが(笑)、将棋への想いは一途なまま変わっていません。
――世の中がバブルの絶頂で浮かれていた頃、先生はカラオケもせず、ナンパなこともせず、家で将棋盤を抱えて泣きながら過ごしていたと書籍で拝読しました。一途さを象徴するようなエピソードです。
三段リーグの頃がピークですよね。プロになれなかったら長崎に帰るしかないですから、なんとしても「プロになるんだ」という想いで自分を追い込んでいました。三段リーグって、18局戦って最低でも12~13勝しないと昇級ラインにいかないんです。終わってみると10勝程度のことが多くて。そういうときに、TVも何もない家賃3万円のアパートの部屋で、将棋盤を抱えて泣きました。
――そのときの自分に、今の深浦九段が声をかけるとしたら?
ええっ...どうかなあ...なんて声かけるんだろう......でも、あんまり優しい言葉は浮かばないですね。ただ、あの頃があるから、今日こんなに素敵な撮影をしていただく機会もあるわけで。全部つながっているんですよね。
地球代表、参上。「将棋はリズム感」という師匠との思い出
――水道橋にある宇宙ミュージアムTeNQで、「地球代表」の名にふさわしいお写真を撮影できればと足を運んでいただきました。
なかなかこんな経験はできないので、とても興奮しています!これも「地球代表」と呼んでくださる将棋ファンのみなさんのおかげです。その名に恥じないような結果を出していかないといけませんね。
――宇宙のことは、お詳しい?
実は、そんなに(笑)。私が知っている範囲では、将棋界で宇宙好きはコーヤン(中田功八段)ですね。サッカー部の合宿のときに同室で、ずっと宇宙のロマンについて話を聞いた記憶があります。私は眠くて、何を話していたかあまり覚えていませんが...(笑)。彼はロマンチストだと思います。
――同世代の棋士だと、兄弟子の森下卓九段とも深いご関係ですよね。
本当にいろいろお世話になっています。一番印象に残っているのは、奨励会に入って間もない頃に森下さんが「気合があれば名刺で割り箸を切れる」とおっしゃっていたこと。師匠の(故)花村元司九段が将棋を指導する裏側で、弟子のみんなでお茶出しをしていたんですよ。空き時間に森下さんが「ちょっと割り箸持ってて」っていうから何かと思ったら、料亭のショップカードで割り箸を切ると言い始めて。当時12歳の僕は「どう見ても切れるわけないのに」「これは大変な世界に入ってしまった...」と思いましたね。そのときは割れなかったのですが、「気合が大事」という気持ちはよく伝わってきました。
――熱い想いをそんなかたちで教えてくださったのですね(笑)。師匠の(故)花村九段との思い出もお聞かせください。
中学1年のころにふたりで喫茶店に入ったとき、学校の授業で何が得意か聞かれたので「音楽です」と答えたんです。小学校の頃に合奏をやっていて、譜面も読めましたし。そしたら「それはいいね、将棋はリズム感が大事だからね」と。
――優雅な響きのコメントですね。
まわりから伝え聞く花村先生は"鬼の花村"と呼ばれて、怖い、厳しいイメージだったんですが、自分にとっては"仏の花村"でした。最後の弟子だったこともあり、優しい言葉をかけてもらって。大切な記憶です。
――弟子の佐々木七段と一緒にTwitterで発信されていて、絆の強さが伝わってきます。佐々木七段は、深浦九段にとってどのような存在でしょう。
同郷の長崎出身ということで、師弟で繋がれたのは、大きな縁だと思います。佐々木とは、最初の出会いが空港で、彼が心臓に難病を抱えて鼻に酸素のチューブをつけていた状態でした。プロになれるかというだけではなく、健康面でも案ずる気持ちが大きくて。奨励会でもし倒れたら、私が駆けつける心構えでした。そういった大変な状況を乗り越えてプロになれたのは、本当によかったです。プロになってから、なかなか昇級などの芽はうまくは出ていないですけど、しっかり努力して力がついてきて、それが成績に表れてきたかなと思います。
――師匠として、「こんな日が来たらいいな」と思い描く未来はありますか?
私は35歳の時にタイトルを獲りました。九州のタイトル保持者は、当時は加藤一二三九段以来30数年ぶりで。ぜひ達成したいと思いましたし、九州にいらっしゃる方々の将棋への想いの高まりも感じました。「将棋をやってみたい」とおっしゃってくださる方も増えて――タイトルを獲るのは本人のためでもありますし、周囲への大きな影響もあるんだと実感しました。佐々木もぜひ実現して、それを感じてほしいですね。
――『竜馬がゆく』も、お好きな作品として挙げてくださいました。ご自分のためだけではなく、周囲のために、という発言がつながってくるような気がします。
ああ、たしかに。『竜馬がゆく』は、郷田さん(郷田真隆九段)とも話題になったことがありますし、棋士の間でも人気の本なんですよ。私も20代の頃に何度も読み返しました。竜馬が、人のために、大きく見れば日本のために薩長同盟を結ぶなど、自分から大義のために行動している姿にとても感銘を受けます。
――地元・佐世保は、深浦九段にとってどんな場所でしょう?
やっぱりあったかい場所ですよね。なかなか帰れていないですが、小学校の同級生に会うとすぐに将棋を忘れてタイムスリップできます。貴重な時間です。
また、私が王位戦で3連敗したとき、4局目が佐世保だったんです。非常に厳しい状況で、きっと地元の方もどう声をかけていいのか悩んだと思うんですけど、「これからだよ」って言っていただいている気がして。そこから4連勝できてタイトルを防衛することができました。言葉にならないものも含めて、ありがたいなと思います。
――深浦九段が一途に将棋に向き合っているからこそ、感じ取れるものなのかもしれませんね。
そうかもしれませんね。スポーツを観ていても、選手が「応援してくれる方がいるから頑張れる」とおっしゃるメッセージに共感するばかりです。
――ご家族と一緒に過ごす時間も、素の自分に戻れる時間だと思います。どんなご家族でしょう?娘さんは高校生で、お年頃と伺っています。
何かきっかけがあったわけではないのですが、ちょっと前まで冷戦状態でした(笑)。やっぱり年頃なんでしょうね、妻と娘の会話の輪に自分も加わりたいんですけど、遠ざけられている空気で...だんだんと、成長するにつれて関係も良くなっていくのかなと思います。
――佐々木七段は、深浦九段の奥様とのLINEで料理のレシピを教えていただいているとか。
そうなんですよ、聞いたときはびっくりしました。佐々木のことは妻もいろいろと気にかけていて、息子みたいな感じかもしれないですね。「おいしいスイーツ見つけたらから大地くんに渡して」って言われて、自分が運んだりもします(笑)。
――今日は私服でお越しいただきました。ポイントを教えてください!
最近は、服は妻が用意してくれますね。研究会に行く時は弟子もいるんであまり砕けた格好ではなくて、少し上司感を出してジャケットみたいな服を着たり。髪型は、この感じは初めてで...家族は何て言ってくれるかな、楽しみです。
「バスチー」をパクリ!おや、このリアクションは...?
――では、お話も進んだところでおやつタイムに入ります。今日はローソンの「バスチー」をお召し上がりいただきました。いかがですか?
めちゃくちゃ、うまい!
――「もち食感ロール」をお召し上がりになった佐々木七段も、まったく同じ第一声でした(笑)。
あっはっは、そうでしたか!ローソンさんのスイーツはいろんな種類がありますが、もともと私はチーズケーキが好きでつい「バスチー」に手が伸びてしまうんです。そして食べるたびにおいしいなって思いますね。
タイトル戦のおやつは、モンブランかチーズケーキが多かったですね。チーズケーキは裏切らず期待に応えてくれるんで、対局がんばろうって思います。
――ふだんから甘いものを?
好きですね。研究中も食べます。コンビニで、こんなにクオリティの高いものが食べられると嬉しいですよね。このあいだも、「ミルクアイスバー」をいただきました。期間限定でアイテムが入れ替わるので、それをチェックするのも楽しいです。
――お食事は、健康面を気遣うことも?
肌が弱いので、気にしていますね。ナチュラルローソンさんはグルテンフリーのものが多くてそこも助かっています。「ベジップス」という野菜チップスは一時期ハマっていてすごい頻度で食べていました。ちょっと前まで高級スーパーに行かないと買えないようなアイテムだったんじゃないかな、食べて安心な商品を手軽に買えるのが嬉しいです。
――スイーツの思い出を教えてください。
弟がいるのですが、卵ボーロを1袋分けるのに、1粒ずつ食べるんです。ちゃんと公平にして、それで1つ余ったら自分が食べる(笑)。ふとそんな思い出が浮かびました。弟も負けず嫌いな性格は似ていて、喧嘩はよくしましたね。
10問アンケート
インタビューで聞ききれなかった10の質問を、深浦康市九段に伺いました。
- Q1
- お名前の由来は?
- 深浦
- 親戚に「剛(たけし)」という方がいて、そこに「一(いち)」をつけて「剛一」という名前にしたかったそうなんですが、いろいろ考えて「康市」になりました。漢字はだいたい間違えられますね(笑)。
- Q2
- 好きなお店の好きな一品を教えてください。
- 深浦
- 自分の実家が以前居酒屋をやっていて、近くに佐世保バーガーの『ミサロッソ』という店舗があります。佐世保バーガーってすごくボリューミーで、お店だとステーキのようなものが挟まっていたりしておいしいんですよ。帰るたびに食べています。
- Q3
- 粘り強さを出すために、対局の朝には必ず、納豆と生卵を食べるとインタビューで拝読しました。現在もでしょうか?
- 深浦
- そうですね、日常化してきました。
- Q4
- ドラマ鑑賞がご趣味だとか。お好きな作品、俳優さんを教えてください。
- 深浦
- 石原さとみさんが好きで、作品は結構見ています。『失恋ショコラティエ』とか『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』『恋はDeepに』とか。家族からはちょっと引かれています(笑)。あと、勝村政信さんとはサッカー番組でご一緒して、それから親しくさせていただき舞台などでは楽屋でご挨拶もして。応援しています。
- Q5
- 棋士になっていなかったら、何になっていたと思いますか?
- 深浦
- 小学校の先生かな。子どものころに漠然と思っていました。
- Q6
- お好きな『ドラゴンクエスト』『ドラゴンクエストウォーク』の魅力を教えてください。
- 深浦
- 『ドラクエ』は、新作がでたら毎回買っていますし、対局が途切れたところで"ドラクエ休暇"をいただいてます。そのあいだは仕事を入れないで、食事の後は部屋にこもってゲームに興じて。『ドラクエウォーク』は、ゲームをきっかけに夜に家内とウォーキングするのが日課になりました。冒険ランクは83くらいです。飯野さん(飯野愛女流初段)や、貞升さん(貞升南女流二段)さんは、『ドラクエウォーク』仲間です。ローソンさんと『ドラクエウォーク』はコラボもされていますよね。期間限定でローソンさんの近くに行ったらくじ引きができてアイテムをいただけたり。またぜひよろしくお願いします、ローソンさんを探して歩きますので(笑)。
- Q7
- いつか会ってみたい人は?
- 深浦
- Mr.Childrenの桜井和寿さん。実はファンクラブも入っています。知り合い経由でお会いする機会があったのですが、残念なことにその日に対局が入っていて。ほんのちょっとだけ不戦敗することも頭をよぎりましたが(笑)、それは自分の本道から逸れるので、次の機会を楽しみに待っています。カラオケでもミスチルを歌います。
- Q8
- いつか行ってみたい場所は?
- 深浦
- スペインですね。私は趣味でサッカー観戦をすることが多いのですが、好きなチームはバルセロナなんです。ロナウジーニョがいた2006年頃のチームが好きですね。2006年のクラブワールドカップが横浜で開催されたんですけど、子どもを連れて観戦しました。子どもよりも自分がはしゃいでいたと思います。ロナウジーニョの得点シーンも見られて、とてもいい試合でした。
- Q9
- 10年後、どんな棋士になっていたいですか?
- 深浦
- たくさん勝つことは大変だと思いますが、盤上で何かを表現できるように――やっぱり深浦さんの将棋だなと思っていただけるような10年後になっていたいです。
- Q10
- ファンの方へメッセージをお願いします。
- 深浦
- 応援してくださる方がいらっしゃる限り、自分の力すべてを込めて対局をしていきたいと思います。今後もよろしくお願いします。
写真:阿部吉泰
撮影協力:宇宙ミュージアムTeNQ
深浦康市九段
1972年2月14日生まれ。長崎県佐世保市出身。(故)花村元司九段門。
1991年10月、四段昇段。1993年、第11回全日本プロトーナメント決勝で米長邦雄九段を下して棋戦初優勝。2004年、順位戦でA級昇級。2007年、第48期王位戦で羽生善治王位から初タイトルを奪取。その後、3連覇を果たす。 2020年、第69回NHK杯選手権で優勝。タイトル戦登場は8回、獲得は3期。そのほか棋戦優勝は10回。
矢倉、雁木が得意、対振り飛車には居飛車穴熊などの持久戦を好む居飛車党。玉の堅さを大事にする重厚な棋風で、終盤戦も強く高い勝率を誇る。ネット上では、「地球代表」という異名で親しまれる。趣味はサッカー観戦。