ライター藤田華子
【PR:ローソン×遠山雄亮六段】笑顔で目線を合わせて。奥様と愛猫との日常、将棋を言語化する挑戦--遠山雄亮六段の素顔
ライター: 藤田華子 更新: 2021年12月02日
スイーツを口にする時間は、ホッと一息つき、素の自分に戻るとき。今回はローソンの「生ガトーショコラ」を食べながら、遠山雄亮六段の素顔に迫ります。
まだ棋士がSNSをすることのなかった時期、誰よりも早くブログやTwitterを使った普及活動に取り組まれていた遠山六段。現在も「cakes」「文春オンライン」「Yahoo!ニュース」などで執筆されており、遠山六段をきっかけに将棋ファンになったという方も少なくありません。
普及で意識しているのは、「受け手の目線に合わせること」。同じ空を見ても青さが異なるように、棋力や立場によって将棋の見え方は異なります。では誰に合わせて発信するのか、どうすれば伝わるのか--そんな課題をどう追求しているのでしょう?
184cmの長身をかがめ、猫ちゃんにも目線を合わせる優しい姿に、遠山六段の魅力を垣間見ました。将棋にも普及にも猫ちゃんにも真摯な遠山六段のインタビューです!
大切な家族が2匹増えた日
――大の猫好きとして有名です。今日はタレント猫ちゃんに出演いただきましたが、時折SNSや解説でお写真を見せてくださり和みます。
それは嬉しいですね。もともと、妻と一緒に地域猫ちゃんを可愛がっていたんです。地域猫ちゃんって、保護はされていないけど去勢や避妊の手術をしていて、近隣の方に可愛がられている猫ちゃんのことです。それで愛着が湧いてきて、近所にできた猫カフェに通うようになって。私も妻も動物を飼ったことはなかったんですが、だんだん「保護猫を迎えたいね」って。ちょうど引っ越しのタイミングだったので、ペットを飼育できる別の町のマンションへ移りました。
――猫ちゃんとの出会いは?
商店街で保護されていた子を引き取ったんです。1匹だけの予定が、2匹のほうが寂しくならないわよって保護団体の方にアドバイスをもらって兄妹で2匹お迎えすることに。名前は「ゆうき」と「りん」。四字熟語の「勇気凛々」からとりました。私と妻の大人ふたりの生活は落ち着いたものだったんですけど、一気に家の中が賑やかになりましたね。偶然、10回目の結婚記念日にやってきて、その日がもっと大切な日になりました。
――猫ちゃんと仲睦まじい様子が浮かびます!
それがなかなか馴れ合ってくれなくて、いまのところ膝に乗ってきたことは1回もありません(笑)。猫って基本的に自分がして欲しいこと以外は嫌がるんですよね。撫でて欲しいときに撫でられたら喜ぶし、遊んで欲しいとき以外は逃げちゃうし。いいですよねえ、思うがままに猫みたいに生きられたら最高ですよ。
――遠山六段の記事を拝読していると、まわりへの敬意に満ちた方だなあと感じますが、猫ちゃんの気持ちも大切にされているんですね...!
そりゃあそうですよ、家族ですもん!何を考えているかなんて完全にわかるわけではないんですけど...つい、この話になると熱が入ります(笑)。
寺社巡り、先輩棋士と楽しむ生涯の趣味・テニス
――神社仏閣巡りもご趣味だそうですね。
近所に寺社がけっこうあって、散歩のついでに巡っているんです。空気に適度な緊張感があって、将棋を指したあとに行くと心が落ち着きますね。お祈りするのは、もっぱら「家族と猫ちゃんが健康で暮らせますように」って。本当にそればっかりです。
好きなお寺は長野の善光寺。年に1、2回は行って、近くのカフェで美味しいコーヒーを飲んだり、ランチでちょっとワインを飲んだり。
――テニスがお上手な棋士として遠山六段のお名前がよく挙がります。稲葉八段は、「将棋連盟のテニス部に参加したら部活みたいに本格的だった」とおっしゃっていましたが?
そんなことはないんですよ〜(笑)。たまたま彼が来てくれたとき、参加者が多くて。コートが1面しかなかったんで、スクールみたいな感じで私が球出しをしたり、番号を振って試合のようにしたり...部活のように厳しくはないんで、そこは言い訳をさせてください(笑)。
テニスはめちゃくちゃ好きで、中学時代からしています。トータルで30年くらいですかね。高橋(道雄)九段、北島(忠雄)七段、佐藤(秀司)八段と、コロナ禍のまえは月1くらいでプレイしていました。関西だと福崎(文吾)九段、東(和男)八段。みなさん、私よりもだいぶ先輩ですがお上手で!東西の棋士が集まる総会が年に1回あるんですけど、以前は、 前日に集合して、東西対抗テニスをやって、終わったらみんなで飲みに行ったり。あとはログハウスを10人くらいで貸りて合宿も。でも、夜のカードゲーム大会のほうが白熱していたかもしれません(笑)。
少しでも面白いと思ったら、あまねく将棋を楽しんで欲しい。将棋を言語化する挑戦
――特にWebを使った将棋の普及活動に熱心です。"観る将"という言葉がなかったころ、Twitterなどでファンからの要望に耳を傾け、将棋連盟モバイルで「投了図下の手順」を示すのがスタンダードになったのもその一環だとか?
将棋を楽しむときに、そこに棋力がないと楽しめないっていうのはおかしいと思っていたんですよね。たとえば野球やサッカーって、プレイするのは下手でも、観るハードルはありません。将棋も、少しでも面白いと思ったらあまねく楽しんで欲しいなと。私からしたら自然なことをしたつもりだったんですけど、ファンの方の反応を見て「ああ、やっぱり棋力が壁になるんだな」って感じましたね。
――「一般の方に将棋をわかりやすく説明することは、将棋普及にとって非常に大切。"将棋を言語化する力"は生涯通じて勉強していこうと思います」と著書で書かれていました。
すごく難しいことです。棋力を問わず楽しんで欲しいと考えると、やっぱり言葉の力が大切になると私は思います。特にプロの将棋となると、大多数の方には棋譜では伝わらないですから。その内容を理解したうえで、いかに誰にでも通じる言葉に置き換えて、素晴らしさを伝えるのか。それが将棋を普及する人間の役割で、叶えるために私が信じているのは、言葉の力ですね。
――執筆される際に、意識していることは?
たとえば、自分が他の競技にチャレンジする際、いきなり専門用語を並べられるのって辛いじゃないですか。ここは居場所じゃないかもなって感じるかもしれない。だから専門誌の『将棋世界』に書くか、Webニュースに書くかで言葉選びの設定を変えています。執筆だけではなく、映像の解説も同じ。どのレベルで書けば、1人でも多くの方に伝わるのか、メディアやプラットフォームに合わせることをすごく意識していますね。目線を合わせるって、大事なことだと思います。
――執筆経験豊富な遠山六段に伺ってみたかったんですが、将棋という言葉で表せないものに触れた感動を、文章で表現することってできると思いますか?
ああ〜...私は音楽が好きなので、ライブレポートを読むとやっぱり現場に行ったときの感動と文章での表現はちょっと違うと思うんです。それは将棋も一緒で。でもだからこそ、文章表現だから冷静な視点を盛り込めたり、現場で気づきにくかった感動も届けるとか、できることはあると思うんですよね。言語化、文章力は一生課題で、追求していきたいです。
――現在も多くのメディアで執筆されています。嬉しかったリアクションは?
たとえば初心者向けに書いたとき「棋力がなくても楽しみ方がわかりました」「専門的なことはわからないけど面白かったです」っていう感想は嬉しいですね。
あと、ご本人から「読んだよ〜」って声をかけていただくのはけっこう恥ずかしい(笑)。木村(一基)九段について何度か書かせていただいて、あまりWebはご覧にならないからまぁ読んでいないだろうなって思っていたんですよ。そしたら読みましたと。ふだんは凄いなあと思っていても、直接伝えないじゃないですか。嬉しいっていうよりも、深夜のラブレターが届いちゃった感じです(笑)。
――もともと文章を書くのがお好きなんですか?
実は文章を書くのはぜんぜん得意じゃなくて、いまも自信がなくて毎回必死なんです。毎回、毎回、苦しい。記者に比べたら上手じゃないので勉強しますし、「あの書き方こうすればよかった」とか気になって心が乱れることもあります。そりゃあ将棋を指しているほうが慣れてもいますし楽ですけど、言語化っていうのは自分のなかでテーマなので、必死に頑張っています。
「棋士会」副会長としての想い
――「棋士会」の副会長も。そもそも棋士会って、どんな組織でしょう?
簡単にいうと、棋士と女流棋士による会で、普及のためにイベントを行う組織です。初代会長は谷川(浩司)九段。いまは中村(修)九段が会長で、副会長は畠山(鎮)八段、糸谷(哲郎)八段、そして私。14〜15年の歴史があります。「東竜門」や「西遊棋」などは若手の棋士が自主的に立ち上げた普及チームですが、棋士会は日本将棋連盟の公式ですね。いまは東日本大震災や西日本豪雨などのチャリティイベントを行なっています。将棋界としても大事なことなので続けていきたいです。あと、研修ももっとできるといいんですけど...。
――研修は、どんなイメージですか?
棋士や女流棋士はプロになったときに、いわゆる一般社会常識的なものを教えてもらえる場所がないんです。もちろん師匠によってはお話しされている方もいるかもしれませんが、いまは背中を見て学ぶ部分が大きい。一般社会のマナーと、将棋界特有のマナーをきちんと伝えることが、業界全体ではできていないんです。個人的にやりたいのは、メディアに出たときの心得を伝えること。すごく細かいんですけど、棋士同士で「〜先生」ってメディアでは本当は言わない方がいいんですよね。身内ですから。「〜さん」「〜九段」が正しい。
――なるほど。棋士会って、棋士にとっては悩みを相談できる場所、胸の内を話せる保健室みたいな場所なんですね。
ああ、そうですね。私たちも「何かあったら言ってね」というスタンスですが、そういう意味ではあまり使われないほうがいいのかもしれません。
奥様との意外な出会い、家族の存在の大きさ
――ご家族と一緒に過ごす時間も、素の自分に戻れる時間です。先ほどから遠山家の幸せな様子が垣間見えます。
ふふ、あんまりそういうのはSNSに書きませんからね。でも一応今日は、妻とランチに行くイメージの服で来ました。出てくるとき「いつもと同じだけど、いいんじゃない」って送り出されて(笑)。
――棋士会や執筆のお話を伺っていても感じるんですけど、遠山六段はいつもまわりのことを大切に考えていらっしゃるお気遣いの方なんだなと。ご家族との時間が羽を休めるひとときになるんですか?
もちろんリラックスタイムであり、支えにもなっていますね。プロになって16、17年経つんですけど、それだけ長くやってくるとモチベーションをどう保つかが鍵で。若手だったら、放っておいても「上に上に!」って気持ちがめちゃめちゃ強いはずなんです。ただ、勝ちたい気持ちは大前提だけど、どうしてもそれも慣れたり薄れたりする。私の場合、自分ひとりだけのために頑張るには限界があるんです。そうなったときに、やっぱり妻の支えやファンの方の応援が励みになって、結果でお返しできるようにって気持ちが奮い立つ。
あと、妻はいわゆる一般企業に勤めているので、組織の常識や一般論を話してくれるんですよね。普通のことを話しているだけだよって言われても、私にとっては貴重な意見で視界が開けたりするので、そういう意味でも日々支えてもらっているし、感謝しています。
――奥様とどんな休日を過ごしますか?
そうですね、ふだんは散歩をしたり、食事を食べに行ったり...あとふたりとも音楽が好きなのでライブにも。私も若い頃はめちゃめちゃ音楽フェスに行っていて。実は妻ともフェスで知り合いました。
――なんと!『モテキ』のようなお話ですね。
ははっ、そうですね。2006年を迎える年越ライブで知り合ったんですよ。妻が私の学生時代に仲のよかった女性と一緒に来ていて、会場で一緒にご飯食べようよって。そこでどんなバンドが好きなの?って話になって、ELLEGARDENが好きって盛り上がりました。
――遠山六段の職業を聞いてどんなリアクションをされていました?
どうだったかな?でも友人が伝えていたみたいなんで、「将棋のひとに初めて会いました」っていう感じで。派手なリアクションではなかったですよ(笑)。
――先ほどお洋服についても少しお話に挙がりましたが、いつもスーツやメガネがおしゃれで素敵です!こだわりをお持ちですか?
う〜ん...変じゃないように見えたらいいというのがこわだりです(笑)。佐藤天彦九段のように凝ったことはできませんし、40代に入ってからは清潔感を大切にしています。妻にも見てもらいますよ。今日の服も彼女の勧めで買いました。ネクタイはいただきものもあるので、たしかにレパートリーはあるかもしれません。でも、いや本当に、ふつうっていうのがこわだりなんで、この話題はなにも出ませんよ(笑)。
片手で、ガトーショコラと生クリームを一度に食べる贅沢!
――では、お話も進んだところでおやつタイムに入ります。今日はローソンの新商品「生ガトーショコラ」をお召し上がりいただきますが、お味はいかがですか?
本当に美味しい!ガトーショコラって食べづらいイメージだったんですけど、片手で食べられるところがいいですね。しかもクリームといっぺんに!贅沢です。あとパリパリとしたチョコソースもアクセントになってて、食べ進めるのが楽しいです。全部食べてもいいですか?...ああ、美味しかった(笑顔で完食)!
――遠山六段はローソン将棋部の顧問も務められているんですよね。
そうなんです。指導の際、みなさんに「生ガトーショコラ」を食べた感激を伝えたいと思います。ローソンさんの発明ですね。
――対局中は、どんなおやつを召し上がりますか?
対局中はカカオ88%の苦いチョコレートが美味しく感じられるんですよね。いつも妻が保冷バッグに入れてくれるのを持参しています。
10問アンケート
インタビューで聞ききれなかった10の質問を、遠山雄亮六段に伺いました。
- Q1
- お名前の由来は?
- 遠山
- 雄の字は父親の一文字を受け継いで、「ゆうすけ」という名前にしたかったそうでこうなりました。
- Q2
- 好きなお店の好きなメニューを教えてください。
- 遠山
- ベタですが、対局中に鰻を食べることが多いので将棋会館の近くにある『ふじもと』の鰻ですね。食べると「将棋頑張るぞ!」という気持ちが湧いてきます。
- Q3
- いつか行ってみたい場所は?
- 遠山
- ウィンブルドンに行ってみたいです。テニスの聖地です。
- Q4
- J-ROCKがお好きだそうですが、好きなアーティストは?
- 遠山
- 昔から好きなのはBUMP OF CHICKENです。同じ歳でインディーズの頃から知っていて、勝手に一緒に生きてきた感覚になってます。新潟までライブに行ったりして、懐かしいなあ。ほかは、妻が好きな椎名林檎さん。ここ近年一番ライブに行ってます。Official髭男dismや藤井風さん、松任谷由実さんやサザンオールスターズも好きです。
ちなみに対局の日はモーツァルトを聴きます。天彦さんの影響なんですよ、お話を伺ってやってみたら対局の日の気分によく合ったので。対局中に頭の中に音楽が流れてくることがあるんですけど、J-ROCKだと歌詞もあるし、ノリもいいので思考の妨げになっちゃって。クラシックのほうがいいですね。 - Q5
- 相撲ファンだそうですね!推しは?
- 遠山
- 伊勢ヶ濱部屋を部屋推ししてます。照ノ富士(春雄)が横綱になったので、いまは伊勢ヶ濱部屋にとって最高の時期ですよ!親方はかつて横綱だった方で私もTVで観ていましたし、歳が近い安美錦(竜児)や宝富士(大輔)もいて、なんだか親しみを感じるんです。親方も稽古も厳しいと有名な部屋なんですけど、私は親方の厳しさって必要だと思っていて。将棋も脈々と受け継がれていくものはあるんで。師匠や、上の人間の存在の大きさを思いますね。
- Q6
- お好きな本を教えてください。
- 遠山
- オードリー・タンさんの本を読みますね。デジタルで世界を良くしていく思想をベースに、AIに対しての向き合い方が極端なんじゃないかというようなことを書かれていて。まさしく将棋に関してもそう思うので共感したんですよ。AIって人間のそばで生活を豊かにしたり助けてくれるもの、そういった中立の意見を書かれています。
- Q7
- 尊敬している人は誰ですか?
- 遠山
- 社会や世界を変えた起業家の方々ということで、イーロン・マスクさん、ジャック・ドーシーさんですね。おふたりとも、好奇心旺盛なところがすごいなって。人間どうしても歳を重ねると、「もう大体わかるよ」って冷めてしまいがちなんですけど、イーロン・マスクさんは宇宙ビジネスにまで着手している。好奇心に純粋なところ、見習いたいです。
- Q8
- では、遠山六段のいまの好奇心の対象は?
- 遠山
- 将棋をまったく知らない方が、どんな道を辿れば強くなれるかです。違う分野のことを勉強して、自分なりに考えてみたいなって。最近だと行動経済学の本を読んでいます。たとえば人って、0からであっても何かがなくなることを怖がる心理があるんです。子どもたちに教えるときに「駒を取れるからこうしたほうがいいよ」って言ってもいいんだけど、「取られちゃうよ」って言うほうが手が覚えられるのではって思ったりしてるんですよね。
極端にいうと車の免許って大半の方が取得できる。もちろん車と将棋はちがいますが、将棋ももうちょっとメソッドがまとめられているといいのではと思います。 - Q9
- 10年後、どんな棋士になっていたいですか?
- 遠山
- 対局でも普及でも、将棋に真摯に向き合っている棋士になっていたいというのが願いです。
- Q10
- ファンの方へメッセージをお願いします。
- 遠山
- ファンの方に将棋を楽しんでいただけるように私も頑張るので、これからも一緒に将棋を楽しんでいきましょう!
写真:阿部吉泰
遠山雄亮六段
1979年12月10日生まれ、東京都練馬区出身。加瀬純一七段門下。2005年、四段昇段。棋士会副会長。将棋専門メディアだけでなくさまざまなメディアにも寄稿するほか、ブログやTwitterで情報を発信するなど、Webを使った将棋普及に力を注ぐ。将棋界や棋士に関する豊富な情報を紹介し、ファンからも好評を得ている。著書『将棋・ひと目の歩の手筋』はAmazon将棋本ランキングで1位獲得。愛猫家としても有名で、解説時に飼い猫の写真を披露しては将棋ファンを和ませている。ローソン将棋部の顧問も務める。