ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2021年12月03日
王座戦は永瀬拓矢王座が連勝で逆転。また、女流タイトル戦も番勝負、挑戦者決定戦が進行中です。この秋で勢力図はどう変わっていくでしょうか。初の棋戦優勝を懸けた加古川青流戦は服部慎一郎四段が制しています。
【第1図は△2七歩まで】
第1図は第69期王座戦五番勝負第3局(▲永瀬拓矢王座△木村一基九段)。1勝1敗で迎えた第3局。後手が優勢に進めていましたが図の△2七歩は失着。▲5八玉が「玉の早逃げ八手の得」で、4七の地点と2筋から遠ざかりました。△2八歩成は効果が薄く、▲2四歩のような攻めを与えてしまうので△9四竜と粘りの姿勢を見せましたが、これでは△2七歩の一手が無駄になってしまいつらい形です。先手の永瀬王座が逆転勝ちとなりました。
写真:日本将棋連盟
【第2図は△5三同角まで】
第2図は第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第2局(▲渡部愛女流三段△西山朋佳女流三冠)。苦しい中盤をまとめて先手に流れが来ている局面です。▲5八香が「下段の香に力あり」で5筋の制空権を握ることができました。△5六歩▲同香△5四歩と近付けてから受けましたが、先手も歩切れを解消できたのがポイントです。しかし実戦は後に上ずった5六の香が狙われる展開となり、後手が逆転勝ちを収めています。
写真:日本将棋連盟
【第3図は▲4七同玉まで】
第3図は第3期大成建設杯清麗戦五番勝負第1局(▲里見香奈清麗△加藤桃子女流三段)。穴熊で絶対詰まない形の後手が勝勢の局面です。実戦は△5五金▲5七角△3七金▲5八玉△7七竜▲同桂△6五金▲同桂△5五桂まで「玉は包むように寄せよ」を実現させて先手投了。加藤女流三段が里見戦の連敗をストップさせて白星スタートです。
写真:日本将棋連盟
【第4図は△6五桂まで】
第4図は第11期加古川青流戦三番勝負第3局(▲服部慎一郎四段△井田明宏四段)。2年ぶりの開催となった加古川青流戦の、1勝1敗で迎えた第3局です。形勢は先手勝勢でどう着地するかの局面。▲6二銀が「寄せは俗手で」の通り間違いのない一手。2枚の角がよく利いています。以下は△7七桂成▲同桂△同金▲5一銀成△同金▲4四桂と攻めて後手投了。服部四段が1敗後の2連勝で逆転優勝を果たしました。
写真:日本将棋連盟
【第5図は△3五銀まで】
第5図は第11期リコー杯女流王座戦挑戦者決定戦(▲里見香奈女流四冠△伊藤沙恵女流三段)。相振り飛車で、玉の安定度の差で先手の指せる局面です。▲4一銀が「要の金を狙え」の厳しい一手。△4二金や△5一金には▲3一角の筋が厳しい追撃になります。実戦は△6三金とかわしましたがやはり▲3一角が厳しく、△2四飛▲4二角成△5四飛▲5二銀不成と迫っていきました。里見女流四冠が挑戦権を得て、西山朋佳女流王座との五番勝負は3年連続となります。
【第6図は▲5一銀まで】
第6図は第29期大山名人杯倉敷藤花戦挑戦者決定戦(▲野原未蘭女流初段△加藤桃子女流三段)。先手が猛攻を仕掛ける展開でしたが、反撃する余裕を得て後手が優勢です。▲5一銀は勝負手で2択の局面ですが、△7三玉が「中段玉寄せにくし」で安全な勝ち方。代えて△5一同玉は▲5三歩成で怖い展開です。野原女流初段は初のタイトル挑戦はならず、加藤女流三段が倉敷藤花戦の三番勝負に初登場です。
写真:日本将棋連盟
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段