チーム藤井VSチーム広瀬 第4回ABEMAトーナメント~本戦2回戦 第四試合振り返り~

チーム藤井VSチーム広瀬 第4回ABEMAトーナメント~本戦2回戦 第四試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2021年09月01日

 お~いお茶presents第4回ABEMAトーナメント、8月28日(土)に放映された本戦トーナメント2回戦第四試合はチーム藤井「最年少+1」(藤井聡太王位・棋聖、高見泰地七段、伊藤匠四段)対、チーム広瀬「早稲田」(広瀬章人八段、丸山忠久九段、北浜健介八段)だ。両チームによる団体戦の模様をお送りする。

第1局、「最年少+1」からは伊藤が、「早稲田」からは丸山が出陣する。振り駒の結果、丸山の先手で角換わりに。「先攻されて思わしくなかった」と伊藤が振り返るように、中盤では先手が指しやすい局面もあったが、難解な戦いが続く。

【第1図は△5三同銀まで】

 そして迎えた第1図。ここから実戦は▲5三同銀不成△3一玉▲6二角成△8七飛成▲6五金△7八竜まで、伊藤の勝ちとなったが、第1図から▲5三同銀成ならば先手に勝ち筋があった。△3一玉に▲6二角成は△8七飛成で大同小異だが、玉引きには▲3三銀と打つ手が生じている。今度△8七飛成は▲3二銀成△同玉▲4三成銀△同玉▲2三飛成という順で後手玉が詰む。成銀を寄れるのが本譜との違いだ。

 しかし▲3三銀は△同金▲同桂成に△7八成香から迫られる順がある(正確に応じれば先手玉は詰まない)ため、相当に指しにくい。この辺りは指運と言うしかないだろう。

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 結果的にはこの第1局が明暗を分けたか。続く第2局、高見―北浜戦は北浜の三間飛車相手に高見が非勢となるも、居飛車穴熊の堅さを生かした高見が持ち前の妖術を発揮して逆転勝ち。2連勝とチームに勢いをつけた

 続く第3局は藤井―広瀬のリーダー対決。前回のトーナメントでは藤井に2戦2勝だった広瀬が流れを変えられるかどうかだが、チーム藤井の勢いは止まらない。

【第2図は▲3九飛まで】

 第2図は相雁木の中盤だが、ここでの△6五歩が好判断の仕掛け。対して▲同歩は△4五歩が痛過ぎる。広瀬は▲6九飛と6筋を補強したが、やはり△4五歩と角筋を通して、▲同歩に△9五歩▲同歩△6二飛▲7七角△8五桂と攻め立てた後手が全軍躍動。以下は先手の大駒を完全に封じ込めた藤井が圧倒し、「最年少+1」が3連勝。

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 こうなるともうどうにも止まらない。続く第4局の伊藤―北浜戦では伊藤が「やってみたかった構想」を北浜にぶつけ、持ち時間を5分残す快勝劇を見せる。

 

 後がなくなった「早稲田」は第5局で広瀬が出陣。高見との角換わりを制して、ここは意地を見せて一矢を報いる。だが続く第6局、チーム藤井は何と高見の連闘を藤井リーダーが指示。この期待に高見も応えた。

【第3図は▲7五金まで】

 第3図。ここで丸山が△9六銀の奇手を放つ。対して▲同歩は△8七飛成▲7九玉△8八歩で怪しくなるが、取れる銀を取らずに▲6九玉が「玉の早逃げ八手の得あり」の格言通りの一着である。△8七飛成に▲8八歩と打てるのが大きい。以下△8六竜に▲6四金と攻めに転じた高見が勝利し、チーム藤井の準決勝進出が決まった。

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 「第1、2局は苦しい局面もありましたが、そこで勝ってくれたのが大きかったですね。今回は高見さんに負担を掛け過ぎたので、次は自分が(笑)」とは終局後の藤井の感想である。

【総合成績】

本戦トーナメント2回戦第四試合の最終結果は以下の通り
第1局 伊藤◯-●丸山
第2局 高見◯-●北浜
第3局 藤井○-●広瀬
第4局 伊藤○-●北浜
第5局 高見●-○広瀬
第6局 高見○-●丸山

総合「最年少+1」5勝―1勝「早稲田」

 次週は本戦トーナメント準決勝第一試合。チーム永瀬「川崎家」と、チーム木村「エンジェル」の対戦だ。9月4日(土)17:00~の放映をどうぞお楽しみに。

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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