里見、史上最多44期目の女流タイトル

里見、史上最多44期目の女流タイトル

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年07月30日

 里見香奈女流王位に山根ことみ女流二段が挑戦した第32期女流王位戦五番勝負。里見には清水市代女流七段の持つ歴代最多タイトル獲得の更新が掛かったシリーズ。一方の山根は初のタイトル戦登場だ。

第32期女流王位戦五番勝負第1局

 第1局は兵庫県姫路市「夢乃井」にて。山根の先手で相振り飛車となり、形勢が微妙に揺れ動く大熱戦となった。

【第1図は△7五歩まで】

山根はここで一分将棋になるまで考えて▲4五金と取り、△同銀▲7五香と攻めたが、△7二歩▲4一飛に△4七歩成▲同歩△4六歩の継ぎ歩攻めで後手が一手勝ちコースに入った。第1図では単に▲7五同香と走っておけば5四の銀が攻めに参加できず、難しい終盤戦が続いていたようだ。競り勝った里見が防衛に向けて好スタート。

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写真:飛龍

第32期女流王位戦五番勝負第2局

 第2局は北海道札幌市「京王プラザホテル札幌」にて。第1局に続き相振り飛車となったが、里見がうまく立ち回って作戦勝ちとなる。

【第2図は△3六歩まで】

飛車の働きの差がそのまま形勢の差になっている。持ち歩を生かして▲8四歩△同歩▲8五歩の継ぎ歩が急所を突いた攻め。8筋は薄く、ここに拠点を作られては後手がつらい。実戦は△4五銀▲7六飛△2六歩▲同歩△2八歩▲同玉△4六銀▲同歩△3四金と暴れていったが、▲4七金左△3五金に▲8四歩が大きな取り込みになった。以下も押し切って里見が2連勝。

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写真:琵琶

第32期女流王位戦五番勝負第3局

 第3局は福岡県飯塚市「旧伊藤伝右衛門邸」にて。またも相振り飛車となるが、早々に飛車交換となり手将棋になる。里見がペースをつかんだかに見えたが、山根も粘り強い指し回しで決め手を与えずチャンスを手繰り寄せる。

【第3図は△7五金まで】

 第3図は▲6六角ののぞきに△3七歩▲4八玉となり△7五金と受けたところ。実戦は▲8七香打と数を足したが△8五桂と受けられ後手の玉頭を突破できず、▲5五角に△4四角とぶつけられて大変になった。図では▲7五同角△同竜▲6七桂と絡んでいけば玉と竜をまとめて攻めることができ、先手に分のある終盤戦だった。以下の競り合いで里見が抜け出し3連勝での防衛を果たした。

 里見は清水女流七段の持つ記録を更新する、女流棋士最多の44期目のタイトル獲得となった。また、第3局で通算300勝を達成し、勝率はちょうど7割5分となった。

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写真:虹

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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