ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2021年06月14日
名人戦七番勝負は挑戦者が大逆転で先勝し、面白いシリーズとなりました。また、マイナビ女子オープン五番勝負も挑戦者が開幕戦を制しています。
【第1図は△1五馬まで】
第1図は第79期名人戦七番勝負第1局(▲斎藤慎太郎八段△渡辺明名人)。矢倉から堅陣を生かした攻めで後手が勝勢となりましたが、先手も頑強な粘りを続け、ついに逆転したところです。図から▲2三歩△3八と▲2四香と「寄せは俗手で」と迫っていきます。以下△3一銀に▲1九飛△4八と▲同金△2六馬に▲3二歩が寄せを見切った手で勝ち筋に入りました。
【第2図は▲2四歩まで】
第2図は第14期マイナビ女子オープン五番勝負第1局(▲西山朋佳女王△伊藤沙恵女流三段)。奨励会を退会した西山女王にとって、女流棋士としてのデビュー戦はタイトル戦となりました。乱戦の出だしから後手が主導権を握って優位に立ちます。△7一馬が「馬は自陣に引け」のリードを守る指し方で、▲8四飛成△8三歩▲5四竜△6三銀打▲5五竜△4四馬▲5六竜△5三香と、馬の力を存分に生かし、盤面を制圧しました。この展開になると後手の香得がはっきり生きてきます。うまく局面をまとめた後手が制勝しました。
【第3図は△4四銀まで】
第3図は第34期竜王戦ランキング戦1組準決勝(▲久保利明九段△山崎隆之八段)。三間飛車対急戦から先手がうまくさばきました。▲7三歩の垂らしが「と金の遅早」です。以下△7五歩に▲7二歩成とと金を作り、このと金はのちに4一の金をはがす活躍を見せました。快勝の久保九段は1組決勝進出により決勝トーナメント進出を決めました。
【第4図は△2八角まで】
第4図は竜王戦ランキング戦1組準決勝(▲永瀬拓矢王座△稲葉陽八段)。横歩取りの定跡形です。図から▲2三歩△同歩▲2四歩△3三歩▲2三歩成△3四歩▲3二と△同玉▲2三歩と、飛車を見捨てて攻めていきました。「一段金に飛車捨てあり」で、4九の金が安定しており、すぐに打ち込まれる心配はありません。以下はうまく手をつないだ永瀬王座が快勝で、決勝トーナメント進出を決めています。
【第5図は▲1一飛成まで】
第5図は第62期王位戦挑戦者決定リーグ白組(▲羽生善治九段△永瀬拓矢王座)。玉の安全度の差で後手優勢の終盤戦です。△3四桂と「玉は包むように寄せよ」で縛っていきます。▲4九香の粘りにも△6五角▲同歩△5八飛と詰めろを続けていき、後手の一手勝ちになりました。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段