チーム藤井VSチーム稲葉 第4回ABEMAトーナメント~予選Aリーグ第一試合~

チーム藤井VSチーム稲葉 第4回ABEMAトーナメント~予選Aリーグ第一試合~

ライター: 相崎修司  更新: 2021年04月14日

 4月10日に放映された第4回ABEMAトーナメントの予選A組1回戦、チーム藤井「最年少+1」(藤井聡太王位・棋聖、高見泰地七段、伊藤匠四段)対チーム稲葉「加古川観光大使」(稲葉陽八段、久保利明九段、船江恒平六段)の団体戦の模様をお送りする。

【第1局】高見泰地七段VS稲葉陽八段

 開幕戦となる第1局は高見―稲葉戦で、振り駒の結果、稲葉の先手となる。戦型は相掛かりとなったが、中盤で戦機をつかんだ稲葉がそのまま押し切る。対局直前に船江から「高見さんには順位戦で頭ハネされたんでカタキを取ってくださいよ(笑)」と声を掛けられた稲葉が、その期待に応える勝利をあげた。
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作戦会議をするチーム藤井

【第2局】伊藤匠四段VS久保利明九段

 続く第2局、本局がABEMAトーナメントの初陣となる伊藤が、百戦錬磨の久保の胸を借りる形に。だが棋界には「伊藤君は相当にフィッシャールールが強い」という評判も流れていた。

【第1図は△5四玉まで】

第1図はその終盤。ここでの▲5五銀が「行きましたね」と解説の井出隼平五段もうなった英断の一着。△5五同角▲同角△同飛▲同飛△同玉に▲6六角△5四玉▲4四飛△6三玉▲6四銀以下、後手玉を即詰みに打ち取った。「強くて笑っちゃいますね。いや素晴らしい」(高見)「相手、強いよ」(船江)と両チームが称える。
厳密には手順中の△5五同飛が敗着で、代えて△4七飛成ならば▲3三角成には△5八竜があるため、先手が困っていたのだが、この時点で久保の残り時間はわずか25秒。「残り時間の中で読み切ることが出来なかったですね(久保)」というのも致し方ないだろう。「それ(△4七飛成)ぐらいしかないならうまく粘られたという感じですね」と稲葉が声をかけていた。

【第3局】藤井聡太王位・棋聖VS船江恒平六段

 第3局は藤井―船江戦で、両チームともに全員が登場した。前局の伊藤に対抗して船江も初陣を飾りたいところだが、ここではABEMAトーナメントで3連覇中の藤井に一日の長があった。船江は「時間を残すのが大事だなと思いました」と振り返る。

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【第4局】高見泰地七段VS久保利明九段

 第4局は高見―久保戦。中盤で高見が王手飛車を掛けることに成功し、一気にペースを握る。最後は入玉を図る久保玉を華麗な詰みに打ち取った。

【第5局】藤井聡太王位・棋聖VS船江恒平六段

 この時点で「最年少+1」が3勝1敗とリード。第5局はチームリーダーの藤井が2度目の出陣となる。対戦相手は第2局と同じく船江で、先後を入れ替えての対局となった。

【第2図は▲5四歩まで】

第2図はその中盤だが、この▲5四歩が痛い。△同歩は▲5二金△同玉▲3一角成がある。また△8六歩と角筋を止めるのは▲2二歩△同角▲7七桂△7六銀▲8六角で先手優勢だ。実戦は△6四銀だが▲2二歩△同角▲5五銀△8六歩(△5五同銀は▲5三歩成で潰れ)▲4四銀で先手必勝形。最後の▲4四銀に△同金は▲2三飛成がある。こうなってはいかに藤井と言えども粘りようがない。
第2局のリベンジを果たした船江は「先ほどは藤井さんから仕掛けられる形で受け身になってしまったので、今回は少々無理気味でも自分から動いて行こうと。そういう戦いになったのがよかったと思います」と語った。

【第6局】伊藤匠四段VS船江恒平六段

 エースを止めた船江が第6局も連戦する形で、伊藤との初参加同士の対戦となった。だが相横歩取りの乱戦を制したのは伊藤で、「最年少+1」が勝ち抜きに王手をかける。

【第7局】高見泰地七段VS稲葉陽八段

 後がない「加古川観光大使」はチームリーダーの稲葉が出陣。高見との対戦となり、第1局以来の再戦となった。先後も前局と同一である。だが相掛かりとなった第1局と異なり、角換わりに進んだ。

【第3図は▲3三香まで】

 第3図はその最終盤。稲葉がげたを預けた局面だ。局面は後手勝勢、というより先手玉に即詰みがあるのだが、高見がわずかな残り時間で詰ましきることができるかどうか。
 実戦は△7七金▲同金△8五飛▲8六歩△9六桂▲8七玉△7七銀成▲同飛△8八金▲9七玉△8七金打▲同飛△同金▲同玉△8六角成▲7八玉△6八飛まで、高見の勝ち。終局直後に「さすがです」と藤井が拍手。伊藤は「見てる方も緊張しますね」と息をついた。

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終局直後に作戦会議室で拍手をする藤井聡太王位・棋聖

 次回は予選A組2回戦のチーム藤井「最年少+1」とチーム三浦「シン・ミレニアム」が対戦、17日の放映をどうぞお楽しみに。

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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