勝ち残ったのは誰に? エントリートーナメント 第4回ABEMAトーナメント

勝ち残ったのは誰に? エントリートーナメント 第4回ABEMAトーナメント

ライター: 相崎修司  更新: 2021年04月08日

 第4回ABEMAトーナメント、4月3日(土)に放映されたのは最後の1チームを決めるのはエントリートーナメントだ。ドラフトから漏れた棋士105名がフィッシャールールで戦い、勝ち上がった棋士3名によってチームを組む。
 エントリートーナメントは関東A、Bブロック、関西ブロックの3ブロックに分けて実施された。各ブロックを勝ち上がってベスト4に進出したのはそれぞれ以下の棋士である。

関東A 梶浦宏孝六段、田中悠一五段、井出隼平五段、杉本和陽四段
関東B 塚田泰明九段、松尾歩八段、三枚堂達也七段、藤森哲也五段
関西 小林裕士七段、増田裕司六段、出口若武五段、黒田尭之五段

関西ブロック

 エントリートーナメントはまず関西ブロックから放映された。準決勝の1局目は増田―黒田戦で、押し引きの難しい中盤から好手を放って抜け出した先手の黒田が勝利し、決勝へ。
 続く2局目は小林―出口戦。後手の小林が先手の攻めに対してカウンターを決めて「完敗でしたね」と出口も認めざるを得ない、快勝となった。

4abema_0403_playback01.png

決勝は小林の先手から相掛かりに。序盤で黒田が飛車を切り飛ばしての猛攻を仕掛け、見たことのない乱戦となる。

【第1図は▲8一飛まで】

 第1図はその終盤で、58秒残している小林に対し、黒田は8秒しかない。実戦の△5六桂は次に△7九馬が回ればほぼ先手玉が受けなしとなるが、この一瞬をついた▲5二歩△同玉▲4一角が厳しく、△4一同玉は▲6一飛成から後手玉が詰む。黒田は角打ちに△6二玉とかわしたが、▲8五桂△7一金打▲7三桂成△同玉▲6五桂△7二玉▲9一飛成と進み、先手の勝勢が明らかとなった。戻って第1図では△7二銀打▲9一飛成△8一歩ならば難しかった。
 まずは小林がエントリーチーム参加を決めた。「まさか自分が出られるとは思っていなかったので、本戦では活躍できたらと思っています」と感想を述べた。

関東Aブロック

 続いては関東Aブロック。こちらの準決勝1局目は井出―杉本戦。中盤で決断の踏み込みを見せた後手の杉本がそのまま押し切り、勝利。第2局の梶浦―田中戦は「お粗末でした」と田中が振り返るウッカリが最終局面で出現し、梶浦が決勝へ進出。
4abema_0403_playback02.png
 決勝は杉本の先手四間飛車に梶浦は左美濃で対抗。

【第2図は△7六飛まで】

 第2図からの▲4七金左は自然なようだが、ここで先手陣に生じたスキを梶浦は見逃さなかった。△8八歩が手裏剣の歩と言われる手筋で、▲同角は△8六飛で困る。実戦は▲6七銀△7四飛▲8八角だが、△8四飛と寄られてやはり先手の受けが難しい。▲7七角と上がりたいが、△6五桂が激痛だ。

 第2図では▲2八銀などと手を渡して、△8八歩には▲6七金と上がる順を残しておく必要があった。これなら以下△7四飛▲8八角△8四飛には▲7七角で大丈夫。5六に銀がいるため△6五桂の筋がない。なお第2図ですぐ▲6七金は△7四飛で、これは後手に不満がない。
 以下は杉本の頑張りを振り切って梶浦が勝利。チーム天彦にドラフト選出された鈴木大介九段ともども、師弟での参加が決まった。師匠に何と伝えますかと問いかけられた梶浦は「勝ちました、と言いたいですね」と笑顔。

関東Bブロック

 最後の1枠を決めるのは関東Bブロック。その準決勝第1局は塚田―松尾戦。一手違いの難解な終盤戦となったが、先手の塚田がぎりぎりの勝負を制した。第2局は三枚堂―藤森戦。振り飛車穴熊の藤森が攻め倒すか、三枚堂が受け切るかという勝負になったが、最終盤で生じた三枚堂のミスを藤森が逃がさず勝利。決勝での師弟対決が実現した。
 師弟対決は先手塚田の居飛車穴熊対、後手藤森の四間飛車穴熊の相穴熊に。藤森は予選1回戦から全局穴熊を通してきた。21年の公式戦でも穴熊の採用率が高い。

 終盤の入り口である第3図。

【第3図は△1八飛成まで】

 ここでの駒割りは角銀交換で先手の駒得だが、形勢は後手の優勢。何といっても玉の堅さが大違いである。自陣に手を入れても見込みがないと判断した塚田は▲7五香と攻め合いに出たが、△7七香がきつい。以下は▲7二香成△同銀▲7七角△同歩成▲同銀△7六歩▲6八銀△7七香▲7八歩△6八竜▲同金△7九銀まで、藤森の勝ち。
 最後の切符をつかんだ藤森は「実況をやるつもりだったので、まさか自分がチームに入っちゃうとは。ちょっと意外だったんですけど、気楽にやったのがよかったのかな」と語った。

4abema_0403_playback0.png
師弟対決は藤森哲也五段の勝利となった

 最後のエントリーチームは、小林裕士七段、梶浦宏孝六段、藤森哲也五段というメンバーに決まった。「すごいチームばかりなので大変ですけど、こちらは体が温まっているので善戦できるよう頑張りたい」と藤森五段。またチームリーダーは後輩2名の推薦で、小林七段が推された。

第4回ABEMAトーナメント、次回は4月10日(土)に予選Aリーグ1回戦の「チーム藤井VSチーム稲葉」が放映予定。こちらもどうぞお楽しみに。

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

このライターの記事一覧

この記事の関連ワード

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています