ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2021年04月19日
棋王戦五番勝負第2局は渡辺明棋王が会心の指し回しで勝利。名人挑戦権はA級初参加の斎藤慎太郎八段が得ています。
【第1図は▲7四桂まで】
第1図は第46期棋王戦五番勝負第2局(▲糸谷哲郎八段△渡辺明棋王)。右玉に対し端攻めを炸裂させて後手優勢の終盤戦。ただし先手は豊富な持駒を持っているので粘らせてはおかしくなります。△7九竜が厳しい一手で、▲7七銀に△4九銀▲4八玉で「玉は包むように寄せよ」が実現しました。それから悠々と△7二飛と手を戻して後手勝勢です。
写真:生姜
【第2図は△5七歩成まで】
第2図は第79期順位戦A級9回戦(▲広瀬章人八段△豊島将之竜王)。矢倉から穴熊に潜った先手ですが、金を一枚はがされているのが痛いところ。そして図の△5七歩成も厳しく、先後は逆ですが「5三のと金に負けなし」の通りになっています。以下▲7七金に△6七とが飛車先を通して厳しく、そのまま押し切りました。広瀬八段が敗れたことにより、名人挑戦者が斎藤八段に決定しました。
写真:夏芽
【第3図は△3四飛まで】
第3図は第79期順位戦A級9回戦(▲斎藤慎太郎八段△佐藤天彦九段)。横歩取りからじっくりとした戦いになっています。ここで▲8三歩がと金作りを見せた好手。▲5四歩と突く筋があるため、分かっていても後手は次の▲8二歩成を防げません。遅いようでも厳しく「と金の遅早」です。9一の香を拾う手が間に合っては酷いので△1三角▲8二歩成△4二金から戦いになりましたが、最後はこのと金が後手玉を寄せるのに役立ちました。対局中に競争相手の広瀬八段が敗れたことにより自身の結果に関わらず名人挑戦は決まっていましたが、見事に最後も勝って8勝1敗でフィニッシュとなりました。
写真:牛蒡
【第4図は△6五歩まで】
第4図は第34期竜王戦ランキング戦2組(▲藤井聡太王位・棋聖△広瀬章人八段)。意表の相掛かりから中盤戦、後手陣にスキがありました。「開戦は歩の突き捨てから」で▲3五歩が機敏な仕掛け。実戦は△6四角▲2六飛に△3五歩と手を戻しましたが、▲6五桂で先手がペースをつかみました。3筋の突き捨てを入れることにより、▲3四桂のキズが生じています。以下も快勝で5期連続のランキング戦優勝に向けて前進です。
写真:夏芽
【第5図は△4二歩まで】
第5図は第34期竜王戦ランキング戦6組(▲西山朋佳女流三冠△冨田誠也四段)。後手玉を追い詰めてはいますが、すっぽ抜けると入玉の心配があります。▲8六銀△9七桂▲7六銀が玉をロックする寄せ。「玉の腹から銀を打て」のように、盤上の駒で腹銀を実現させました。以下△8四香に▲7七銀右と3枚の銀が連結して脱出は不可能です。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段