防衛側が白星を重ねる、1月下旬の注目対局を格言で振り返る

防衛側が白星を重ねる、1月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年02月25日

激戦が予想された王将戦七番勝負は渡辺明王将の強さが光りまさかの3連勝。岡田美術館杯女流名人戦五番勝負も里見香奈女流名人が力を発揮し、どちらも防衛側が白星を重ねています。

第70期王将戦七番勝負第2局

【第1図は▲7三桂不成まで】

 第1図は第70期王将戦七番勝負第2局(▲永瀬拓矢王座△渡辺明王将)。相掛かりからいよいよ終盤に入った局面です。飛車金両取りを掛けられたところですが、相手をしていては先手の攻めが加速します。△7七歩が「両取り逃げるべからず」の反撃。先手が▲6一桂成と飛車ではなく金を取ったのも「終盤は駒の損得より速度」で、互いに敵玉を攻める手を選んでいます。以下激戦の終盤が続きましたが、際どく後手が制しています。

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写真:日本将棋連盟

第70期王将戦七番勝負第3局

【第2図は△4四角まで】

 第2図は王将戦七番勝負第3局(▲渡辺王将△永瀬王座)。相掛かりからうまく後手の飛車を目標にして先手ペースの戦いです。形勢は先手良しですが、△4四角の勝負手で先手陣を揺さぶってきました。攻めるか受けるか悩ましいところですが、▲2五飛が「遊び駒は活用せよ」の好手でした。△7二歩の先受けに構わず▲7五飛と展開し、使えていなかった自陣の飛車をたちまち最前線に送り込むことに成功。以下は押し切って渡辺王将が一気の3連勝としています。

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写真:日本将棋連盟

第47期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第2局

【第3図は△1六成香まで】

 第3図は第47期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第2局(▲里見香奈女流名人△加藤桃子女流三段)。先手優勢の終盤戦であとはどう決めるかの局面。▲2九香が「下段の香に力あり」の決め手でした。詰めろを受けるとともにある狙いを秘めています。実戦は△3四歩に▲1三歩△同玉▲5五竜△3五歩▲同竜△3四歩に▲1一飛が好手で、2九香の利きを生かして長手数の即詰みに打ち取りました。

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写真:日本将棋連盟

第14回朝日杯将棋オープン戦本戦

【第4図は△4七角まで】

 第4図は第14回朝日杯将棋オープン戦本戦(▲渡辺明名人△永瀬拓矢王座)。有楽町行きを掛けた準々決勝です。後手は上部脱出に望みをかけていますが、▲8八玉が「玉の早逃げ八手の得」の落ち着いた一手。次に▲7九飛と逃げられてはいけないので△2九角成と取りましたが、▲5七飛が王手馬取りです。早逃げの効果で、飛車を好防に打たれる心配もなく、以下は押し切りました。


【第5図は▲5八玉まで】

 第5図は朝日杯将棋オープン戦本戦(▲豊島将之竜王△藤井聡太王位・棋聖)。こちらも有楽町行きを掛けた準々決勝。後手の攻めが難しいようですが、△8六歩▲同歩△8七歩が鋭い攻めで、△8六歩、△8七歩のどちらも詰めろになっています。実戦は▲8七同金でしたが、「金は斜めに誘え」が実現したため△7八角が詰めろ金取りで決まりました。△8七歩には▲6八玉と逃げておけば激戦が続いていたようです。藤井王位・棋聖は4年連続のベスト4進出です。

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写真:日本将棋連盟

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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