ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2021年02月24日
2021年が始まりました。ここから王将戦、棋王戦、女流名人戦と始まります。また、順位戦もいよいよ昇級争いが煮詰まってきました。
【第1図は△8三角まで】
第1図は第70期王将戦七番勝負第1局(▲渡辺明王将△永瀬拓矢王座)。角換わり腰掛け銀から双方研究十分の激しい進行に。▲6七桂が攻めをつなぐ「桂は控えて打て」の手筋。次に▲7五桂や▲5五銀のぶつけを見ています。△6四金と駒を活用して受けましたが、構わず▲7五桂と跳ね、△同金に▲9七角と攻めていきました。以下も難解な戦いが続きましたが、先手が攻め切っています。
写真:日本将棋連盟
【第2図は△2二歩まで】
第2図は第79期順位戦A級7回戦(▲斎藤慎太郎八段△佐藤康光九段)。△2二歩と受けて1手詰を受けたところ。▲1一銀が粘りを許さない手で、どちらの銀を取っても頭金まで。△3一玉と早逃げしましたが、▲2二銀引不成△4一玉▲6三角△5一玉▲7二角成が「玉は包むように寄せよ」で、挟撃と同時に飛車取りで受けが難しくなりました。斎藤八段が1敗を守り名人挑戦に近付いています。
写真:名人戦棋譜速報より
【第3図は▲6三歩成まで】
第3図は第79期順位戦B級2組9回戦(▲中村修九段△藤井聡太王位・棋聖)。飛車取りとともに金取りにもなっており、相手をしていると先手の攻めがどんどん加速していきます。こんな時は「両取り逃げるべからず」「終盤は駒の損得より速度」の格言です。△6六歩▲同金△6八歩が手筋のお手本となるような攻めで、▲同玉と取らせてから△4七とと寄れば、▲8二馬にも▲5二とにも△2四角が絶好です。鮮やかな勝ち方で藤井王位・棋聖は全勝キープです。
写真:名人戦棋譜速報より
【第4図は▲2二飛成まで】
第4図は第79期順位戦C級1組9回戦(▲船江恒平六段△高崎一生七段)。監修の高崎七段の順位戦で、全勝対1敗の昇級争いをめぐる直接対決です。金取りで飛車を成り込まれたところですが、△5一歩が当然ながらしっかりした受けで「金底の歩岩よりも堅し」です。攻め駒の少ない先手は▲2一竜と取りましたが底歩は堅く、横からの攻めにはびくともしません。手番を得た後手が△5九角と「要の金を狙え」の反撃から競り勝ちました。直接対決を制し、高崎七段が全勝を守っています。
写真:名人戦棋譜速報より
【第5図は△5四同銀右まで】
第5図は第92期ヒューリック杯棋聖戦二次予選(▲西山朋佳女流三冠△森下卓九段)。振り飛車好調の駒運びですが、ここで緩むと立て直されてしまいます。▲4四歩が手筋で、△同飛と誘ってから▲5四角と踏み込みました。「玉飛接近すべからず」の形に持ち込んだことで、△5四同銀なら▲5五銀打が厳しくなります。実戦は△5四同飛でしたが▲5五銀が厳しく、先手がリードを広げました。以下も押し切って、西山女流三冠が決勝トーナメントまであと1勝としています。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段