チーム康光VSチーム久保、本戦2回戦に進んだのは?~生放送振り返り~

チーム康光VSチーム久保、本戦2回戦に進んだのは?~生放送振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2020年07月10日

*前回の記事:予選Dリーグ3回戦・チーム広瀬VSAbemaドリームチーム 振り返り

 第3回AbemaTVトーナメントの本戦が始まった。1回戦はチーム康光(佐藤康光九段、森内俊之九段、谷川浩司九段)対、チーム久保(久保利明九段、菅井竜也八段、今泉健司五段)の対抗戦である。本戦は全て生放送で行われる。本局は7月4日に放映された。

予選のポイント制とは異なり、本戦からはルールが変更された。最大9局が行われるのは予選同様だが、一方のチームが5勝先取した時点で勝ちぬけが決まる。振り駒は第1局に行うが、そのあとはチーム単位で先後が繰り返される、最終の第9局までもつれたら再度振り駒となる。
対戦カードについては対局ごとにオーダーを決めることになっている。1人が指せるのは最大3局となっているが、ただし決着するまでに全員が指す必要がある。

仮に今回のメンバーで、3局目まで佐藤―久保という対戦が続くと、4局目は森内or谷川―菅井or今泉という組み合わせでなくてはいけない。そして4局目までどちらかのチームが4連勝すると、5局目の対戦カードは4局目までに出ていない残る両名ということになる。
1局ごとに対戦カードを決めるので、展開によってどのような組み合わせを狙うか、チーム同士の駆け引きにも注目が集まる。

【第1局】谷川九段VS今泉五段


今泉健司五段VS谷川浩司九段

 本戦の開幕戦となる第1局は谷川九段―今泉五段戦に。振り駒の結果、今泉の先手番となる。先手今泉の中飛車に対し、谷川は三間に振る相振り飛車で応じた。今泉が得意の中飛車左穴熊の堅陣を組み上げれば、谷川は中央に金銀を集めるバランス志向で対抗する。
フィッシャールールということもあり、形勢は二転三転するが、最後の最後でドラマが待っていた。

【第1図は△9五銀まで】

第1図は最終盤だが、この△9五銀に対する▲9九香が敗着となってしまった。以下△8四金▲9二玉△7四馬▲8三桂△9一香まで、谷川の勝ち。投了からは▲9一同とに△8三馬で詰みとなる。第1図では▲9六桂と8四に駒を足せば先手に分があったようだ。
初戦を制した谷川は「団体戦なので内容は二の次で、結果を出せた嬉しく思う」と振り返った。

続く第2局は佐藤九段―菅井八段戦となり、菅井勝ち。3局目は森内九段―菅井八段戦で、森内勝ち。第4局は谷川九段―久保九段戦で久保勝ちとなる。第4局を終えて全員が出場し、スコアは2勝2敗と五分に戻った。

【第5局】今泉五段VS森内九段


今泉健司五段VS森内俊之九段

第5局は▲今泉―△森内戦。第1局に続いて先手中飛車を採用した今泉だが、今度は左穴熊ではなく、右に囲うオーソドックスな美濃囲いを選択。対する森内は急戦を志向した。

【第2図は▲7八同銀まで】

 第2図は直前に飛車交換が行われた局面。通常は対抗形において飛車交換が実現すれば振り飛車側が指せるとしたものだが、本局はここでの△5六歩が見た目以上にきつい。▲同金は金を上ずらされるので△7七歩や△8七歩から飛車の打ち込みを狙われてつらいのだ。

実戦は△5六歩に▲5八金引と辛抱したが、やはり△8七歩が飛んできた。▲同銀△5五銀右に対する▲6五歩を「勝負に出た一着ですね」と解説の田村康介七段は評するが、続く△7三桂を「王者の桂跳ねですね」と絶賛。△6五桂~△5七歩成が狙いだが、これがわかっていても受けにくい。
実戦もこのと金作りが実現し「と金を作った辺りで、はっきり良いかと思った、あとは間違えなければいけると思った」という森内が快勝し、チーム佐藤が白星先行。

 チーム久保は第6局で久保がリーダー対決を制して五分の星に戻したが、第7局の谷川九段―菅井八段戦を谷川が勝ち、チーム康光が2回戦進出に王手をかけた。

【第8局】森内九段VS久保九段


森内俊之九段VS久保利明九段

運命の第8局。後のないチーム久保はリーダーにすべてを託す。対するチーム康光はこの日2戦2勝の森内が出場。後手の久保は四間飛車に振り、穴熊に潜った。
中盤では明快に森内優勢となったが、久保が凄まじい粘りを見せて、終盤は混戦へ。そして迎えたのが第3図。

【第3図は▲7七同玉まで】

 実戦はここから△6六角▲8六玉△8五歩▲9七玉△9五歩と進み、先手玉は風前の灯のようだが、▲7三金△同玉▲6三桂成△同玉▲5五桂△7三玉▲7四銀△同玉▲7五銀打△同角▲同銀△同玉▲7六歩△6四玉▲7五角△7三玉▲6四角打△7四玉▲6三銀△8三玉▲8四香△9四玉と後手玉を端に追いやったので▲9五歩と取ることが出来た。以下△同玉▲9六歩△9四玉▲8二角成の局面は後手玉の受けが難しく、先手玉に詰みはない。
第3図では△8五桂打として、▲7八玉に△7七飛~△7六飛成と急所の銀を抜けば、難解ながら後手に分があったようだ。

 本戦1回戦は5-3でチーム康光が2回戦進出。「ドラフトの時には『本気を出せば強い』と言いましたが、(チームメイトの戦いに)感動しました」とは康光リーダー。
対するチーム久保は「チームを勝利に導けなかったので反省」と久保リーダー。話の最後に「出たい人は来年誰かに年賀状を出せばいいと思います(笑)」とオチをつける。

 次回は7月11日に放映予定。チーム三浦(三浦弘行九段、本田奎五段、高野智史五段)対チーム広瀬(広瀬章人八段、青嶋未来六段、黒沢怜生五段)の一戦をどうぞお楽しみに。

ABEMAプレミアムで公開中

・本戦開幕!レジェンドと振り飛車の衝突!<チーム康光 VS チーム久保>
・ドラフト会議、予選などの動画一覧はこちら

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AbemaTVトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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