第3回AbemaTVトーナメント ~4月18日放送、予選A組2回戦・チーム豊島VSチーム三浦戦の振り返り~

第3回AbemaTVトーナメント ~4月18日放送、予選A組2回戦・チーム豊島VSチーム三浦戦の振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2020年04月24日

*前回の記事:第3回AbemaTVトーナメント ~4月18日放送、予選A組2回戦・チーム豊島VSチーム三浦 事前特集~

4月18日に放映された第3回AbemaTVトーナメントの予選Aリーグ2回戦、チーム豊島対チーム三浦の団体戦の模様をお送りする。

先鋒、中堅、大将は以下の通り。

先鋒 斎藤明日斗四段―高野智史五段
中堅 佐々木勇気七段―三浦弘行九段
大将 豊島将之竜王・名人―本田奎五段

「goodboys」ことチーム豊島に対し、チーム三浦は「ミレニアム」と名付けられた。対藤井システムの作戦として、三浦が升田幸三賞を受賞した戦型が「ミレニアム」である。

段位順に並べたチーム豊島に対し、チーム三浦はリーダーを中堅に持ってきた。本田―斎藤の同門対決は双方が避けたかったと動画でも明かされていたが、「まさか斎藤四段を大将には持ってこないだろう」という読みもあって、本田を大将に据えたというのは収録中に聞いたウラ話。

先鋒戦 斎藤四段VS高野五段

振り駒の結果、先鋒戦の第1局は斎藤の先手となり、相掛かりの出だしに。「作戦を用意してきました」という斎藤がみせたのはひねり飛車である。「練習将棋で斎藤君に負けました」と豊島。
第1図からの△8五飛を高野は悔やむ。

【第1図は▲3五飛まで】

対する▲7六角が鋭手で、飛車取りをみつつ真の狙いは▲5三桂成~▲3二角成だが、わかっていてもこの順が受けにくい。高野はやむなく△8九飛成と成り込んだが、やはり▲5三桂成△同玉▲3二角成の順が実現して先手が優位に立ち、そのまま斎藤の快勝となった。「△8五飛に代えて△6四歩は、反省として覚えておきます」と高野。

第2局で高野がタイに追いつくも、第3局を制したのは斎藤で、まずはチーム豊島が1ポイント獲得。斎藤は「疲れました。ヘトヘトです。チーム戦なので個人戦では味わえない1勝の重みを感じました。それが面白いというか、いい刺激ですね」と感想を述べる。

高野は「1局目がひどいのはともかく、2局目を勝ってホッとしてしまったのがよくなかったです。3局目を負けて準備不足を痛感しました」と語った。

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中堅戦 佐々木七段VS三浦九段

続いて中堅戦の佐々木―三浦戦。第1局は三浦先手の相掛かりとなったが「佐々木君はフィッシャールールを熟知していますね」と三浦が振り返る通り、佐々木が勝利した。「ただ、1局目の経験もあり、次からは時間配分がうまくいった」とも。

そして第2局の第2図を印象に残った局面として挙げた。

【第2図は▲7六同銀まで】

ここからの△6六飛▲同歩△7五歩という進行を「これしか均衡を保つ順はないかなと」と語る。以下▲8七銀△7六桂▲同銀△同歩▲6七金右△7五銀と食いついた局面は、厳密にいえば先手に分がありそうだが、以下も勝負手を続けた三浦が逆転勝ち。その勢いのまま、第3局も押し切って、チームのポイントをプラスマイナスゼロに戻した。「チームリーダーとして、1勝を獲得できてよかった」と三浦。

佐々木は「秒読みで対応を間違えてしまいました。トップ棋士の先生はミスを許してくれず、甘さが出てしまいました。悔しいですね」と語った。

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大将戦 豊島竜王・名人VS本田五段

大将戦は豊島―本田戦。第1局は豊島の先手番で角換わりとなったが、竜王・名人の格を見せつける形で豊島が快勝。だが先後を入れ替えた第2局で、ドラマが待っていた。

本田が先手となれば十八番の相掛かり。渡辺明棋王との棋王戦五番勝負でも自身初のタイトル戦で勝利を挙げた戦型である。はたして、作戦勝ちを収めた本田がそのままリードを広げる形で迎えたのが第3図である。

【第3図は▲8二角成まで】

ここで秒に追われた豊島は△3七歩成と桂を取る。対して本田も▲同金と応じたが「指した瞬間に詰まし損なったことに気が付いた」と悔やんだ。

実は▲3七同金に代えて▲7二馬ならば、△同玉▲7三銀△8三玉▲8一飛成△9三玉▲8四銀成という順で詰んでいた。解説の藤森哲也五段は「▲7二馬で詰んでたんじゃない? 本田さん、▲7二馬ですよ。(▲3七同金をみて)豊島さん、受けてください」と興奮の色を隠さない。

【参考図は▲7二馬まで】

実戦は▲3七同金に△8一歩と打って、後手が虎口を脱した。以下▲7三歩成△同銀▲8一飛成△7一歩▲同馬△同金▲同竜△6二銀打と進み、逆転模様となる。

だが最後の最後に、豊島が勝勢の局面でトン死負け。フィッシャールールの怖さである。勝ったチーム三浦のメンバーも狐につままれたような顔をしていた。

運命を分ける最終第3局は本田の先手に。再びの相掛かりから、終盤の第4図。

【第4図は▲5九桂まで】

この▲5九桂を本田は「粘りに切り替えた」という。実戦はここから△5七銀▲7五桂△7四銀▲2一飛△6二玉▲6三銀△5三玉▲6一飛成△4四玉▲3一竜と進み、先手勝勢となった。

第4図では△4八竜と1マス引いておけば、難解ながら後手に分があった。本譜同様の▲7五桂△7四銀▲2一飛は△6七角成が詰めろになるのが大きい。竜を引いた効果である。

対局を終えた本田は「勝てて良かったです。(強敵と戦った結果)どんな相手とも戦えるのではという自信になりました」と振り返った。

対して豊島は「残念な結果になりました。序盤で時間に差がついたので研究不足でした。2局目の失速がひどかったです」と反省の弁を述べた。

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予選Aリーグ2回戦でチーム三浦は1ポイント獲得のスタート。対して2戦を終えたチーム豊島はマイナス4ポイントで予選終了となった。

この結果、前節で3ポイントを獲得しているチーム久保が、3回戦を待たずに決勝トーナメント進出を決めた。次戦でチーム三浦に仮に6連敗しても、マイナス3ポイントなのでチーム豊島を上回るからだ。

そしてチーム三浦は、勝ち越せばもちろん決勝トーナメント進出。チーム久保に負け越しても、その差が4ポイント以内(1-2、1-2、0-2のパターンなど)ならばやはり2位での通過が決まる。

苦しくなったチーム豊島だが、チーム久保の大爆発に逆転の望みを託すことになる。

予選Aリーグ3回戦は4月25日(土)19時から放映が予定されている。どうぞお楽しみに。

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相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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