ライター山口絵美菜
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。
ライター: 山口絵美菜 更新: 2020年04月22日
今回は第47期岡田美術館杯女流名人戦予選より、▲藤田綾女流二段対△加藤圭女流1級(肩書は、対局当時)の将棋をご紹介いたします。藤田女流二段が三間飛車に振り、加藤女流1級が居飛車穴熊に構えて第1図。ハッチを締めるのもそこそこに、加藤女流1級はさっそく反発しました。さて、どこから動いたでしょうか?
【第1図は▲6五歩まで】
実戦は△6四歩と突きました。対三間飛車でぜひ覚えておきたい手筋です。素直に▲同歩は△同銀となり、次の△7五銀が受けにくく先手不満。そこで▲5六銀と加勢していきました。
加藤女流1級 第9期リコー杯女流王座戦一次予選より
激しい中盤戦になり、第2図は▲6六金とぶつけた局面です。素直に△同金▲同飛と応じると、先手の飛車が息を吹き返してしまいます。ここは「相手の言いなりにならない」ことがポイント。先手の狙いが金交換に乗じた飛車の活用なので、それを断固拒否、飛車をいじめる順を考えてみましょう。
【第2図は▲6六金まで】
加藤女流1級は△4五金と寄り、飛車を追い詰めていきました。以下▲2六飛△3五金▲1六飛△2四桂▲1五飛△5三角。途中△2四桂に代えて△2五銀▲1五飛△1四歩なら飛車が詰んでいますが、攻めの銀を使うのがもったいないところ。△2四桂なら後々桂馬を手に入れた時に△3六桂打といった二次活用が見込めるというのもポイントです。駒を使うときは「小さい駒で大きな成果」を生むことを考えてみるといいですね!
【第3図は▲7二金まで】
終盤の入り口、第3図は後手の角が助かりません。「駒が助からない」時は(1)その駒が取られている間に別なところで得をする(=代償を求める)手を探すのがコツですが、実戦は(2)タダでは取らせず交換に持ち込む手を選びました。さて、角をどこに動かせば有用な駒と交換できるでしょう?
加藤女流1級は△4四角と金の利きに飛び出て、▲同金△同歩と角金交換に持ち込みました。△4四角は次に△9九角成の狙いがあるため、先手としては取らざるをえないというところがミソです。
藤田女流二段 第9期リコー杯女流王座戦一次予選より
いよいよ最終盤の第4図。先手は片美濃が健在で一気の寄せはなさそうですが、次の一手でなんと受けなしになりました。ヒントは「美濃崩しの常套手段」です。ちょっと考えてみてください。
【第4図は▲2六銀まで】
実戦は△5五角と打って加藤女流1級が勝利を収めました。中盤に打った△2四桂が生き、次に△3六桂▲1八玉△2八金までの詰めろで、シンプルな△3六桂を受ける術がありません。
本局のポイントは美濃崩し、そして持ち駒の有効な使い方です。ぜひ実践に生かしてみてくださいね!
ライター山口絵美菜