深浦康市九段が初優勝 第69回NHK杯将棋トーナメントの決勝・準決勝、久保VS藤井戦、木村VS渡辺戦など注目戦を振り返る

深浦康市九段が初優勝 第69回NHK杯将棋トーナメントの決勝・準決勝、久保VS藤井戦、木村VS渡辺戦など注目戦を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2020年03月25日

深浦康市九段の初優勝で幕を閉じた第69回NHK杯将棋トーナメント。今回の注目の将棋などを簡単に振り返っていこう。

1回戦 高崎一生六段 VS 里見香奈女流四冠

第1図は高崎一生六段と里見香奈女流四冠の1回戦。相振り飛車から先手が攻め、後手が受ける展開となった

【第1図は▲6五角まで】

後手も正確に受けないと一気につぶされてしまう局面だ。図から△7四角▲同銀△同歩▲7五歩△9五歩▲7四歩△8三香▲8五歩△同歩▲同桂に△6四銀と出て、角を負担にさせる受けが成功した。以下も丁寧に攻めの面倒を見て、最後は攻めを切らして投了に追い込んだ。初戦を突破した里見だが、2回戦では稲葉陽八段の壁に跳ね返された。

2回戦 久保利明九段 VS 藤井聡太七段

第2図は久保利明九段と藤井聡太七段の2回戦。千日手指し直しの一戦だ。終盤力に定評のある両者らしく、力のこもったねじり合いになる。

【第2図は△1四同馬まで】

激戦の終盤戦だが、▲1五歩△同馬▲1六香が攻防手で決め手となった。受けの難しい後手は△3六桂▲同飛△3九銀▲同玉△6九竜▲4九香△4八銀と迫ったが、▲2八玉で届かない。後手玉が1三にあるため馬が動けないので先手玉は詰まない。注目の藤井七段だが、ここで敗退となった。

3回戦 木村一基王位 VS 渡辺明三冠

第3図は木村一基王位と渡辺明三冠の3回戦。相掛かりから後手は攻めを呼び込んで、角を打ち込んで反撃に出た。

【第3図は△4九角成まで】

ここから▲6八玉の顔面受けが木村らしい一着。以下△3三桂▲2四歩△同歩▲2三歩△2五桂▲同銀△2三銀▲2四銀△3四歩▲3三歩△2二金▲2三銀成△同金▲5九金と駒得を拡大していき、先手優勢だ。以下は物量にものを言わせ押し切った。
当時勝ちまくっていた渡辺にストップを掛けた一局となった。

準決勝第1局 稲葉陽八段 VS 斎藤慎太郎八段

第4図は稲葉陽八段と斎藤慎太郎八段の準決勝第1局。後手陣は見たこともない陣形で、粘りの跡がうかがえる。

【第4図は△7三銀まで】

図から▲6五歩△9四歩▲6四歩△同桂▲8四角△同銀左▲同香△同銀▲同金△8三歩に▲6五角成で先手の寄せが決まった。△8四同銀左では△同銀直なら本譜の寄せはなく、まだ難しい戦いが続いていたようだ。
豊島将之竜王・名人、永瀬拓矢二冠とタイトルホルダーを倒してきた斎藤だがここで力尽きた。稲葉は2回目の決勝進出。

準決勝第2局 行方尚史九段 VS 深浦康市九段

第5図は行方尚史九段と深浦康市九段の準決勝第2局。矢倉の出だしから先手が銀を繰り出して先攻。好調に攻めていたようだが、後手もタイミングをとらえて反撃に出る。

【第5図は▲6六同歩まで】

先手は飛車が角と馬に挟まれており、神経を使う局面だ。その馬に働きかける△7一香が攻防手。以下▲3七馬に△7五歩▲6四歩△7六歩▲6八銀と押し込んでから△2八角成▲同馬△5八金で後手の攻めがうるさい。うまく食いついて深浦が押し切り、初の決勝進出を決めた。

決勝 深浦康市九段 VS 稲葉陽八段

第6図は決勝。矢倉の出だしから後手が中央から動き、飛車交換になったところ。

【第6図は△5二同玉まで】

先手は手番を握っているのが大きく、▲7四歩△同銀▲8二飛△8三飛▲7三角成△同飛▲5三歩△6一玉▲8一飛成と厳しく攻め立てて優勢だ。以下△7一飛に▲7三桂が痛打で、△同金▲5二歩成で勝負あり。以降も緩みなく押し切り、深浦が快勝で初のNHK杯優勝を飾った。48歳と出場者の中では上位に入る年齢だが、健在ぶりをアピールした。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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