ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年03月21日
大阪王将杯王将戦は互いに譲らず3勝3敗のフルセットに。春に開幕するマイナビ女子オープン、女流王位戦はどちらも加藤桃子女流三段が挑戦権を獲得しました。
【第1図は▲2四歩まで】
第1図は第69期大阪王将杯王将戦七番勝負第5局(▲渡辺明王将△広瀬章人八段)。相矢倉の脇システムから先手が新機軸の攻めを見せました。細いながらも先手の攻めが成功し、ペースを握っています。図の▲2四歩に△同歩は▲3一銀、△同金は▲2七香で攻めが厚くなります。図から△6三歩▲2三歩成△同玉が「中段玉寄せにくし」の粘りです。形勢としては依然先手良しでしたが、中段玉で寄せを見えにくくした後手が、一瞬のチャンスをとらえて逆転勝ちを収めています。
王将戦中継ブログより
【第2図は▲3二銀成まで】
第2図は第69期大阪王将杯王将戦七番勝負第6局(▲広瀬章人八段△渡辺明王将)。先手が1筋の位を取り、後手が右玉で対抗しました。先手良しの形勢でしたが、ここは後手がチャンスを迎えています。と言って△3二同飛と取ってしまうと▲2三飛成が厳しく勝ち目はありません。△5六角▲2三飛成△3三金が「終盤は駒の損得より速度」です。先手玉は飛車を渡すと詰めろになってしまうため、これで手段に困っています。以下▲3三同成銀△同桂▲2二竜に△8七桂から寄せきって後手が逆転勝ちを収め、決着は最終局へ持ち越されました。
王将戦中継ブログより
【第3図は△5一玉まで】
第3図は第45期棋王戦五番勝負第3局(▲渡辺明棋王△本田奎五段)。先手は「玉の守りは金銀3枚」「攻めは飛角銀桂」の理想的な形です。ここから▲4五銀△3三銀▲3五歩△同歩▲2五桂と総攻撃を仕掛けました。以下は先手が一方的に攻め続けて圧勝しています。
棋王戦中継ブログより
【第4図は▲6五桂まで】
第4図は第13期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦(▲清水市代女流六段△加藤桃子女流三段)。相掛かりから後手が駒組みでリードしました。桂頭を責められて▲6五桂と跳ね出しましたが「桂の高跳び歩の餌食」です。図から△3六歩▲同銀で飛車の横利きを消してから△6四歩と取りに行って後手優勢です。桂損でも何か代償があれば先手も勝負できるのですが、手段がありません。以下はリードを拡大し後手の快勝に終わっています。加藤女流三段は2期前に奪取された西山朋佳女王に挑みます。
【第5図は△3六角まで】
第5図は第31期女流王位戦挑戦者決定戦(▲加藤桃子女流三段△伊藤沙恵女流三段)。先手の強襲がうまくいって優勢を築きました。図は勝勢で、あとはどう決めるか。▲2五桂が平凡ながら「要の金を狙え」の寄せで後手は粘りが利きません。以下△1四歩に▲3三桂成△同銀▲3七歩から、角を奪って後手玉を寄せました。加藤女流三段は初参加で女流王位の挑戦権を手にしました。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段