ライター山口絵美菜
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。
ライター: 山口絵美菜 更新: 2019年12月29日
昨年創設されたヒューリック杯清麗戦。第2期の予選がスタートしました!今回はその中から中澤沙耶女流初段VS石本さくら女流初段の将棋をご紹介します。
石本女流初段が角道を止める三間飛車から美濃囲いに組み、対する中澤女流初段がelmo囲いを採用して第1図。対抗形です。ここから△4三金▲4七金と互いに金でバランスを取って戦いの準備を整えていきました。
【第1図は▲5八金まで】
そこからさらに駒組が続いて第2図。ここで後手が開戦しましたが、ずばりどこから仕掛けますか?
【第2図は△6四銀まで】
実戦は▲4五歩と仕掛けました。後手の角が5一に移動しているため、角道にスキが生じています。対局中は相手が動かした駒に意識が行きがちですが、駒が動いたことにより「駒がもともといた場所」が弱体化している場合が多いもの。攻めたいのに手が浮かばないときは、この考え方でスキを探してみてくださいね!
実戦は▲4五歩以下△3三角▲2四歩△同歩▲4四歩△同金▲4六銀△4二飛と進行。
(第2図からぜひ盤と駒を使って並べてみてください)
中澤女流初段 第9期リコー杯女流王座戦一次予選(撮影:常盤秀樹)
△4二飛は「仕掛けの筋に飛車を振れ」の格言通り、戦いの起きた6筋に飛車を転換する一手です。ここから▲4五歩△5四金▲3三角成△同金▲2四飛と進んで第3図。飛車先を突破された後手ですが、構わず捌きます。どうすれば攻め駒が捌けるでしょうか?
【第3図は▲2四飛まで】
実戦は△4五桂と跳ねていきました。駒がぶつかり戦いが始まったら、盤上にある攻め駒を相手の駒と交換していくのがポイント。持ち駒になれば「攻めにも受けにも使える」「どこにでも打てる」駒になるので、盤上にある駒よりも価値が高くなるためです。同じ駒と交換するか、その駒より強い駒との交換になるようにするということをお忘れなく。
△4五桂から▲2一飛成△3七桂成▲同金と手順に桂交換に進み、終盤の入り口が近づいてきました。第4図は△5六飛に▲4七角と打ち、間接的な両取りをかけた局面。飛車が逃げると4五の金が取られてしまいます。そのままにしておいても▲5六角△同金となり、飛車と手番が後手に回って不満。ここでは「5四の飛車をどんな形で取られるか」に注目した次の一手があります。
【第4図は▲4七角まで】
実戦は△6四桂と控えてうち、▲5六角に△同桂と取って銀取りの先手です。桂を使うことで手番を握ることに成功しました。ここから石本女流初段が手番を生かして攻めを継続し、詰めろをかけて第5図を迎えました。実戦は次の手を見て中澤女流初段が投了したのですが、その手はなんでしょうか?
【第5図は▲5二竜まで】
石本女流初段 第9期リコー杯女流王座戦一次予選(撮影:常盤秀樹)
実戦は△7二歩と打ちました。△5二同金ととっても▲同飛成に△9三玉と逃げれば捕まることはなさそうですが、その後も王手が続く変化で、どこかで受け方を間違える危険性があります。複数の応対がある場合は「できるだけ王手がかかりにくい受け方」を選びましょう。「王手がかからない玉は詰まない」というのは当たり前のことですが、終盤でとても大事な考え方です。
これからも、ヒューリック杯清麗戦予選の行方にご注目ください!
ライター山口絵美菜