西山朋佳女王・女流王将が3つ目のタイトル獲得 第9期リコー杯女流王座戦を振り返る

西山朋佳女王・女流王将が3つ目のタイトル獲得 第9期リコー杯女流王座戦を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年12月07日

初のクイーン王座を狙う里見香奈女流王座と、初の女流王座獲得を目指す西山朋佳女王・女流王将。女流王将戦三番勝負に続く顔合わせとなった両者。先に開幕していた女流王将戦は2勝1敗で西山が制している。このシリーズは西山の振り飛車に里見の居飛車となった。

第9期リコー杯女流王座戦五番勝負第1局

第1局は高知県高知市の「ザ クラウンパレス新阪急高知」にて。先手の西山は初手▲7八飛で三間飛車宣言。対する里見は居飛車急戦で対抗。左辺のさばき合いになった後、1筋の競り合いで西山がリードした。

【第1図は△3一同玉まで】

ここで▲4四馬△同歩▲8二飛が強い踏み込み。先手玉も怖い形だが、まだ詰みはない。以下△6二香に▲3三銀△同桂▲同桂右成△同金▲同桂成で寄せきった。△6二香では△6二桂なら実戦的にはアヤがあったようだ。

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第1局は西山女王・女流王将が制する

第9期リコー杯女流王座戦五番勝負第2局

第2局は岐阜県岐阜市の「十八楼」にて。第1局に続き西山の三間飛車に里見の居飛車急戦模様だったが、今度は仕掛けずに居飛車は穴熊に組み替えていった。先手は堅陣ながら、7筋を押し込まれて駒損となり、うまく攻めがつなげるかどうか。

【第2図は△4三飛まで】

ここで▲3二銀が異筋の攻め。ただですら攻め駒が少ないのに、ここに投資するのは心もとないが、これが好手だった。以下△3三飛に▲5四銀△8六角▲6三銀成△同銀▲4一飛成△7二銀打▲8七歩△7五角▲4五桂△3六飛▲4三銀成で攻めがつながった。こうなると先手は穴熊の遠さが頼もしい。このまま押し切って1勝1敗に。

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1勝1敗のタイに戻した里見女流王座

第9期リコー杯女流王座戦五番勝負第3局

第3局は福島県郡山市「郡山ビューホテルアネックス」にて。先手の西山は初手に▲5六歩で中飛車宣言。後手の里見は急戦に出た。

【第3図は△1四香まで】

1筋から動いて振り飛車がペースをつかんでいる。ここから▲1二歩△2二玉▲2五歩△1三角に▲2七金がなんとも力強い。以下△7六歩▲6五桂△3三銀に▲2六金と前進して端に圧力を掛けていく。△6五銀▲同銀右△3四桂で▲2七金と下がらせたものの、今度はこの桂が目標になってしまった。西山が快勝で女流王座まであと1勝。

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第3局は西山女王・女流王将の勝利

第9期リコー杯女流王座戦五番勝負第4局

第4局は将棋会館にて。西山の三間飛車に里見は左美濃から銀冠へ。

【第4図は△3六飛まで】

馬と角の働きの差で後手が良い。△4九馬と入るのでは馬の働きが悪くなる可能性がある。△4五飛とばっさり切り飛ばし、▲同歩に△5四馬が好判断だった。以下も熱戦が続いたが、中央と玉頭の厚みを生かして後手が勝ちきった。

これで西山は一気に女流三冠となった。奨励会三段である西山が現在出場できる女流タイトルはすべて手中に収めた。一方の里見は女流四冠に後退。一時期は全冠制覇の勢いだったが、西山に立て続けに敗れた。両者はこれからも女流棋界の頂上決戦として、熱い戦いを繰り広げることだろう。

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西山新女流王座に花束が贈呈された

*画像はリコー杯女流王座戦中継ブログより

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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