「先手を取る」逃げ方とは?女流王位戦予選 上田初美女流四段VS北尾まどか女流二段戦を解説【山口絵美菜女流1級の好局選】

「先手を取る」逃げ方とは?女流王位戦予選 上田初美女流四段VS北尾まどか女流二段戦を解説【山口絵美菜女流1級の好局選】

ライター: 山口絵美菜  更新: 2019年11月18日

過ごしやすい気候がやってきましたね!「秋に始まる女流棋戦」と言えば「女流王位戦」。今回は8月下旬に開幕した女流王位戦の予選から、上田初美女流四段VS北尾まどか女流二段の対局をご紹介いたします。

まずは第1図。

【第1図は△4四銀まで】

先手の上田女流四段が三間飛車から美濃囲いへ。後手の北尾女流二段が居飛車穴熊に潜った△1一玉の瞬間に▲6五歩と突き、△4四銀と角交換を拒否したところです。穴熊は△2二銀とハッチを締めるまではとても不安定。先手はここで▲4六歩と突き、▲4五歩△同銀▲3三角成の角交換を狙って揺さぶりをかけます。相手の囲いが完成する前に仕掛けていくというのは序~中盤で頻出の考え方なのでぜひ覚えておいてくださいね。

第1図から▲4六歩△5一角▲5六飛と進み、そこで△5五歩と突いて第2図。ここで先手はどこに飛車を逃げるのが良いでしょうか?

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上田初美女流三段(第9期リコー杯女流王座戦一次予選) 撮影:常盤秀樹

【第2図は△5五歩まで】

本譜は▲8六飛と逃げました。次に▲8三飛成をみせた「先手を取った」逃げ方です。▲7六飛という逃げ方も決して悪手ではありませんが、後手に余裕ができるため△2二銀と玉型を落ち着けられてしまいます。「先手を取る」=「相手に受けるよう命令する」イメージで指し手を考えてみてください。

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北尾まどか女流二段(第13期マイナビ女子オープン予選) 撮影:常盤秀樹

第2図から▲8六飛△8二飛▲6七金△2二銀と進んで第3図。

【第3図は△2二銀まで】

「金は下段に」が基本ですが、本局は左金が大活躍する将棋です。ここで▲6六金と立ち、5五の歩を目標に動いていきました。以下△8四歩に▲4五歩と突きだし、金を中央に進軍します。

攻め合いの中盤を経て第4図。お互い囲いに手がかかり、速度が求められる局面です。次の一手を考えてみてください。

【第4図は△1三同銀まで】

上田女流四段は▲4二飛と打ちました。後手は7五角の利きその利きを遮断し、▲3一竜△2一合駒▲2二金からの詰めろです。後手は△2一金打と受けるよりありませんが、△3三桂と畳みかけて上田女流四段が寄せ切りました。

女流王位戦は、これからリーグ戦が始まります。ぜひご注目ください!

山口絵美菜女流1級の好局選

山口絵美菜

ライター山口絵美菜

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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