一進一退の攻防。王座VS叡王の白熱した一戦を制したのは?王座戦五番勝負第3局をダイジェストで振り返る
ライター: 更新: 2019年10月02日
斎藤慎太郎王座に永瀬拓矢叡王が挑む第67期王座戦五番勝負第3局が10月1日に兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」で行われました。
第1局は千日手からの指し直しという波乱のスタートで永瀬叡王が白星発進。第2局は斎藤王座の優勢から逆転で永瀬叡王が2勝目。
永瀬叡王の勢いそのままにシリーズ決着となるのか、斎藤王座が巻き返すのか?先手番は永瀬叡王で第3局の対局が行われました。
(参考:王座戦中継ブログ)
対局開始、戦型は矢倉に
永瀬叡王が矢倉模様に構え、斎藤王座は早繰り銀に構えました。新聞解説を担当する村山慈明七段は「後手の布陣は、速攻を狙って後手番でも主導権を握りやすい作戦。斎藤王座の攻め、永瀬叡王の受けという棋風どおりの将棋を見られるのではないか」と展望を語りました。
斎藤王座
永瀬叡王
【図は17手目▲6六歩まで】
じっくりとした展開に
午前11時頃の局面。立会人の桐山清澄九段は「断言は難しいですが、すぐに戦いが起こるのではなく、じっくりとした将棋になるのではないでしょうか」と話しました。
【図は32手目△6四歩まで】
王座の攻め、叡王の受けの勝負どころ
動画配信サイトParavi(パラビ)で大盤解説を務める佐藤天彦九段は、形勢について「斎藤王座が積極的に攻勢に出たことが功を奏して、若干ペースを握って中盤を迎えている」と分析。「永瀬叡王がうまく受ければ互角の勝負に持ち込める」と解説しました。
【図は73手目▲7七桂まで】
難解な局面
形勢判断が揺れ、控室では「難解な局面」として検討が続いています。両者の残り時間が少なくなってきました。
控室の糸谷哲郎八段は、「一分将棋に入っても粘りやすい将棋になっている。長い将棋になりそうです」と見解を述べました。
【図は104手目△4九馬まで】
白熱した終盤戦、先手よしへ
20時25分から、両者持ち時間を使い切り一分将棋となりました。
一進一退の白熱した終盤戦が続く中、図の局面で「先手よし」になったと控室の見解。後手は敵陣にいた竜が消えて攻めの手がかりがなくなったのに対し、先手はこの桂が厳しいです。
【図は145手目▲4五桂まで】
永瀬叡王が王座奪取
21時過ぎ、斎藤王座が投了を告げ、永瀬叡王の勝ちとなりました。消費時間は両者ともに5時間0分でした。
第67期王座戦五番勝負は、挑戦者の永瀬拓矢叡王が3連勝でタイトルを奪取、自身初の二冠を保持するとともに八段昇段を決めました。
【図は161手目▲8七玉まで】
終局後インタビュー
斎藤王座へのインタビュー
―― 本局を振り返っていかがでしたか?
序盤は難しすぎてわからなかったというのが正直なところです。中終盤は何かよくなってもおかしくないと思いながら指していましたが、予想できない手を多く指されてしまい、最後で差をつけられてしまいました。
―― 初防衛とはなりませんでした。シリーズ全体を通しての反省点は?
本局もですが、中終盤のねじり合いの精度で差をつけられた展開が多かったように思います。似た負け方になってしまったので、何かを変えなければなりません。
敗れた斎藤前王座
永瀬叡王へのインタビュー
―― 本局全体を振り返っていかがでしたか
序盤は作戦でした。しかし、(32手目)△6四歩を予想しきれず、主張がなくなってしまいました。中終盤は少し苦しいのかなとは思っていましたが、どのくらい悪いかはわかりませんでした。
―― よくなったと感じたのは?
(145手目)2回目の▲4五桂です。金取りにできる形になったので、勝ちになったのではないかと思いました。
―― 今シリーズ3局を通しての総括は?
不本意な展開になってしまうことが多かったのが反省点です。ただ、反省点は修正できますので、いい糧にしていきたいです。
―― 王座獲得、及び渡辺明三冠に続いて自身初の複数冠を保持することになった感想は?
望外の結果です。これからも一生懸命勉強しないと地位にふさわしくないと思いますので、棋力向上に努めたいと思います。また、人徳においても先輩方を見習って後輩の模範になれるように精進していきたいです。
―― 開幕前、「危機感のほうが強い」という話をされていましたが、薄らぎましたか?
まったく薄らぎません。ただ、ひとつ結果が出たというのは、前への進み方が間違っていなかったという証明になりました。ですが、今より強くならなければならないと思います。
―― 藤井聡太七段とは練習対局をされる仲と聞きます。下の世代への意識はありますか?
藤井さんを年下とは思っていません。年齢はあくまでも数字なので。尊敬もしていますし、競争できるように頑張りたいです。
3連勝でタイトルを奪取した永瀬新王座
永瀬叡王がストレートで王座奪取。東西若手タイトルホルダー同士の対局は、永瀬叡王の勝利で幕を閉じました。
イベント開催のお知らせ 永瀬新王座が「会心の譜」を語る
永瀬新王座が豊川孝弘七段、飯野愛女流初段とともに今年の王座戦を振り返り、「会心の譜」を紹介するイベントが10月16日(水)、東京・大手町にて開催されます。
来場者の方には抽選で永瀬王座の直筆色紙をプレゼントします。
日時:2019年10月16日(水)18:30~20:00(18:00開場)
場所:東京・大手町の日経本社「SPACE NIO」
※入場は無料、事前申し込みは不要です。
※立ち見もできますが、会場が満員の場合には入場をお断りすることがありますのでご了承ください。
※イベント開催中の写真撮影はご遠慮ください。
*詳細はこちらのページよりご覧ください。
永瀬新王座
王座戦五番勝負を振り返る
【第1局ダイジェスト】千日手からの指し直し、波乱のスタート
【第2局ダイジェスト】逆転劇となった第2局
◆王座戦中継サイト
◆動画配信サイトParavi(パラビ)
◆この対局を見逃した方はこちら!将棋連盟ライブ中継アプリ
今回の将棋飯まとめ
昼食
斎藤王座:五目焼きそばとフレッシュジュース(オレンジ)
永瀬叡王:シーフードカレーとホットコーヒー、フレッシュジュース(グレープフルーツ)
午後のおやつ
斎藤王座:フルーツ盛り合わせ
永瀬叡王:ショートケーキとフレッシュジュース(グレープフルーツ)
夕食
アメリカンクラブハウスサンドイッチ
夕食は両者ともアメリカンクラブハウスサンドイッチをオーダー。飲み物は、斎藤王座がフレッシュジュース(オレンジ)、永瀬叡王がホットコーヒー、フレッシュジュース(グレープフルーツ)でした。
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