ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2019年09月05日
豊島・木村夏の十番勝負は木村一基九段が盛り返して、熱い戦いになっています。ヒューリック杯清麗戦は里見香奈女流五冠が連勝し、史上初の六冠まであと1勝です。
【第1図は▲8二馬まで】
第1図は第60期王位戦七番勝負第4局(▲木村一基九段△豊島将之王位)。相掛かりから駒得に成功した木村九段が優位に立ちました。後手苦戦ですが、ここで△3四玉が「中段玉寄せにくし」の粘りです。1~3筋は後手が制圧しており、簡単には捕まりません。以下は相入玉で285手の大熱戦となりましたが、点数で勝る先手が勝利を収めました。
王位戦中継ブログより
豊島王位 王位戦中継ブログより
2勝目をあげて並んだ木村九段 王位戦中継ブログより
【第2図は△3一玉まで】
第2図は第60期王位戦七番勝負第5局(▲豊島将之王位△木村一基九段)。2勝2敗で迎えた第5局は角換わりに。図で▲5六馬△5五銀打▲6七馬が「馬は自陣に引け」の格言通りの指し回しで、先手陣が一気に安定しました。馬は自陣からでも敵陣をにらむことができるのも見逃せません。以下はうまく攻めをつないで豊島王位が押し切りました。
豊島王位が防衛に王手 王位戦中継ブログより
【第3図は△2三角まで】
第3図は第1期ヒューリック杯清麗戦五番勝負第2局(▲里見香奈女流五冠△甲斐智美女流五段)。相振り飛車から難解な戦いでしたが、里見女流五冠がうまく戦機をとらえました。ここから▲8三角成△同玉▲8五歩が鋭い切り込み。以下△7二玉▲8四歩△8二歩と受けましたが、▲9二銀で8筋突破が確定して先手優勢です。「終盤は駒の損得より速度」の踏み込みでした。里見女流五冠が押し切って、初代清麗まであと1勝です。
【第4図は▲4八玉まで】
第4図は第32期竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局(▲豊島将之名人△木村一基九段)。相掛かりから豊島名人の研究に乗り、激しい展開となりました。後手が苦しい将棋でしたが、図は逆転しています。ここで△4五桂が「寄せは俗手で」の通り自然な寄せ。数を足す攻めで先手は受けが難しく、▲4六歩に△7八飛成▲同角△3七銀まで先手の投了となりました。三番勝負は1勝1敗のタイになり、挑戦権の行方は最終局へもつれ込みました。
豊島名人 竜王戦中継ブログより
木村九段 竜王戦中継ブログより
【第5図は▲1四金まで】
第5図は第4回YAMADAチャレンジ杯決勝(▲井出隼平四段△門倉啓太五段)。先手玉を上部に逃がしてしまうと大変ですが、ここで△2五桂が「玉は包むように寄せよ」の確実な寄せ。後手は竜を切って質駒を取る筋もあり、適当な受けはありません。この一手で先手の投了となりました。門倉五段は初の棋戦優勝です。
【第6図は▲7七銀引まで】
第6図は第5回YAMADA女流チャレンジ杯決勝(▲伊奈川愛菓女流初段△山根ことみ女流初段)。四間飛車対居飛車穴熊の終盤戦で、ここで指しておきたい手があります。それが△6六歩で「要の金を狙え」の通り、▲6六同歩と取らせて2三の馬で先手の金をにらむことができました。それから△3六歩▲2八角△4九歩成とし、このと金を間に合わせて後手が押し切っています。山根女流初段も初の棋戦優勝となりました。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段