ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2019年03月20日
いよいよ2018年も年度末です。王将戦、棋王戦が決着し、里見香奈女流四冠の全冠制覇への戦いが始まりました。
【第1図は△6六桂まで】
第1図は第44期棋王戦第3局(▲広瀬章人竜王△渡辺明棋王)。後手玉はまだ堅く、先手玉はかなり迫られています。ここで▲6九玉は△8七歩成が厳しくいけません。▲6七玉が「桂頭の玉寄せにくし」に則った逃げ方。「中段玉寄せにくし」「玉は下段に落とせ」にも該当するでしょうか。今度△8七歩成なら▲6六玉と前進して後手の攻めは切れています。△7五金と桂にひもをつけましたが、手番を得たので▲3五歩と反撃。△3七飛にも構わず▲3四歩と取り込んで先手の勝ち筋に入りました。2連敗の挑戦者でしたが、ここで1勝を返してシリーズは面白くなりました。
広瀬竜王が1勝を返した 棋王戦中継ブログより
【第2図は△5三銀まで】
第2図は第77期A級順位戦9回戦(▲豊島将之二冠△久保利明九段)飛車銀交換の駒損ながら、5五角がいばっているのが先手の主張です。ここから▲7四歩△同飛▲6五銀が「角筋は受けにくし」の攻め。以下△1四飛に▲7四歩△6四歩▲7三歩成△同玉▲5六桂と、角の利きを生かして目一杯攻めていきます。形勢は難しいながら堅陣を生かして先手が押し切りました。これで豊島二冠は名人初挑戦。三冠を目指して4月から佐藤天彦名人とのシリーズが始まります。
名人初挑戦となる豊島二冠(写真左) 名人戦棋譜速報より
【第3図は△5四同銀まで】
第3図は第12期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦(▲里見香奈女流四冠△加藤桃子奨励会初段)。終盤戦で、駒の損得はありませんが陣形の差と手番を握っている先手がはっきり優勢です。ここで▲7二金が「寄せは俗手で」の手堅い攻め。飛車を逃げれば▲6二金と駒をはがすのが確実です。実戦は△6三飛と粘りましたが、▲7一金△8三飛▲7二金と攻めて先手勝勢になりました。
タイトル挑戦を決めた里見女流四冠(写真左) マイナビ女子オープン中継ブログより
【第4図は▲4六飛まで】
第4図は第30期女流王位戦挑戦者決定戦(▲清水市代女流六段△里見香奈女流四冠)。リーグを全勝で勝ち上がった里見女流四冠は、こちらも挑戦者決定戦に進出。ここで△4二飛が「戦いの起こった筋に飛車を触れ」で覚えておきたい筋。以下▲2四歩△同歩▲9七角に△5二銀と自陣を引き締めながら飛車をさばく準備が整いました。陣形の差を生かして最後は圧勝となり、マイナビ女子オープンに続く挑戦権獲得。ヒューリック杯清麗戦も勝ち進んでおり、女流七冠も視野に入るほどの勝ちっぷりで、4月からの戦いに注目が集まります。
勝った里見女流四冠 女流王位戦中継ブログより
敗れた清水女流六段 女流王位戦中継ブログより
【第5図は▲8九飛まで】
第5図は第77期順位戦B級1組最終戦(▲行方尚史八段△木村一基九段)。A級復帰を懸けた大一番です。ここで△3七歩成が「金は斜めに誘え」の軽手で、後手の勝ち筋に入りました。▲3七同金なら△3八歩が痛打で、どう応じても寄り筋にはいります。実戦は▲4二と△6二玉▲5九銀打と根性の粘りを見せましたがこれではつらく、後手が押し切りました。木村九段は9期ぶりのA級復帰となりました。
A級への昇級を決めた木村九段(写真左) 名人戦棋譜速報より
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段