藤井聡太が最年少で七段に昇段、20代の新タイトルホルダーが2人も誕生した5月の将棋界を振り返る【2018年5月振り返り】

藤井聡太が最年少で七段に昇段、20代の新タイトルホルダーが2人も誕生した5月の将棋界を振り返る【2018年5月振り返り】

ライター: 生姜  更新: 2019年02月06日

2018年振り返り

2018年の将棋界を振り返るこのシリーズ。今回は5月の出来事をご紹介します。5月といえば、ゴールデンウイークの月ですね。連休中も各所で将棋イベントが行われたようです。それでは、新タイトルホルダーが二人も生まれ、あの棋士が最年少で七段に昇段した5月を振り返ってみましょう。(肩書・段位はいずれも当時)

ヒューリック杯棋聖戦に豊島将之八段が挑戦(2018年5月1日)

4月から不動産デベロッパーで有名なヒューリック株式会社が特別協賛となり、「ヒューリック杯棋聖戦」となりました。その初代ヒューリックを目指すべく挑戦者決定戦に勝ち上がったのは三浦弘行九段豊島将之八段でした。三浦九段といえば1996年、羽生善治七冠から棋聖位を奪取し、羽生七冠時代を終わらせた棋士としておなじみ。棋聖戦にはいっそうの愛着があったことでしょう。対するは豊島将之八段。こちらも実力はトップクラスながら、タイトルまでは届かないという状況でした。なんとかタイトルを取らせてあげたいと望むファンも多かったはずです。

【第1図は▲3四桂まで】

第1図は59手目▲3四桂と打ったところ。先手は左右挟撃の寄せ形を築き、▲4二桂成△6一玉▲5二銀までの詰めろをかけました。一見後手がピンチのようですが、△5一角がしぶとい受け。実戦は▲3二と△7六歩▲3八銀△2四角▲4六歩△同角▲3九金△7七歩成と進み、後手が押しきりました。後手玉は妙に寄りません。当時の中継コメントでは▲3二とに代えて▲6五銀△同歩▲4二と△同角▲同桂成△同玉▲3四桂という順が解説されていました。その順なら難解ながら先手も戦えたようです。

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対局後の様子 棋聖戦中継ブログより

満を持して初タイトルを狙う豊島八段。しかし、相手はタイトル獲得通算100期に王手をかけていた羽生善治棋聖(竜王)でした。悲願の初タイトルか、節目の大台か。まさに歴史に残るタイトル戦が行われたのです。結果は既報の通り。豊島八段が3勝2敗でシリーズを制し、悲願の初タイトルを獲得しました。

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初タイトルを獲得した豊島将之新棋聖 棋聖戦中継ブログより

最年少七段誕生(2018年5月18日)

ついこの間まで四段だった棋士が1年で七段に上がろうとしています。将棋界というのは段位がそう簡単に上がらないシステムなのに、ついこの間まで四段だった棋士が1年で七段に上がろうとしています。竜王戦ランキング戦5組。昨年度に6組から昇級を果たした藤井聡太六段ですが、5組に上がってもその快進撃は止まりません。あれよあれよとトーナメントを勝ち進み、船江恒平六段との決勝に進出しました。ただ、将棋通の方は藤井六段の快進撃を止める予感もあったかもしれません。あるジンクスがありました。

船江六段は井上慶太九段門下。井上九段門下といえば藤井六段と相性がいいことで噂されていました。菅井竜也王位(当時)稲葉陽八段の弟子に加え、師匠自らも藤井六段に勝っていたのです。元々の勝率が高い藤井六段にとっては気になるデータだったかもしれません。さらに船江六段も若手のホープ。藤井六段とは詰将棋が得意という点で共通したものがあります。

【第2図は▲1五銀まで】

第2図は先手が▲1五銀と出た局面。本局は角換わりの将棋になりました。船江六段の作戦は棒銀。▲7八金という守りの手を省略していることからも作戦を練ってきたことがうかがえます。ここで△4五角が手筋の受け。▲7八金と上がっていないこともとがめています。▲7八金に△1四歩▲2四歩△同歩▲同銀△2七歩と棒銀を受け止めにかかります。船江六段も▲4八飛△2四銀▲5五角と飛車香両取りで応戦しますが、結果は藤井六段が短手数で先手玉を討ち取りました。

15歳9ヵ月で七段というのは過去に例を見ない大記録。1年間に3回昇段したというのも今後はなかなか破られないでしょう。現行の規定の中では「竜王位1期獲得」「タイトル2期獲得」が最短コースとなります。これまでのようにすぐ昇段とはいかないと思われますが、藤井七段の更なる躍進に期待しましょう。

新タイトルホルダー2人(2018年5月24日、26日)

2018年は新たな若いタイトルホルダーが続々と誕生しました。世代交代の訪れを予感させます。それではまず4月でも触れたマイナビ女王オープン戦から。

【第3図は▲7七金まで】

第3図は決着局の最終盤。挑戦者の西山朋佳三段勝勢で迎えた局面です。△5七桂打から決めにいきました。▲5七同銀△同桂不成▲6八玉に△6九金から長手数の追い詰み。豪快な収束で、西山三段らしさが出た将棋でした。5連覇を目指した加藤桃子女王は惜しくも破れ、永世女王ならず。それでも最後まで指し続ける姿には胸を打たれたことと思います。両者とも奨励会に所属しているので、さらに大きな目標を叶えてもらいたいですね。

続いては叡王戦です。高見泰地六段が逆転の将棋で次々と白星を重ねていきます。ついにタイトルまであとひとつまで迫った第4局。対局場は群馬県は富岡市「富岡製糸場」でした。

【第4図は△6四香まで】

第4図はクライマックスの局面。高見六段はもう勝ちが見えていたかもしれません。あと少しでタイトルが手に入る。高見六段の心中たるや、相当なものがあったに違いありません。ここで高見六段は角を逃げずに▲3二歩と王手をし、△2一玉▲6三馬と銀を取ります。そこから△6三同飛▲3一歩成△同玉▲3二銀と進んで金井六段の投了となりました。

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対局中の高見六段 叡王戦中継ブログより

高見叡王は25歳、西山女王は23歳。これからの活躍がますます期待されます。20代の活躍が目立ちますが、佐藤天彦名人をはじめとする30代、未だバリバリ顕在の羽生世代が多い40代、10代だって藤井聡太七段がいます。将棋界はまさに戦国時代なのです。

藤井聡太七段の快進撃に加え、20代のタイトルホルダーが誕生するなど、5月は若手の活躍が目立ちましたね。6月はまた新たなヒロインが誕生します。上半期最後の月もお楽しみに。

生姜

ライター生姜

1993年生まれ。将棋連盟モバイルを中心に活動する中継記者。2018年現在は最年少の記者。棋士の食事注文に肉生姜焼き定食があると反応する。

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