「一段金に飛車捨てあり」竜王戦第5局など注目対局で出た格言を振り返る【注目対局プレイバック 2018年12月上旬】

「一段金に飛車捨てあり」竜王戦第5局など注目対局で出た格言を振り返る【注目対局プレイバック 2018年12月上旬】

ライター: 渡部壮大  更新: 2018年12月24日

注目対局に出た格言を取り上げるこのシリーズ。今回は12月上旬に行われた注目対局を振り返ってみましょう。

【第1図 第31期竜王戦七番勝負第5局】

第1図は第31期竜王戦七番勝負第5局(▲羽生善治竜王△広瀬章人八段)。▲2一飛成と王手で取って、△3一金と弾かれたところです。7七の銀、7三の金など多くの駒が取られる形になっていますが、どういう方針で指すのが良いでしょうか。実戦は▲3三桂△4二玉▲7六銀と飛車を見捨てました。飛車を渡しても4九金が安定した形で、「一段金に飛車捨てあり」の格言通りの局面になっています。飛車の効果的な打ち込み場所がなく、自玉の安全度を最優先した好判断でした。

【第2図 第31期竜王戦七番勝負第5局】

進んで第2図は終盤戦で、△8七歩に▲同馬と取った局面。第1図から30手近く経っていますが、まだ後手は飛車を使えていません。「馬の守りは金銀3枚」の格言通りで、先手玉の安定感が抜群です。以下△8五歩▲7五銀△9五桂▲9六馬と丁寧に応接して勝ちきりました。

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局後の羽生竜王。竜王戦中継ブログより

【第3図 第31期竜王戦七番勝負第6局】

第3図は竜王戦七番勝負の第6局です(▲広瀬章人八段△羽生善治竜王)。ここで▲2七飛が「自陣飛車に好手あり」。△1九角成▲2一飛成と2枚目の竜を作って先手好調です。以下後手は△3一歩と金底の歩で耐えますが、▲2八歩で馬を封じたのが好手で、先手優勢がはっきりしました。青野流の最新形で広瀬八段が快勝し、七番勝負はフルセットにもつれ込みました。

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広瀬八段が快勝しフルセットに。竜王戦中継ブログより

【第4図 第68期王将戦挑戦者決定リーグプレーオフ】

第4図は第68期王将戦挑戦者決定リーグプレーオフ(▲糸谷哲郎八段△渡辺明棋王)。後手優勢の終盤戦です。しかしここで△8一飛と逃げるようでは▲4三銀成で薄くされて大変です。ズバッと△6六飛と切り、▲同金に△4二金引が「金は引く手に好手あり」で一気に後手陣が安定しました。「終盤は駒の損得より速度」の格言にも沿っています。▲5一馬は仕方ありませんが一瞬攻めが重い形となり、△3九馬から寄せに出て後手が押し切りました。

渡辺棋王は4年ぶりの七番勝負登場です。

【第5図 第77期順位戦B級1組9回戦】

第5図は第77期順位戦B級1組9回戦(▲渡辺明棋王△橋本崇載八段)。角換わりの中盤戦で、飛車当たりの先手でと金を作られた局面です。しかし「飛車は十字に使え」の格言通り、用意の好手順がありました。実戦は▲2四飛△2二角▲3四飛△3一歩▲3七飛と進み、と金の除去に成功です。角取り、金取りと軽快に飛車を使いました。

この後も快調な指し回しを見せた渡辺棋王が制勝。これで負けなしの9連勝となり、A級復帰を決めました。今期順位戦で昇級第一号です。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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