2018年も勝ちまくった豊島二冠や藤井七段がみせた将棋の格言とは?【注目対局プレイバック 2018年12月下旬】

2018年も勝ちまくった豊島二冠や藤井七段がみせた将棋の格言とは?【注目対局プレイバック 2018年12月下旬】

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年01月06日

注目対局に出た格言を取り上げるこのシリーズ。今回は12月下旬に行われた注目対局を振り返ってみましょう。

【第1図 第31期竜王戦七番勝負第7局】

第1図は第31期竜王戦七番勝負第7局(▲広瀬章人八段△羽生善治竜王、段位はいずれも当時)。△2五馬と金取りに当てたところで、難解な中盤戦です。ここで▲3六歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。△3六同馬なら▲4七金と、馬取りの先手で金取りを受けることができます。実戦は△6二金▲6四歩△4五歩▲1二歩以下激戦が続きましたが、最後は広瀬八段が突き放し、4勝3敗で竜王を奪取しました。

【第2図 第44期棋王戦挑戦者決定戦第1局】

第2図は第44期棋王戦挑戦者決定戦第1局(▲広瀬章人八段△佐藤天彦名人)。5五の銀が大威張りで、先手が作戦勝ちの局面です。「攻めは飛角銀桂」の格言通りの配置で、▲3五歩や▲4五歩を突けば理想的な攻めが実現しそうです。ここで▲9六歩が「端歩は心の余裕」と言える一手でしょうか。将来の△9五桂を消して大きな手です。後手はもう一手待っても▲5九金など価値の高い手を指されてしまうので△7五歩から暴れましたが、的確に対応して先手の快勝となりました。広瀬竜王は二冠を目指しての戦いとなります。

【第3図 第76期A級順位戦】

第3図は第76期A級順位戦(▲佐藤康光九段△羽生善治竜王)。後手は穴熊の堅陣で、先手が入玉できるかという局面。ここで△5七歩がまさに「一歩千金」のたたきでした。▲5七同金直は△6八竜、▲同金左は△7八竜(▲同銀は△7六とまで)といずれも駒をタダで取られてしまいます。また、▲5七同玉と下がらされるようでは入玉が望めないでしょう。実戦は▲8六桂ですが、△5八歩成と金を一枚取ることができました。以下も激戦が続いて最後は一手違いの寄せ合いとなりましたが、後手が競り勝っています。

【第4図 第32期竜王戦ランキング戦1組】

第4図は第32期竜王戦ランキング戦1組(▲豊島将之二冠△三浦弘行九段)。広瀬竜王への挑戦を目指すランキング戦が始まっています。横歩取りとは思えない手厚い陣形で、先手優勢です。ここで▲8四銀が寄せの決め手。「金は斜めに誘え」「要の金を狙え」ですね。△8四同金は▲6三桂成で「金なし将棋に受け手なし」です。実戦は△1八角と自陣に利かしましたが、▲4五歩△同角成▲7三銀成△同桂▲8三金△6二玉▲4三桂成まで後手の投了となりました。「玉は包むように寄せよ」です。

【第5図 第76期順位戦C級1組】

2018年も勝ちまくり、注目を集めた藤井聡太七段。第5図は第76期順位戦C級1組(▲門倉啓太五段△藤井聡太七段)。ここで△6五香が「歩切れの香は角以上」の通り厳しい香打ち。7七角を取ってしまうか利きを止めれば後手に怖いところがなくなります。以下は数手で先手の投了となりました。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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