ライター山口絵美菜
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。
ライター: 山口絵美菜 更新: 2017年07月12日
関西将棋会館の最寄り駅である大阪市の福島駅周辺はランチの激戦区。駅から少し歩くだけでも次から次へと目に飛び込んでくるおいしそうなメニューの数々に思わず目移りしてしまうほど。かつて「天下の台所」と呼ばれた大阪ですが、いうなれば福島は「棋士の台所」。対局の日はもちろん、日々将棋に向き合う棋士たちの「食」を支えているといっても過言ではありません。
今回は福島に軒を連ねるお店の中から「更科食堂」をご紹介いたします。「更科食堂」といえば、怪童と呼ばれ、名人を追い求め、29歳の若さでこの世を去った故・村山聖九段が足繁く通っていたお店として耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
「更科食堂」は福島駅の改札前にある通りの向かい、高架下の一角にあります。店先には「鮭定食」や「かつ丼セット」などのメニューが写真付きでずらりと並んでおり、藍色の暖簾をくぐるとそこはまさに「食堂」という言葉がしっくりくるほどに活気にあふれた場所。壁には昨秋上映された映画「聖の青春」のポスター、そして作中で村山先生を演じた松山ケンイチさんと羽生善治先生を演じた東出昌大さんのサインが飾られていて、映画の公開中はファンの方がよくお店に来られたそう。
今回は村山先生がよく召し上がっていたという「塩サバ定食」を注文。ほかにもだし巻き卵が丸々一本出てくる「だし巻き定食」や「煮付け定食」、人気の「カツとじ定食」など、たくさんのメニューが壁に掲げられています。
この日の「塩サバ定食は」お味噌汁にごはん、塩サバ、高菜のお漬物に「一品」として野菜のてんぷら・茄子の煮びたし・ほうれん草の白和えの盛り合わせがセットになっていて、満腹間違いなしのボリューム。
木綿豆腐の入ったお味噌汁はだしが香り、ほっこりするお味で、つゆだくの茄子は香ばしく、白和えは噛めば噛むほどやさしい甘みが引き立つおふくろの味。皮目をパリッと焼いた塩サバに醤油をぽたりと垂らした大根おろしはまさにご飯のおともとして最強というよりなく、思わずおかわりしたくなるおいしさです。
昔から棋士や奨励会員がお昼時によく訪れる「更科食堂」。やわらかい雰囲気のおかみさんにお話を伺うと、村山九段はお昼や夜におひとりでいらして静かに漫画を読んでいたことや、同年代の奨励会員と5~6人でやってきて、10代同士なのに全員敬語で会話していてびっくりしたことなどを楽しげにお話ししてくださいました。かつては当時奨励会員だった畠山成幸八段・鎮七段や、最近まで山崎隆之八段がよく通われていたそう。
お昼時は店内が大変にぎわうので、最近では珍しい「相席」になることも。初めて行かれる際やゆっくりと食事を、という時には13時をまわってしばらくしてからがおすすめです。
「腹が減っては戦ができぬ」ということわざがあるように、食事は勝負に欠かせないもの。おなかも心も満たす食事でアイディアがひらめき、新たな一手が生まれるかもしれません。福島駅に足を運んでみてはいかがですか?おいしいランチが待ってます!
撮影:山口絵美菜
ライター山口絵美菜