「ギリギリ59秒では指さないよう」畠山鎮七段のアドバイスで、四段昇段を決めた【斎藤七段インタビュー vol.2】

「ギリギリ59秒では指さないよう」畠山鎮七段のアドバイスで、四段昇段を決めた【斎藤七段インタビュー vol.2】

ライター: 池田将之  更新: 2017年03月22日

第2回目は、斎藤慎太郎七段が奨励会にいた頃の話をしていただきました。師匠である畠山鎮七段からは、かなり具体的なアドバイスもあったようです。それは、一体どのようなものだったのでしょうか?

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第50回奨励会三段リーグ戦の最終局を終え、四段昇段を決めた時の一枚。リーグ表に白星をつけている斎藤三段(当時)。撮影:日本将棋連盟広報

 ーー師匠は畠山鎮七段です。入門のきっかけを教えてください。

「畠山先生には指導対局で教えていただく機会が何度かありました。先生の指導は指し手のことだけでなく、有利な局面での心構え、不利な局面での覚悟の決め方など、精神面のこともありました。当時は小学3、4年生の子供でしたが、ほかの人には無い教えといいますか、情熱を感じました。弟子入りするのなら畠山先生がいいと親に言い、自分で手紙を書きました」

 ーー15歳の若さで三段リーグ入りしました。毎回10勝を超える成績でしたが、四段昇段は8期目でした。昇段するために、どのような試行錯誤がありましたか?

「最後の1、2期ぐらいからになるのですけど、師匠から『気負いすぎているので損をしている。息を抜くことも大事』だと言われました。誰が相手でも油断しない。悪いことではないが、勝負の世界では、時としてマイナスになる。相手を食うような自信を持って指すことも必要だと。三段で停滞しているということは、その辺りに問題があると師匠は見抜かれたのかもしれません」

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第50回奨励会三段リーグ戦で四段昇段を決め、マスコミのインタビューに答える斎藤三段(当時)。撮影:日本将棋連盟広報

 ーー具体的にはどのようなアドバイスがありましたか?

一分将棋のときに59秒で指すのは止めたほうがよいと言われました。そこまで迷っているようではいけないと。時間切れの心配もありますし、55秒くらいで指し手を決めるのが本当の指し方だと言われました。ぼくはギリギリまで迷ってしまうタイプだったのですが、それが自信の無さにつながっていたのかもしれないと、思うようになりました」

 ーーその後、どのような変化がありましたか?

「秒読みでも優位に立っているというか、相手の焦りが分かるようになりました。実際の形勢は別だとしてもです。奨励会前日の過ごし方も変わりました。音楽を聴いたり、好きなものを食べたり。研究は詰将棋や軽く序盤の作戦を決めるくらいで、当日の勝負に臨むというスタイルになりました」

対局に集中することも大切ですが、適度にリラックスをすることも重要なようですね。技術面だけでなく、精神面でも師匠の支えは、大きいものです。
次回も、お楽しみください。

取材協力斎藤慎太郎七段

2004年に6級で畠山鎮七段に入門。2012年に四段。2017年に七段。第43回将棋大賞で勝率一位賞・新人賞を受賞。

斎藤慎太郎七段インタビュー

池田将之

ライター池田将之

2010年からフリーライターとして活動開始。2015年まで将棋連盟モバイル中継記者。現在は新聞社に観戦記、将棋世界で「関西本部棋士室24時」などの記事を執筆している。

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