阿部光瑠六段、上村亘四段、香川愛生女流三段。師匠譲り、ファンサービス精神にあふれた中村修一門をご紹介!

阿部光瑠六段、上村亘四段、香川愛生女流三段。師匠譲り、ファンサービス精神にあふれた中村修一門をご紹介!

ライター: 直江雨続  更新: 2017年01月18日

2017年1月3日に放送されたNHKの将棋特番『新春お好み将棋対局 花の55年組 一門対決』はご覧になりましたでしょうか?

高橋一門 高橋道雄九段・黒沢怜生五段・熊倉紫野女流初段
塚田一門 塚田泰明九段・藤森哲也四段・塚田恵梨花女流2級
中村一門 中村 修九段・阿部光瑠六段・香川愛生女流三段

というメンバーで行われた対決に、年明け早々将棋ファンは大いに盛り上がりました。ちなみに『花の55年組』とは昭和55年度にプロ入りした棋士の通称で、プロ入りが早い順に高橋道雄、中村修、泉正樹、依田有司、島朗、南芳一、塚田泰明、神谷広志の8名です。今回は中村修九段とその門下の弟子についてご紹介します。

受ける青春! 王将のタイトル2期の中村修九段

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中村修九段は1962年11月7日生まれの54歳。東京都町田市出身、佐伯昌優九段門下。タイトル戦の出場回数は5回、タイトル獲得は王将2期(第35期~36期)。現在竜王戦は4組(1組在籍は通算11期)、順位戦はB級2組(B級1組在籍は通算11期)に在籍しています。独特の感覚を持った受け将棋の棋風は「不思議流」「受ける青春」と称されています。2011年4月より日本将棋連盟棋士会副会長を務め、棋士会主催の将棋イベントや、毎年8月に行われている『京急将棋まつり』のプロデューサーとして、さまざまな企画を生みだしています。2016年の京急将棋まつりでは佐藤天彦名人をはじめ佐藤姓の棋士が勢ぞろいした「佐藤さん集合」という企画を実現するなど、中村九段プロデュースの各種イベントは将棋ファンを楽しませてくれています。

中村九段はタイトル戦の立会人を務めることも多く、各地の将棋イベントではファンとも気さくに交流し、解説会ではそのユーモアあふれる解説と軽妙な語り口が大人気。そんなファンサービス精神に富んだ中村九段には現在プロ棋士としては阿部光瑠六段、上村亘四段、女流棋士に香川愛生女流三段という3人の弟子がいます。中村修一門はみな中村九段譲りのファンサービス精神を持ち、将棋の普及に力を入れて大活躍しています。

2014年の新人王! 阿部光瑠六段

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阿部光瑠六段は1994年10月25日生まれの22歳。青森県弘前市出身。2006年9月、小学6年生(11歳)で奨励会入り。2010年度後期三段リーグを2位で抜けて四段プロデビュー。16歳5か月でのプロ入りは現行の三段リーグ制度では歴代4位の年少記録となっています。ちなみに青森県出身の棋士は行方尚史八段以来18年ぶりでした。プロ入り1年目の阿部六段は第5回朝日杯将棋オープン戦で大活躍。二次予選で三浦弘行八段(当時)、丸山忠久九段を連破、本戦1回戦では森内俊之名人(当時)に勝利してベスト8に進出し、将棋ファンの度肝を抜きました。

2013年3月23日、第2回将棋電王戦の第1局ではコンピューターソフトの習甦に勝利。このときの快勝に将棋ファンは沸き立ちました。2014年度の第45期新人王戦では決勝三番勝負で佐々木勇気五段に2勝1敗で勝利して新人王となり、棋戦初優勝を飾っています。2015年11月5日には竜王戦2期連続昇級の規定により六段昇段。

そんな阿部六段ですが、中村修九段の門下として、ほぼ毎年『京急将棋まつり』に出演しています。席上対局や指導対局、サイン会などに毎年大活躍。青森訛りが残る朴訥とした語り口、でもたまに自虐や毒舌が混ざる阿部六段の解説はニコニコ生放送などでもファンに大人気です。2016年の第87期棋聖戦五番勝負第2局 羽生善治棋聖 vs 永瀬拓矢六段のニコニコ生放送での解説者として登場した阿部六段は師匠とのエピソードを披露してくれました。

ある日中村九段との研究会(中村門下研)に行った時のこと、同門の先輩方が来られなくなり師匠と二人っきりになったそうです。結局その日はVS(1対1での練習対局)をするでもなく、師匠と4時間おしゃべりして終わった、とのこと。そんな仲良しの師弟の4時間のおしゃべりの内容がとっても気になりますね。

愛弟子は映画主演女優? 香川愛生女流三段

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香川愛生女流三段は1993年4月16日生まれの23歳。東京都狛江市出身。2007年4月に女流育成会に入会。2008年10月1日付で女流2級デビュー、この時中学3年生でした。2009年4月29日、第3回世田谷花みず木女流オープン戦優勝(非公式戦)。2009年夏、平成21年度奨励会入会試験で、5級を受験し合格。女流棋士を休会し、2011年2月20日まで奨励会に在籍。奨励会在籍中も毎年夏に行われている『京急将棋まつり』では記録係や会場スタッフとして師匠の中村九段を手伝っていました。

2012年1月1日から女流棋士に復帰。2012年4月から、立命館大学への進学に伴い、連盟関西本部に移籍しました。関西に移籍後、関西若手棋士は『西遊棋』というユニットを結成し、精力的にイベントを開催。香川女流三段もその中核として活躍していました。勝ち気な性格と棋風などから、ファンの間では「番長」というニックネームが定着しています。そんな「番長」がタイトル戦に初登場したのは2013年の第35期女流王将戦。里見香奈女流王将に挑戦し、2勝1敗で女流王将を奪取。初のタイトルを獲得しました。

清水市代女流六段を挑戦者に迎えた2014年度第36期女流王将戦では第1局では敗れたものの第2局、第3局で連勝し、タイトルを防衛し、第35期、第36期の女流王将となりました。奇しくも師匠の中村修九段もまた第35期、第36期の王将のタイトルを獲得していたのです。2015年度第37期女流王将戦では、挑戦者里見香奈女流名人・女流王位にタイトルを奪われてしまいます。しかし2016年度第38期女流王将戦で、再び決勝トーナメントを勝ち上がり、挑戦者として4年連続でタイトル戦を戦うことになりました。結果は敗れたものの、トップ女流棋士としての強さをファンに見せてくれました。

なお、近年の香川女流三段は人狼やゲームなど、将棋以外のジャンルでの活躍も目覚ましく、映画『女流棋士の春』では主演女優デビューし、主題歌も担当しています。各種イベントのプロデューサーを務めている師匠の影響もあったのでしょうか、さまざまなジャンルでの活躍で将棋ファンを大いに増やしている香川女流三段からは今後ますます目が離せません。

特技は棋士のモノマネ? ファンに愛される上村亘四段

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上村亘四段は1986年12月10日生まれの30歳。東京都中野区出身です。1998年9月、6級で奨励会に入会。2012年10月1日、25歳で四段プロデビュー。慶應義塾大学理工学部数理科学科を卒業し、史上初の慶大出身棋士となりました。上村四段は奨励会時代が長く、24歳で三段、プロデビューも26歳の年齢制限まであと三段リーグ1回の猶予を残すのみというぎりぎりの状態でした。

京急将棋まつりでは長年裏方として記録係や会場スタッフを務めており、プロ入り後も席上対局や師匠が考案した各企画に登場してファンを楽しませてくれています。関東の若手棋士ユニット『東竜門』のメンバーとして、そのイベントにも頻繁に登場。

上村四段のひそかな特技が「棋士のモノマネ」。十八番は加藤一二三九段のモノマネや窪田義行七段のモノマネです。ときには師匠の中村修九段のモノマネを披露することも!? また、上村四段は将棋連盟野球部にも所属し、主にショートのポジションで白球を追いかけています。将棋や野球、そして普及にも全力投球の上村四段は多くのファンに愛されている棋士のひとりです。

師匠の中村修九段とその弟子の棋士を紹介しました。師匠譲りのファンサービスで活躍している中村門下の3人はみな個性的で、それぞれに大勢のファンがいます。普及に対局に、これまでの将棋界の常識を覆すような新手を連発している中村一門に、これからもぜひご注目ください!

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

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