まるで隙がない。関西の俊英、豊島将之七段をご紹介。王将戦七番勝負へ2回目の挑戦を目指す!

まるで隙がない。関西の俊英、豊島将之七段をご紹介。王将戦七番勝負へ2回目の挑戦を目指す!

ライター: 直江雨続  更新: 2016年11月18日

今期の王将戦挑戦者を決める『第66期王将戦挑戦者決定リーグ戦』を戦う7人の棋士を紹介するコラム、第6回は豊島将之七段です。過去には王将戦、王座戦、棋聖戦と3つのタイトル挑戦経験を持つ関西の俊英、豊島七段のエピソードや王将リーグでの実績をご紹介します。

序盤・中盤・終盤、隙がありません

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豊島七段は1990年4月30日生まれの26歳。愛知県一宮市出身。桐山清澄九段門下。子供のころから天才の呼び声高く、タイトル獲得が期待されてきた関西の若き俊英です。4歳の時にNHKの『クローズアップ現代』で羽生世代の特集をしていたのを見て将棋に興味を持ち、両親からルールを教わると、あっという間に強くなり、関西将棋会館の道場に通うようになります。小学3年生(9歳)の時には道場六段となり、この年の9月に奨励会入り。小学5年生で奨励会1級、中学二年生で奨励会三段まで上り詰めるなど早々に才能を見せ、プロ入り前から将棋ファンの注目の存在でした。三段リーグは5期戦い、2007年4月、16歳の時に四段昇段。棋風は攻守のバランスに優れた万能タイプで居飛車も振り飛車も指しこなすオールラウンドプレイヤーとして知られています。

竜王戦は1組、順位戦はB級1組に所属。2010年度の第60期王将戦、2014年度の第62期王座戦、2015年度の第86期棋聖戦、3度のタイトル挑戦経験があります。2014年3月の第3回電王戦ではコンピュータ将棋ソフトのYSSを相手に勝利し、将棋ファンだけでなく世間的な注目を浴びました。また、関西若手棋士ユニット『西遊棋』(さいゆうき)のメンバーとして、イベントの開催なども積極的に行い、将棋の普及にも力を入れています。ツイッターでも西遊棋実行委員会(@kansaishogi)のアカウントで週替わりの担当をすることもあり、これまでにも楽しいつぶやきでファンを沸かせてきました。

そんな豊島七段の存在が一躍世に知られたのは2012年のNHK杯1回戦でのこと。対戦相手の佐藤紳哉六段(当時)が対局前のインタビューで「豊島? 強いよね。序盤・中盤・終盤、隙がないと思うよ」というインパクトの強すぎる発言をしたことがきっかけです。以来「豊島? 強いよね」「序盤・中盤・終盤、隙がない」という言葉は豊島七段のキャッチコピーとなりました。

躍動する王将リーグ

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豊島七段の王将戦への挑戦は2008年の第58期から始まりました。この時は一次予選の二回戦で敗退。翌年の第59期、一次予選から出場した豊島四段(当時)は福崎文吾九段、糸谷哲郎五段(当時)、阿部隆八段、南芳一九段を破って二次予選入り。二次予選では横山泰明五段、高橋道雄九段、藤井猛九段に勝利し、なんと挑戦2年目にして早くも王将リーグ入りを果たしました。しかし、この時の王将リーグでは2勝4敗となり、陥落。

翌年の第60期は二次予選からの出場となった豊島五段(当時)は谷川浩司九段、丸山忠久九段に勝利して2年連続の王将リーグ入り! そしてその王将リーグでは初戦で渡辺明竜王に敗れたものの、そこから森内俊之九段、深浦康市九段、三浦弘行八段(当時)、羽生善治名人(当時)、佐藤康光九段に連勝! 5勝1敗の成績で久保利明王将(当時)への挑戦者となり、タイトル戦に初登場したのです。ちなみにこの時の豊島五段は20歳。王将戦挑戦者の最年少記録を更新する快挙でした。またすべてのタイトル戦を通しても、平成生まれの棋士が挑戦者になったのはこの時が初めてでした。

久保王将との七番勝負!

2011年の1月8・9日、徳島県鳴門市の「大塚国際美術館」で開幕した第60期王将戦七番勝負、豊島六段(当時)を迎え撃つのは当時棋王のタイトルも保持し二冠だった久保王将。二人とも関西所属の棋士ということで、関西勢同士のタイトル戦は実に18年ぶりでした。その前は第42期王将戦、谷川王将と村山聖六段戦までさかのぼります。豊島六段初めてのタイトル戦、結果は2勝4敗で王将獲得はなりませんでした。この時の七番勝負の第1局で敗れた豊島六段がその翌日に行われていたジュニア将棋大会にゲストで呼ばれた時の挨拶は広く知られています。

『将棋は本当に楽しいです。昨日負けた私が言うのですから、間違いないと思います』

この言葉はのちに「3月のライオン」11巻発売記念ポスターでも使われ、大きな反響を呼んでいます。

その後の豊島七段の王将リーグの実績

久保王将との七番勝負に敗退した豊島七段は翌年の第61期王将リーグでも5勝1敗の成績で1位タイとなります。しかし、プレーオフで佐藤康九段に敗れてタイトル戦への出場はなりませんでした。その翌年の第62期は3勝3敗で残留。さらに翌年の第63期は3勝3敗の成績ながら順位の差で陥落してしまいます。再び2次予選からの出場となった第64期では、菅井竜也五段、久保利明九段に勝って王将リーグ入り。しかし、2勝4敗でまたしても陥落となってしまいます。第65期では二次予選の決勝で久保九段に敗れてリーグ入りを阻止されてしまいました。そして今年、第66期王将戦は一次予選からの出場となったものの、小林裕士七段、藤原直哉七段、佐藤和俊六段に勝って二次予選進出。そこで西川和宏五段、屋敷伸之九段、戸辺誠七段に勝って2年ぶりの王将リーグ入りを決めました。

豊島七段の王将リーグでのこれまでの成績を振り返ってみますと、今期が7回目のリーグとなります。過去6回の成績は挑戦1回、残留2回、陥落3回となっています。将棋日本シリーズJTプロ公式戦では、嬉しい棋戦初優勝。この勢いのまま王将挑戦なるのでしょうか。2011年以来の七番勝負への登場を目指す豊島七段の戦いにご注目ください!

*写真は王座戦中継ブログ棋聖戦中継ブログより引用。

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

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