永瀬が2勝を返す 8月下旬の注目対局を格言で振り返る

永瀬が2勝を返す 8月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2025年09月01日

 藤井聡太王位が一気の3連勝で防衛に迫りましたが、第4局、第5局は挑戦者が連勝し、勝負は9月へと持ち越されました。女流棋界の頂上決戦となった白玲戦七番勝負も開幕です。

伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦七番勝負第4局

【第1図は▲6七玉まで】

 第1図は伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦七番勝負第4局(▲藤井聡太王位△永瀬拓矢九段)。後手優勢から混戦になりそうな局面でしたが、後手が踏み込みました。自玉近くに成桂がいて怖いところですが、△6九銀が「要の金を狙え」の厳しい寄せ。これで先手玉は受けが難しく、▲4三銀などの余裕がありません。▲6六玉に△7八銀不成▲同香△6九竜▲6七歩△6四香と迫り、先手玉を寄せ切りました。

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写真:翔

伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦七番勝負第5局

【第2図は△4四歩まで】

 第2図は王位戦第5局(▲永瀬九段△藤井王位)。跳ねた桂がすぐに捕まり「桂の高跳び歩のえじき」になりそうですが、▲4三歩が「金は斜めに誘え」の継続手。△同金はもちろん▲2三飛成ですし、△4五歩も▲4二歩成△同金▲2三飛成です。実戦は△5二金としましたが、▲5三桂成△同金▲4二歩成△3三桂▲2九飛△4二金▲2三飛成でやはり竜を作ることに成功しました。以下は攻め合いとなりましたが、玉の深さを生かした先手の快勝となっています。

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写真:飛龍

ヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負第1局

【第3図は△2五飛まで】

 第3図はヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負第1局(▲西山朋佳白玲△福間香奈女流六冠)。駒得に成功して先手優勢の終盤戦です。▲8六桂が「桂は控えて打て」の手筋。△8三玉と顔面で受けましたが、構わず▲7四桂△同玉▲7五馬△8三玉▲7四銀△9三玉▲6三歩と攻め立てて、先手が押し切りました。

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写真:玉響

ALSOK杯第75期王将戦二次予選

【第4図は▲6四銀まで】

 第4図はALSOK杯第75期王将戦二次予選(▲広瀬章人九段△伊藤匠叡王)。激しい終盤戦ですが、手番を握る後手がチャンスを迎えています。6四の銀を取らずに△7六桂が「玉は包むように寄せよ」の的確な寄せ。▲6六角は攻防手ですが、△7七銀と叩き込んで後手の勝ち筋です。▲同桂は△6九角以下の詰み、実戦の▲同角も△同桂成で角が消えて、後手玉が安全になりました。伊藤叡王は初の王将リーグ入りです。

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写真:文

ABEMAトーナメント2025決勝戦第9局

【第5図は△2五玉まで】

 第5図はABEMAトーナメント2025決勝戦第9局(▲広瀬章人九段△斎藤慎太郎八段)。決勝戦は4勝4敗となり、最終第9局へと持ち込まれました。確実に後手の逃げ道を減らす▲4五金が「玉は包むように寄せよ」の確実な寄せ。△3四香は攻防手ですが、▲2七歩が厳しく、やはり後手は逃げ切れません。広瀬九段が熱戦を制し、チーム天彦が初優勝を飾りました。

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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