ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年07月23日
7月19日に(土)に放映された予選Aリーグ一位決定戦のチーム豊島「関西三銃士」(豊島将之九段、糸谷哲郎八段、大石直嗣七段)と、チーム稲葉「サンライズ↙」(稲葉陽八段、上野裕寿五段、吉池隆真四段)戦を振り返る。互いに初戦を勝ち、本戦進出を懸けた戦いだ。豊島チームと稲葉チームは昨年の準決勝でも対戦しており、吉池以外は同じメンバーだ。
開幕から2戦は大石が連投。苦しい局面もあったが、持ち時間の配分がうまくいき、若手二人に連勝。第3局はリーダー対決となった。
終盤で千日手。さらに指し直しも中盤で千日手と、まさかの事態となった。
【第1図は▲3九金まで】
何気ない序盤のようだが、ここで△8六角が次の一手のような奇手。知らないと指せない手で、解説、控室でも悲鳴があがっていた。▲同歩は△同歩で8筋突破が受からず、このままでも△7七角成から△8六歩だ。実戦は▲8八角と引いたが、△9五角が継続の好手。代えて△4二角や△5三角では▲7七角でまたまたの千日手模様になるところで、連続千日手の流れから稲葉に錯覚があったようだ。△9五角に▲9六歩と突いたが、△8六歩▲同歩△同角▲8七歩△5三角▲7七飛△3五歩で、桂も得して後手がはっきり良くなった。以下は手数が掛かったものの、豊島が押し切っている。
第4局は二転三転の勝負を糸谷が制し4連勝。だが、ここからチーム稲葉も踏ん張る。第5局でリーダーの稲葉が勝って流れを変えると、第6局を勝った吉池が続く第7局も連投。
吉池ペースの戦いだったが、豊島も底力を見せて混戦に持ち込む。いつしか形勢は逆転したが......。
【第2図は▲6一飛成まで】
ここで△6八桂成が自然に見えて危険だった。▲同金△同馬に▲5三桂が狙いすました一着で、一瞬で受けなしに追い込んだ。△同銀は▲6三馬だし、実戦の△5一歩にも▲4一桂成△同玉▲6三馬がある。第2図では△9九成桂と拾って△4五香を見せておけば、後手に分のある終盤だったようだ。
4連敗から3連勝とチーム稲葉が怒涛の追い込みを見せて第8局を迎えた。
【第3図は△8七銀まで】
角換わりから激戦の終盤になっている。方針の難しい局面だが、糸谷は▲7八角と打ち付けた。△3九飛▲6九歩△7八銀不成▲同玉△3七飛成に▲6二銀と絡み、形勢は難しいものの、先手玉が安全になり、後手の方が指し手の難易度が高い局面に持ち込んだ。以下も熱戦が続いたが、糸谷玉は最後敵陣一段目にまで逃げ込み、チームの勝ちを決める5勝目をあげた。終局直後の控室では「▲7八角は感動しましたね~」と大石。豊島も同意していた。
チーム豊島は5勝3敗で本戦一番乗り。敗れたチーム稲葉はチーム菅井との二位決定戦に臨む。
第1局 大石○─●上野
第2局 大石○─●吉池
第3局 豊島○─●稲葉
第4局 糸谷○─●上野
第5局 大石●─○稲葉
第6局 糸谷●─○吉池
第7局 豊島●─○吉池
第8局 糸谷○─●上野
【個人成績】
豊島九段 1─1
糸谷八段 2─1
大石七段 2─1
稲葉八段 1─1
上野五段 0─3
吉池四段 2─1
ライター渡部壮大