ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年03月31日
福間香奈倉敷藤花に伊藤沙恵女流四段が挑戦した大山名人杯第32期倉敷藤花戦三番勝負。両者が倉敷藤花戦三番勝負で顔を合わせるのは3度目となる。
本来は秋に行われる三番勝負だが、福間の出産による休場のため、2~3月に行われた。女流王座戦五番勝負、女流名人戦五番勝負とタイトル戦を並行して戦いながら、女流順位戦やマイナビ女子オープンの本戦をこなすハードなスケジュールだ。
第1局は大阪府高槻市「関西将棋会館」にて。福間の中飛車に後手の伊藤は向かい飛車。先手は地下鉄飛車から後手の玉頭を攻める形を作り、ペースをつかむ。
【第1図は△7一玉まで】
角銀交換の攻めだが、先手玉は手付かずで反撃の心配がないのが大きい。第1図から▲7五歩が腰の入った攻め。7筋に歩が利くようになれば7七の桂を使える形になり、攻めの厚みが増す。△8二桂と反撃含みの受けで辛抱したが、▲9五歩と端に手を付けて、やはり受け切れる形ではない。以下伊藤も粘って手数は掛かったものの、福間が手堅く指して押し切った。開幕戦を制して、福間が防衛に迫る。
写真:夏芽
第2局は岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」にて。恒例となっている第2、3局の連戦だが、例年は秋。十数回も番勝負を戦っている福間にしても、春に対局するのは新鮮だったようだ。先手の伊藤は早々に飛車先を突き越し、福間もそれに応える形で向かい飛車へ。互いにじっくりと堅陣に組み上げての持久戦となった。居飛車ペースの戦いだったが、振り飛車も玉頭から勝負を懸けて混戦に持ち込む。
【第2図は△8六歩まで】
ここは▲9六銀とかわしておけば後手も攻めの継続が難しかったようだ。実戦は▲8六同銀と強く対応したが、△4四金▲同銀△8五歩の勝負手を浴びた。▲7五歩と飛車の横利きを通して△8六歩▲同飛としたが、△8四歩が玉頭戦を制するうまい受け。こうなると玉飛接近の格好で、先手がまとめにくくなっている。玉頭の競り合いで後手がリードしてからは、素早く寄せて勝ち切った。福間が2連勝で防衛を果たした。
写真:翔
福間はブランクを感じさせず、休場を明けてからは圧巻の強さだ。これで倉敷藤花は10連覇、通算15期目の獲得。女流棋戦における同一タイトル獲得記録は、清水市代女流七段の持つ女流王位の14期だったが、15期目は新記録。福間がまた一つ女流棋界に記録を打ち立てた。
ライター渡部壮大