ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2024年11月12日
西山朋佳白玲に福間香奈女流五冠が挑戦した第4期白玲戦七番勝負。両者が白玲戦七番勝負で顔を合わせるのは3期連続だ。
第1局は東京都港区「グランドニッコー東京 台場」にて。相振り飛車の出だしから、福間は玉を左へ囲う得意の作戦。西山が軽快なさばきでリードを奪うが、福間も粘り強くチャンスを待ち、逆転に成功した。
【第1図は▲6六馬まで】
形勢は先手が勝ちに近付いていたが、この▲6六馬は危険な一着。竜に当てた手だが、代えて▲7一馬と手堅く指しておけばよかったようだ。ここで△7七香が鋭い切り返し。▲同馬は竜の当たりがなくなるので、△5三歩と取られてしまう。▲7七同桂は仕方ないが、△8九銀▲6八玉△8八飛▲7八香△6七歩と畳みかけて、▲同馬で竜の当たりを外されてしまった。△5三歩で馬を取られては完全に逆転だ。大熱戦を制し、西山が開幕戦を勝利。
写真:紋蛇
第2局は鹿児島県指宿市「指宿白水館」にて。序盤に駆け引きがあったが、結局は相振り飛車に落ち着いた。西山の動きにうまく対応し、福間がリードを奪う。
【第2図は▲5五歩まで】
後手は完全に押さえ込み態勢に入っている。△8九角▲9七飛△5六角成が手厚い。以下▲7二銀△5三金▲8一銀成と必死に食い下がるが、△6五馬と攻めの足掛かりを除去しにいって切れ模様は明らかだ。先手からの攻め筋を完全に消してから決めに出て、福間が1勝1敗に追い付く。
写真:武蔵
第3局は奈良県奈良市「ふふ奈良」にて。福間の居飛車に、西山は振り飛車穴熊に組む。振り飛車が踏み込むタイミングを逸し、居飛車が手厚く押さえ込んだ。
【第3図は△9三同銀引まで】
先手は得した駒で端を攻めており調子がいい。▲8五桂△8四桂▲9八香打とシンプルに端に圧力を掛けていき、穴熊はとても支えきれない。以下も的確に端を攻めて先手が押し切った。
写真:夏芽
第4局は石川県金沢市「ホテル日航金沢」で行われる予定だったが、西山の新型コロナウイルス感染により延期。第5局の予定だった京都府京都市「ザ・ゲートホテル京都高瀬川」で行われた。角交換型の相振り飛車から熱戦となるが、徐々に福間が押していく。
【第4図は▲2八桂まで】
ここは△2四桂とし、上から押しつぶす寄せを狙えば後手に分のある終盤戦だったようだ。実戦は△6六歩としたが、▲同金で後手玉がかえって危険になってしまった。そこで△2四桂と打ったが、構わず▲7五金と取られて、要の馬が消えて攻守が逆転。チャンスを待った西山が逆転勝ちを収めた。
写真:潤
これで2勝2敗となったが続く第5局、第6局は福間の体調不良により不戦敗となり、4勝2敗で西山の防衛となった。白熱したシリーズで、過去2期もフルセットとなっていただけに、対局者が一番残念なことだろう。とは言え女流棋界のトップとして戦い続ける両者。今回見られなかった分まで、次回以降のシリーズに期待したい。
ライター渡部壮大