チーム稲葉VSチームエントリー ABEMAトーナメント2024~予選Dリーグ第二試合振り返り~

チーム稲葉VSチームエントリー ABEMAトーナメント2024~予選Dリーグ第二試合振り返り~

ライター: 渡部壮大  更新: 2024年07月05日

 6月29日(土)に放映された予選Dリーグ第二試合のチーム稲葉「井上一門」(稲葉陽八段、藤本渚五段、上野裕寿四段)と、エントリーチーム「四間の流儀」(大橋貴洸七段、井出隼平五段、冨田誠也五段)の戦いを振り返る。チーム稲葉は第一試合を5勝3敗で勝っており、この試合に勝てば予選通過が決まる。エントリーチームは初戦だが、3人とも予選からの勝ち上がりなので時間への対応は問題ないだろう。大橋、冨田は出場経験があるが、井出は初出場となる。

【第4局 大橋貴洸七段―上野裕寿四段】

abema2024_0629_playback_01.jpg

 開幕からチーム稲葉が3連勝し、一気に勝利へと迫る。リーダーの稲葉はここまで若手の二人に任せており、第4局も上野が登場。苦しいエントリーチームはリーダーの大橋が出て、第1局と同じカードとなった。

【第1図は▲7七角まで】

 図は6八の角を7七へ上がり△6六歩を受けたところ。逆に▲6六歩と打てれば先手が優勢なのだが、歩切れが痛い。△6一香が単純ながら受けにくい。▲6六桂と埋めたが、△6三飛と引いて次の△6五歩が厳しく後手優勢だ。以下も気持ちよく押し切って大橋が制勝。エントリーチームに初白星をもたらした。
 大橋は続く第5局に連投した。稲葉はこの日初の登場となったが、序盤にポカがあり大橋快勝。2連勝で追い上げる。

【第6局 井出隼平五段―藤本渚五段】

abema2024_0629_playback_02.jpg

 第3局に続くカードとなった。その将棋は井出が押せ押せムードだったが、藤本が辛抱を実らせて逆転勝ちをしている。本局は井出が角交換振り飛車で藤本得意の急戦を封じる展開になった。

【第2図は△6四歩まで】

 井出が玉頭戦を制して局面、時間ともにリードするが、藤本はチャンスを待っていた。ここで▲5六飛のぶつけが好手で形勢逆転。飛車がさばけてしまっては陣形の差が大きい。以下△同竜▲同銀△8三角▲5二銀で急転直下で先手勝勢になった。井出は▲5六飛をうっかりしていたようだ。
 これで藤本は個人3連勝を達成。チームとしても4勝目で、予選通過を決める大きな白星になった。

【第8局 稲葉陽八段―冨田誠也五段】

abema2024_0629_playback_03.jpg

 第7局は冨田が長い将棋を制して踏み止まる。続く第8局に連投を立候補し、稲葉との対戦に臨む。冨田の四間飛車に稲葉のミレニアム。中央を押し込んで冨田ペースの戦いとなった。

【第3図は△6三銀まで】

 先手のうるさい攻めが続き、後手玉が見える形になって形勢逆転。先手の攻め駒は少ないようだが、▲6四歩△同金▲4五桂が遊び駒を使う好手順。後手は5六に歩が残っているため意外と受けの手段が少ない。△7二玉と早逃げしたが▲6五歩が痛打で、△5四金▲同馬△同銀▲5三飛で先手の攻めは切れない形となった。以下は冨田の粘りを振り切って稲葉が制勝。リーダー自ら勝利を決めた。

 2連勝としたチーム稲葉が1位での予選通過を決めた。エントリーチームは好局を多く作りながら勝ち切れない将棋が多かったのが悔やまれる。Dリーグ第三試合のチーム佐々木との対戦は勝った方が予選通過になる大勝負だ。

abema2024_0629_playback_04.jpg

【総合成績】
第1局 上野○─●大橋
第2局 藤本○─●冨田
第3局 藤本○─●井出
第4局 上野●─○大橋
第5局 稲葉●─○大橋
第6局 藤本○─●井出
第7局 上野●─○冨田
第8局 稲葉○─●冨田
総合5勝 ― 3勝

【個人成績】
稲葉八段 1─1
藤本五段 3─0
上野四段 1─2
大橋七段 2─1
井出五段 0─2
冨田五段 1─2

ABEMAトーナメント

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

このライターの記事一覧

この記事の関連ワード

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています