チーム藤井VSチーム佐藤 ABEMAトーナメント2024~予選Cリーグ第二試合振り返り~

チーム藤井VSチーム佐藤 ABEMAトーナメント2024~予選Cリーグ第二試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2024年06月24日

 ABEMAトーナメント2024、6月22日(土)に放映されたのは予選Cリーグ第二試合、チーム藤井「パイナップル」(藤井聡太竜王・名人、羽生善治九段、青嶋未来六段)対チーム佐藤「ロマン派」(佐藤天彦九段、斎藤明日斗五段、山本博志五段)戦の模様をお伝えする。
 第1局は▲青嶋―△斎藤戦で、先手雁木対後手矢倉の構図に進んだ。青嶋の先攻に斎藤が反撃し後手にもチャンスはあったが、最後は青嶋が抜け出して初戦はチーム藤井が制した。

【第2局 羽生善治九段―山本博志五段】

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 第2局は▲山本―△羽生戦。この日の対局者ではただ一人、ABEMAトーナメントに初参加となる山本。自身が佐藤にチーム入りを直訴して、リーダーがそれにこたえる形での出場となったという。いきなり強敵が相手だが、自身を選んだリーダーが正しいことを証明したいところだ。
 戦型は山本の三間飛車。これは両チームとも想定通りだが、羽生が向かい飛車に振っての相振り飛車となる。なお、羽生が直近の公式戦で相振り飛車を指したのは2月の王位リーグ、対西川和宏六段戦だ。

【第1図は▲5四角まで】

 山本が先攻して、押し引きの難しい中盤戦が続き、迎えたのが第1図。次に先手から▲4四飛△同歩▲6三銀の狙いがある。△6四馬と歩を払うのが味よく見えるが、これは▲6六飛の転換がピッタリで先手よしだ。羽生は△5三金と辛抱したが▲6五角と引かれて今度は▲9二歩△同香▲7三歩成の筋が受けにくい。角引きから実戦は△4五銀▲6六飛△7五馬▲6三歩成△同金上▲4三角成と進み、先手の攻めが刺さった。以下△7二玉▲3三馬△1二飛▲6五飛で先手の駒が全てさばけている。最後は山本が手堅くまとめて、チーム成績をタイに戻した。

 第3局、チーム佐藤は山本が連闘を打診されるも「消耗したので」と固辞し、佐藤が出陣。藤井とのリーダー対決がここで実現した。戦型は佐藤のダイレクト向かい飛車となる。序盤で馬を作った藤井がその手厚さを生かして徐々にリードを広げ完勝し、チーム成績を先行させた。
 第4局は▲山本―青嶋戦に。修業時代から何局指したかわからないという手の内を見知った同士の対戦。先手山本の三間飛車対後手青嶋の居飛車穴熊というのは、双方が対局前から描いていた戦型ではなかろうか。山本がうまくさばいて局面をリードするも、青嶋は穴熊の堅さを生かして頑張る。その頑張りが逆転勝ちに結びつき、チーム藤井の3勝1敗となる。
 ▲羽生―△斎藤戦の第5局は斎藤が向かい飛車に振った。これでチーム天彦はメンバー全員が振り飛車を指したことになる。二転三転の末に入玉間近の後手玉を捕まえた羽生が勝利し、チーム藤井が4勝目を上げる。予選第一試合の対チーム豊島戦の成績が5勝3敗だったため、この時点でチーム藤井の本戦進出が決まった。

【第6局 藤井聡太竜王・名人―山本博志五段】

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 本戦進出決定の余勢をかって、そのままチームの勝利に結び付けたいチーム藤井は第6局で藤井が出陣。対するチーム佐藤は、山本を先手番に起用するというスタンスで、山本の出陣となった。両者による公式戦はないが、三段リーグで1度ぶつかっており、山本が勝っている。その時は山本が得意のトマホーク戦法(先手三間飛車の対居飛車穴熊急戦)を採用したが、今回は「受けて立ってくれることはない」と予想。果たして先手三間飛車に対し藤井は左美濃に組んだ。

【第2図は▲5七金まで】

 第2図は先手が6筋を突き捨ててから金を立った局面。ここで藤井は△7四飛と寄って△7六飛を見せるが、▲6六金が気づきにくい順だ。以下△8四飛▲7五金△8二飛▲6四金△同銀▲同飛と進み、形勢自体はまだ難しいが、駒がさばけた先手がペースを握ったと言えそうだ。振り飛車の左金がこのような使われ方をするのは珍しく、さすがの藤井も金が出てくる順をうっかりしていたという。終盤も山本がよどみなく押し切り、大きな1勝を上げた。
 チーム名の「ロマン派」について佐藤は「固有の世界観が色濃い3人で、その価値観を重視するということでロマン派の名称がしっくりくるかな」と語っていたが、本局は山本の世界観が存分に盤上で表現された。

【第7局 佐藤天彦九段―青嶋未来六段】

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 第7局は▲青嶋―△佐藤戦。チーム佐藤のキーマンが山本なら、チーム藤井のそれは青嶋だろう。ここまで自身が2連勝で、リーダー相手に勝ち抜けを決めることができるか。戦型は後手佐藤の四間飛車藤井システムに進んだ。

【第3図は▲7八金まで】

 第3図は最終盤、先手が7九の金を1マス進めて自玉の詰めろを解除した瞬間である。△7八同成桂は詰めろにならないため、佐藤は△3七角成▲同銀と角を取ってから△8五銀▲同玉△7六角と迫った。以下▲8六玉△8五金▲9七玉の進行はここからもきわどい順が続くが、先手が逃れている。最後まで青嶋は綱渡りのような順を渡り切って逆転勝ちし、チームの1位通過を決めた。戻って△7六角では△7三桂▲8六玉△7六成桂▲9七玉(▲7六同玉は即詰み)△9六歩▲同玉△8五角▲9七玉△7四角ならば、▲同歩には△8五桂打からの即詰みがあるため後手の勝ち筋だった。

 予選Cリーグ第二試合はチーム藤井が5勝2敗で勝利し、1位での本戦出場を決めた。続いて6月29日に放映される予選Dリーグ第二試合、チーム稲葉対エントリーチームの対戦もどうぞお楽しみに。

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【総合成績】
第1局 青嶋○-●斎藤(第1局はチーム藤井が先手番。以下は交互)
第2局 羽生●-○山本
第3局 藤井○-●佐藤
第4局 青嶋○-●山本
第5局 羽生○-●斎藤
第6局 藤井●-○山本
第7局 青嶋○―●佐藤
総合5勝 ― 2勝

【個人成績】
藤井竜王・名人 1-1
羽生九段 1-1
青嶋六段 3-0
佐藤九段 0-2
斎藤五段 0-2
山本五段 2-1

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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