チーム永瀬VSチーム菅井 ABEMAトーナメント2024~予選Bリーグ第三試合振り返り~

チーム永瀬VSチーム菅井 ABEMAトーナメント2024~予選Bリーグ第三試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2024年07月19日

 ABEMAトーナメント2024、7月13日(土)に放映されたのは予選Bリーグ第3試合、チーム永瀬「川崎家」(永瀬拓矢九段、増田康宏八段、森内俊之九段)対チーム菅井「菅井組」(菅井竜也八段、佐藤康光九段、丸山忠久九段)戦の模様をお伝えする。

 予選Bリーグは第2試合を終えた時点で、チーム斎藤が1勝1敗、得失点差+3で本戦進出を決めていた。そのチーム斎藤に5勝4敗で勝利していたチーム永瀬は、第3試合でチーム菅井に勝てば文句なしで1位通過が決まる。  対するチーム菅井はまさに崖っぷち。チーム斎藤に1勝5敗で敗れていたため、予選通過のためにはこの第3試合でただ勝つだけではなく、チーム永瀬に5勝2敗以上のスコアで勝利することが求められる。すなわち、3敗目を喫した時点で以降が全くの消化試合となってしまう。

【第1局 丸山忠久九段―増田康宏八段】

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 第1局はチーム永瀬の先手番で、▲増田―△丸山戦のカードに。丸山の後手番というと一手損角換わりのイメージが強いが(本局放映時点で2024年の丸山後手番局は8局あり、相手が飛車を振った2局を除くと全て一手損角換わりを指している)、本局は相掛かりとなった。
 中盤では丸山が形勢をリードし、増田はチームメイトの森内が思わず「ぎょえっ」と叫ぶほどのつらい形の自陣角を打たされる。しかしこの辛抱がのちに実ることになった。

【第1図は▲3九金まで】

 終盤の第1図。盤上の7五角は前述の自陣角が巡り巡ってたどり着いたもので、ここでは攻防によく利いている。しかし形勢は後手がいい。この金打ちに対して△2七飛成ならば▲4七銀△同竜▲5八銀△4五竜くらいで後手の優位は揺るがなかった。先手陣は堅そうに見えるが壁金の悪形がひどく、次に△4七歩などのと金攻めを見せれば手段に窮する。そして後手陣を攻めるには駒が足りない。
 実戦の丸山は第1図から△5八成銀▲2八金△6九銀と踏み込んだ。以下▲7九玉△6七飛成▲5八歩△同竜で先手玉は風前の灯火のようだが、この時点ではまだ詰めろではない。その瞬間に打たれた▲7一飛が厳しかった。先手玉に詰めろをかけるならば△6七歩が最有力なので、6筋に歩を立つようにしておきたいのだが、飛車打ちに△4二玉と逃げるのは▲4一銀が詰めろになるので△6七歩を打つ手番が回ってこない。やむを得ない△6一歩には▲8三角の攻防手で逆転がハッキリした。後手玉はまだ詰めろでないが、△2八竜と金を取るのは▲6一飛成△4二玉▲5六角成が詰めろ逃れの詰めろで先手勝ち。

 第2局は▲菅井―△永瀬のリーダー対決。菅井の中飛車から対抗形の将棋となり、菅井の先攻に対して永瀬が反撃を入れる形で勝利した。

【第3局 森内俊之九段―菅井竜也八段】

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【第2図は▲5七同金まで】

 後がなくなったチーム菅井、第3局ではリーダーが連闘。対してここで勝てば予選通過が決まるチーム永瀬は森内が登場する。後手三間飛車の対抗形から、中盤では菅井がリードを奪って迎えたのが第2図。ここから実戦は△4六銀▲同金△5七飛成と進んだが、▲7八銀打で先手陣が堅い。△3七竜に▲3三とで、むしろ後手が忙しくなった。第2図では△2八歩があった。▲同飛ならそこで△4六銀なら、以下同様に進むと△3七竜が飛車取りにもなっているので▲3三との余裕がない。また△2八歩に▲5九飛は△5六歩▲5八金△2三角で後手陣が盤石だ。
 チーム菅井は3連敗で予選敗退が決まってしまった。控室に戻ってきた菅井は「この将棋を負けてはいけませんよね」と肩を落とすも、チームメイトにも促される形で「ストレス発散」と、なんと第4局にも連闘。解説の佐藤紳哉七段は「2連敗してさらに3連投目って、相当に珍しいですよね」と驚いていた。

【第4局 永瀬拓矢九段―菅井竜也八段】

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 第4局は再びのリーダー対決。先後も第2局と同じで、序盤の進行もほぼ同様だったが、今度は飛車を5筋から7筋に転回させた菅井が先攻してリードを奪った。

【第3図は△3三馬まで】

 第3図はその最終盤。ここで▲6二竜と逃げても先手の勝勢は揺るがないが、菅井はそのような迂遠な指し方はしない。▲3四桂△同銀▲3三竜△同銀上▲3四歩と竜を見切る代わりに後手玉の守り駒をはがし、△3四同銀に▲5二角が厳しい。永瀬は△3一香▲4二銀△3二飛と頑張るも、▲4一金でいよいよ雁字搦め。意地を見せたリーダーがチームに初白星をもたらした。

 第5局、第6局はいずれもチーム永瀬が勝利し、1位での予選通過を決めた。「良い形で予選を終えることができました」とリーダーは笑顔を見せる。
 この結果、予選Bリーグはチーム永瀬とチーム斎藤が本戦入りとなった。続いて7月20日に放映される予選Cリーグ第三試合、チーム天彦対チーム豊島の対戦もどうぞお楽しみに。

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【総合成績】
第1局 増田○-●丸山(第1局はチーム永瀬が先手番。以下は交互)
第2局 永瀬○-●菅井
第3局 森内○-●菅井
第4局 永瀬●-○菅井
第5局 増田○-●佐藤
第6局 森内○-●丸山
総合5勝 ― 1勝

【個人成績】
永瀬九段 1-1
増田八段 2-0
森内九段 2-0
菅井八段 1-2
佐藤九段 0-1
丸山九段 0-2

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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