ライター相崎修司
チーム渡辺VSチーム広瀬 ABEMAトーナメント2024~予選Aリーグ第一試合振り返り~
ライター: 相崎修司 更新: 2024年05月14日
今年もABEMAトーナメントの季節がやってきた。今回も昨年に引き続き5つの個人賞(最多勝利賞、最高勝率賞、最多対局賞、予選最高成績賞、敢闘賞)が設けられ、チーム戦、個人戦双方での熱戦が期待される。ABEMAトーナメント2024の開幕戦となったのは5月11日(土)に放映された予選Aリーグ第一試合、チーム渡辺「ジグザグ打線」(渡辺明九段、山崎隆之八段、岡部怜央四段)対チーム広瀬「ダメ元」(広瀬章人九段、黒沢怜生六段、杉本和陽五段)戦の模様をお伝えする。
振り駒の結果、開幕の第1局はチーム広瀬の先手番に。対戦カードは▲広瀬―△山崎戦となった。いきなりのリーダー登場に、チーム渡辺は読みを外された素振りを見せるが、ここで勝てれば弾みがつくとも。戦型は相掛かりとなった。
【第1局 広瀬章人九段-山崎隆之八段】
【第1図は△3九角まで】
第1図は先手に飛車銀の両取りがかかっている。▲2六飛と浮けば受かっているように見えるが、△4四角▲3六飛△5六歩は先手が大変な進行だ。実戦で広瀬は▲5七桂と打った。これが絶好の切り返しである。対して△2八角成は▲4五桂でこの瞬間の後手玉が詰めろとなるので先手勝ち筋だ。山崎は△3五飛と辛抱したが、▲4六銀とさらに飛車を追われて困った。先手は銀を1枚残しておけば問題ない。以下△2八角成▲3五銀△8九飛▲7九桂△3一玉▲5二歩成と進み、先手勝勢となった。「全くダメ元じゃないですね」とチームメイトはリーダーの快勝を称えた。
第2局は▲岡部―△杉本戦で、岡部が勝ち対戦成績を体に戻す。第3局の▲黒沢―△渡辺戦では渡辺がリーダーとしての貫禄を示した。第4局の▲岡部―△広瀬戦は広瀬が勝ち、相譲らない。
【第5局 杉本和陽五段-山崎隆之八段】
【第2図は△4三同玉まで】
▲杉本―△山崎戦の第5局は終盤の第2図を迎えた。「全くダメだと思った」と杉本はずっと形勢を悲観していたが、直前に山崎の緩手があり、ここでは先手にチャンスが着ている。杉本は▲5三角成△3二玉▲3一金と進めた。
チーム広瀬の控室では「大丈夫?」(広瀬)「しかしこれ簡単に詰んでるな」(黒沢)「頭銀で」(広瀬)と、心配の声が上がる。以下の進行は△3一同金▲4三銀△2二玉▲3一馬△1二玉。ここで先手は▲3二銀成とできなければ手の流れとしてはおかしいのだが、その瞬間に△2七銀から詰まされてしまうのだ。杉本はやむなく▲2七金と受けに回るも、△8一飛▲4二銀不成△5五角と進んで後手勝勢となった。戻って、第2図では▲5三歩成△3二玉▲4四銀ならば先手に分のある将棋だった。大きな1勝を上げた山崎は続く第6局でも連闘し、黒沢に勝利する。
【第7局 広瀬章人九段-渡辺明九段】
【第3図は▲4三歩まで】
第7局は▲広瀬―△渡辺のリーダー対決。相掛かりから迎えた第3図、この王手に対して△4三同金と応じた着手を「強っ!」と控室の山崎は驚きの声を上げる。対して▲5一角△同金▲4三角成の順もありそうだし、実戦の▲4三同角成△同玉▲3五桂△3四玉▲1六角という進行も危なく見える。対して△3五玉は▲3四飛から3手詰めだ。しかし▲1六角に△4五玉で逃れている。リーダー対決を制したチーム渡辺が5勝2敗で開幕戦を制した。続いて5月18日に放映される予選Bリーグ第一試合、チーム菅井対チーム斎藤の対戦もどうぞお楽しみに。
【総合成績】
第1局 山崎●-○広瀬(第1局はチーム広瀬が先手番。以下は交互)
第2局 岡部○-●杉本
第3局 渡辺○-●黒沢
第4局 岡部●-○広瀬
第5局 山崎○-●杉本
第6局 山崎○-●黒沢
第7局 渡辺○-●広瀬
総合5勝 ― 2勝
【個人成績】
渡辺九段 2-0
山崎八段 2-1
岡部四段 1-1
広瀬九段 2-1
黒沢六段 0-2
杉本五段 0-2