ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2024年05月29日
福間香奈女流王位に加藤桃子女流四段が挑戦した第35期女流王位戦五番勝負。女流王位戦で顔を合わせるのは第31期以来2回目だ。
挑戦者決定戦は加藤と伊藤沙恵女流四段のライバル対決。雁木に対し先手の急戦で、棋風通り加藤の攻め、伊藤が受ける展開になった。
【第1図は△8四飛まで】
先手は駒得だが、4九の角が負担になっており、飛車の打ち込みに気を使う必要がある。だが、ここから▲6六歩△4四歩▲3六銀△5五歩▲6五桂△5二玉に▲5九金と進めたのがうまい構想で、先手陣は安定し4九の角に活が入った。こうなると駒得が大きい展開となり、以下は加藤が押し切っている。
写真:生姜
第1局は徳島県松茂町「樫野倶楽部樫野邸」にて。戦型は両者の間ではおなじみの居飛車対中飛車となった。後手の加藤が中央から反撃してポイントをあげるが、福間も玉頭から攻めて勝負に持ち込む。
【第2図は△3一玉まで】
図の△3一玉で3筋に駒柱が完成した。後手玉は6四まで逃げ込めれば6筋の駒が生きるので、先手としてはその前に寄せたい。▲2六桂△4二玉▲3四桂△同馬▲4五歩△5三玉▲4六桂と進み、大駒が目標になって簡単には逃げ切れない形だ。以下も際どい終盤が続いたが、福間が中段玉を捕まえて開幕戦を制した。
写真:翔
第2局は北海道札幌市「ホテルエミシア札幌」にて。福間の向かい飛車に対し加藤は急戦でリードを奪う。だが、簡単には終わらず徐々にもつれていった。
【第3図は▲5九香まで】
図の▲5九香は味の良い下段香だが、後手は当然△5八歩と叩く。対して▲同金なら先の長い戦いが続いていたが、▲同香が疑問手。△8八金▲同玉△6九竜とされて打ったばかりの香が取られる形になってしまった。△6九竜に▲5九金は△7六桂で先手玉は寄る。加藤にとっては痛い逆転負けで福間が2連勝。
写真:生姜
第3局は福岡県飯塚市「麻生大浦荘」にて。中飛車対居飛車の持久戦から、加藤の強襲に福間がうまく端から切り返して優位に立った。
【第4図は△3四同金まで】
4三の金を動かして中央を薄くしたところ。ここから▲6五歩△5三銀に▲5五歩がうまい手順。△同歩に▲5四歩△同銀▲5七角とのぞいて、分かっていても▲7五角が受けにくい。他に▲9七角の活用もあり、自陣の2枚の角を巧みにさばいてしまった。以下も流れるような攻めで後手玉を寄せ切った。
写真:夏芽
福間は3連勝で防衛を果たし、五冠を堅持。女流王位は6連覇、通算10期目の獲得となった。
ライター渡部壮大