藤井が八冠堅持 3月下旬の注目対局を格言で振り返る

藤井が八冠堅持 3月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2024年04月04日

 棋王戦五番勝負は藤井聡太棋王がストレート勝ち。敗れた伊藤匠七段ですが、直後の叡王戦の挑戦者決定戦に勝ち、3度目のタイトル戦を決めています。

第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局

【第1図は▲7四とまで】

第1図は第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局(▲伊藤匠七段△藤井聡太棋王)。力勝負から局面をうまくまとめて後手がリードを奪いました。△3六飛が「飛車は十字に使え」の駒得を狙った厳しい一着。王手で金を取らせるわけにはいかないので▲2三桂△2二玉に▲4六角と受けましたが、△2六飛がまた△2九飛成を狙った先手になっています。厳しい寄せを続けた藤井棋王が快勝。防衛を果たし、2023年度は八冠を堅持して終えることになりました。

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写真:牛蒡

第9期叡王戦挑戦者決定戦

【第2図は▲7八香まで】

第2図は第9期叡王戦挑戦者決定戦(▲永瀬拓矢九段△伊藤匠七段)。角換わりから激しい戦いとなりましたが、図は後手優勢です。△2六歩が「と金の遅早」の確実な攻め。次の△2七歩成が厳しいので▲2八歩と受けたものの、△2九飛▲7六香△2八飛成▲6五歩△2七歩成でやはりと金攻めが実現。このと金で先手の金駒を削り、以下は後手が押し切りました。伊藤七段は叡王初挑戦。同学年の両者は21歳にして早くも3回目のタイトル戦です。

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写真:常盤秀樹

第73回NHK杯将棋トーナメント

【第3図は▲2二歩まで】

第3図は第73回NHK杯将棋トーナメント(▲佐々木勇気八段△藤井聡太NHK杯選手権者)。角換わりから激しい進行です。図の▲2二歩は確実な攻めですが、この瞬間は絶対に詰まない形で危険な一手でした。△9八桂成▲同香△9九角が「玉は下段に落とせ」の鋭い寄せで、▲同玉は△8七飛成で決まります。実戦は▲7八玉ですが、△6六歩▲5六銀△3一金▲同桂成△6七角と厳しい攻めが続きます。形勢は後手が勝ちに近付きましたが、最後に詰めろ逃れの詰めろが飛び出して先手の逆転勝ち。佐々木八段が初の全棋士参加棋戦優勝を決めています。

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写真:田名後健吾

伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦挑戦者決定リーグ白組

【第4図は▲6五桂まで】

第4図は伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦挑戦者決定リーグ白組(▲渡辺明九段△羽生善治九段)。平成のゴールデンカードで、83回目の対局です。横歩取りから軽快に動いて後手がペースをつかみました。△6四銀が「桂先の銀定跡なり」の手堅い一手。▲3四飛△3三飛▲同飛成△同銀に▲3九金と手が戻りましたがこれではつらく、△6五銀と桂を外して後手優勢がはっきりしました。

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写真:八雲

第37期竜王戦ランキング戦6組

【第5図は▲5三角まで】

第5図は第37期竜王戦ランキング戦6組(▲黒田尭之五段△藤本渚五段)。難解な終盤戦を迎えていますが、△1二玉が「玉の早逃げ八手の得」の好手でした。▲3一角成と迫りましたが△2二金と埋めた形が6六の角も利いており、寄りにくい格好です。以下も際どい寄せ合いが続きましたが、後手が競り勝っています。今期の藤本五段は8割5分と素晴らしい勝率を記録しましたが、藤井竜王・名人がそれ以上の勝率となったため、勝率一位賞には届きませんでした。

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写真:夏芽

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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