名人戦が開幕 4月上旬の注目対局を格言で振り返る

名人戦が開幕 4月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2024年04月25日

名人戦は開幕戦から大熱戦となりました。叡王戦とともに、白熱のシリーズになりそうです。今年度のタイトル戦はどうなるでしょうか

第82期名人戦七番勝負第1局

【第1図は△7九竜まで】

第1図は第82期名人戦七番勝負第1局(▲藤井聡太名人△豊島将之九段)。力戦の横歩取りからねじり合い、後手優勢の局面が続いていましたが、図の直前に玉が逃げ出す展開になって逆転しています。ここで▲3七桂が「遊び駒は活用せよ」の絶品の一着。次に▲3三銀の打ち込みから▲4五桂の詰み筋を見ています。△7七竜の王手で▲6七銀と使わせることはできましたが、先手玉が寄らない形ではっきりしました。藤井名人が初防衛に向けて先勝です。

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写真:文

第9期叡王戦五番勝負第1局

【第2図は△6六歩まで】

第2図は第9期叡王戦五番勝負第1局(▲藤井聡太叡王△伊藤匠七段)。同学年の二人が3度目の激突です。後手が玉頭から攻め掛かっていましたが、先手も的確に対応して激戦に。ここで▲8四歩が「一歩千金」のたたき。△同飛としてから▲6五桂として、飛車の横利きが消えて後手玉はピッタリ寄る形のようです。切れ味を見せた藤井叡王がこちらも白星スタートです。

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写真:紋蛇

第17期マイナビ女子オープン五番勝負第1局

【第3図は△2二銀まで】

第3図は第17期マイナビ女子オープン五番勝負第1局(▲西山朋佳女王△大島綾華女流二段)。大島女流二段はタイトル戦初登場です。難解な中盤を先手が抜け出しました。馬に当てられた局面ですが、構わず▲2二同馬と切り、△同玉に▲2六桂が「桂は控えて打て」の厳しい寄せ。△3二玉と王手をあらかじめかわしたものの、▲6三とが近付いた玉を攻める調子のいい手順になりました。以下は西山女王が押し切っています。

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写真:玉響

大成建設杯第6期清麗戦予選

【第4図は△4四同金まで】

第4図は大成建設杯第6期清麗戦予選(▲西山朋佳女流三冠△加藤桃子女流四段)。予選通過を懸けた一番です。先手がどう決めるかという終盤。馬取りに飛車を打ちたくもなりますが、▲5六桂△5九飛▲4四桂△5八飛成▲3四桂が「要の金を狙え」の寄せ。金をはがしてしまうのが一番速い寄せになります。先手玉は寄りがなく、勝ち筋になっています。勝った西山女流三冠は予選通過、加藤女流四段は再挑戦トーナメントに回ります。

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写真:文

第55期新人王戦

【第5図は▲3四桂まで】

第5図は第55期新人王戦(▲斎藤明日斗五段△原司アマ)。横歩取りから力のこもった戦いになりましたが、後手が抜け出すチャンスを迎えています。△4四桂が「桂は控えて打て」の絶好打。△3六桂が実現すれば先手玉はたちまち寄り筋です。実戦は▲6八角△6九竜▲5九金△8九竜に▲2七銀と受けましたが飛車先が止まってつらく、後手がはっきり優勢です。公式戦初出場の原アマが俊英を破る活躍を見せました。

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写真:銀杏

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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