女流棋界に新風を―第17期マイナビ女子オープン五番勝負展望―

女流棋界に新風を―第17期マイナビ女子オープン五番勝負展望―

ライター: 玉響  更新: 2024年04月08日

春――。今年も桜舞う季節にマイナビ女子オープンが開幕する。四季の移ろいに思いをはせるなか、女流棋界にも新しい風が吹き込んできた。
6連覇中の西山朋佳女王に挑むのは、タイトル戦初登場の大島綾華女流二段。昨年度から頭角を現してきた期待の新鋭である。例年以上に注目が集まるであろう五番勝負は、どんなシリーズになるのだろうか。

【大島綾華女流二段】

挑戦者に名乗りを上げた大島女流二段は、森信雄七段門下の21歳。今年で女流棋士4年目に入るが、実力は未知数な部分が多い。ここ最近で急速に力をつけてきたようだ。

大島綾華女流二段
写真:牛蒡

今期予選は宮宗紫野女流二段、加藤結李愛女流初段に勝ち、続く本戦で頼本奈菜女流初段、里見香奈女流四冠(現・福間香奈女流五冠)、加藤桃子女流四段を破った。そして挑戦者決定戦で北村桂香女流二段をくだし、挑戦権獲得とともに女流二段昇段を果たした。

【図は32手目△4二金上まで】

大島は正統派の居飛車党。特定の戦法に対して得意形を持っている印象を受けた。 例えば、今期マイナビ女子オープン本戦1回戦の対頼本奈菜女流初段戦。大島は対振り飛車に図のような構えを愛用している。実戦は▲9八香△5三銀▲4七金△6四歩▲3六歩△6五歩と進んで早くも後手ペースになった。その後も流れるような駒運びで、事前の深い研究がうかがえた。現在の西山は角道を止めた三間飛車が主力なので、大島が自身の経験値を生かせる展開に引き込めるか。そこがポイントになると予想する。

【西山朋佳女王】

迎え撃つ西山女王は、第11期から6連覇中。唯一の永世女王有資格者である。いまの女流棋界は「二強時代」といわれ、福間香奈女流五冠と8つのタイトルを分け合う勢力図になっている。そのためタイトル初挑戦の大島と番勝負を戦うのは、西山にとっても新鮮に感じることだろう。
二人の初手合いは今年2月の女流王位戦挑戦者決定リーグ紅組。これが劇的な幕切れだった。一時は西山玉に詰み筋が生じ、その危機を運よく逃れるも絶体絶命の状況が続く。それでも西山は折れることなく、執念の粘りで逆転勝ちを収めたのだ。その過程があるだけに、今回の五番勝負はより一層、気を引き締めて臨むことだろう。

西山朋佳女王
写真:文

盤外では、両者の時間配分にも注目したい。大島は持ち時間を惜しみなく使うスタイルなので、早見え早指しの西山に時間差をつけられる懸念がある。先述した初手合いの将棋も、最後まで時間を残していた西山に対し、大島は60手以上も一分将棋を指し続けていた。これは終盤の勝負どころで大きな影響を受ける要素だ。
ともあれ、大島にとっては初のタイトル戦。各地を転戦し、和服を着用するといった普段とは異なる環境下での対局になる。女王の壁は高いが、再び手に汗握るような大熱戦を期待したい。

注目の五番勝負は4月9日に神奈川県秦野市「元湯 陣屋」で開幕する。

玉響

ライター玉響

平成元年生まれ。2004年から2016年1月まで奨励会に在籍。同年5月からフリーライターとして活動開始。以来、日本将棋連盟のネット中継業務を担当している。ほかに将棋番組制作、将棋教室の仕事にも携わる。将棋漬けの日々を送っているが、実戦不足なのが悩み。

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