里見が女流王座防衛 12月上旬の注目対局を格言で振り返る

里見が女流王座防衛 12月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年12月22日

 女流王座戦は里見女流王座の防衛となり、今年のタイトル戦はすべて終わりました。A級順位戦は豊島九段が星を伸ばして、唯一の無敗となっています

リコー杯第13期女流王座戦五番勝負第3局

【第1図は▲8一飛成まで】

 第1図はリコー杯第13期女流王座戦五番勝負第3局(▲里見香奈女流王座△加藤桃子女流四段)。先手の猛攻の合間に、後手も少しずつ駒を蓄えてきました。先手の攻め駒は盤上の竜、角と持駒の金、桂で「4枚の攻めは切れない」と言われますがギリギリです。△8四角が好手。▲2九玉なら△4七竜▲同銀に△2八銀から先手玉がいきなり詰んでしまいます。実戦は▲7五桂と合駒をしましたが、これで攻め駒が3枚になり、△3二金と埋めて後手玉は安全になりました。

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写真:常盤秀樹

リコー杯第13期女流王座戦五番勝負第4局

【第2図は▲4一飛まで】

 第2図はリコー杯第13期女流王座戦五番勝負第4局(▲加藤女流四段△里見女流王座)。後手の攻めが決まり、勝ちに近付いています。△5八銀が「要の金を狙え」の寄せで、▲7八金に△6七銀成と追い掛けて、1三角のにらみを生かして先手陣は受けが難しい格好になってきました。以下は寄せ切って里見女流王座が3勝1敗で防衛を果たしています。

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写真:常盤秀樹

第82期順位戦A級6回戦

【第3図は▲6七桂まで】

 第3図は第82期順位戦A級6回戦(▲中村太地八段△豊島将之九段)。角換わりからねじり合う展開になりましたが、薄い玉形をうまくまとめた後手が形勢をリードしました。第3図から決めにいく手も考えられますが、後手玉も不安定な位置です。△7二玉が「玉の早逃げ八手の得」で、安全地帯に逃げ込んで駒を渡す寄せをやりやすくなりました。▲7八金と先手も自陣に手を入れましたが、△6九銀が厳しい寄せになり後手勝勢です。豊島九段は6連勝と無敗を守り、名人挑戦に前進です。

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写真:八雲

第49期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント

【第4図は△6六歩まで】

 第4図は第49期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント(▲広瀬章人九段△本田奎六段)。矢倉対雁木の戦いから激しい攻め合いになっています。悩ましいたたきですが、さっぱりと▲6六同玉で先手玉は意外に寄りません。「中段玉寄せにくし」で、上部の駒も守りに働いています。以下△3九角▲4八桂△2八角成に▲6二飛が厳しい寄せで先手勝勢です。広瀬九段は1勝のアドバンテージを持って挑戦者決定戦に進出しました。

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写真:生姜

第49期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント

【第5図は△4七角まで】

 第5図は第49期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント敗者復活戦(▲伊藤匠七段△本田奎六段)。角換わりから後手は右玉、先手は穴熊に構えました。図の△4七角は金取りですが、先手は穴熊で玉が遠いのが強み。▲5三歩と「終盤は駒の損得より速度」で攻め立てます。以下△6九角成▲5二歩成△同銀に▲4二竜△6二金▲5一銀△同飛▲同竜△7八馬▲7一銀と、7八の金も取らせる踏み込みで寄せ切りました。伊藤七段は敗者復活戦からの勝ち上がりです。

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写真:胡桃

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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