藤井が同世代対決制す 11月上旬の注目対局を格言で振り返る

藤井が同世代対決制す 11月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年11月22日

 同学年対決となった竜王戦七番勝負は藤井聡太竜王が貫録を見せてストレートで防衛を果たしました。また加古川青流戦では俊英の藤本渚四段が初の棋戦優勝を飾っています。

第36期竜王戦七番勝負第4局

【第1図は△8四桂まで】

 第1図は第36期竜王戦七番勝負第4局(▲藤井聡太竜王△伊藤匠七段)。伊藤七段が深い研究で後手番ながらペースをつかみましたが、藤井竜王の頑強な受けに攻めあぐねています。▲4九歩が「金底の歩岩よりも堅し」の鉄壁の受け。数手前に5九に桂を打ってあるため、▲6七桂と銀を取る手も見せています。以下後手も激しく攻め続けましたがギリギリで攻めをかわし、最後は蓄えた駒で後手玉を一気に寄せ切りました。藤井竜王は4連勝で通算19期目のタイトルです。

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写真:中野伴水

リコー杯第13期女流王座戦五番勝負第2局

【第2図は△5六同銀まで】

 第2図はリコー杯第13期女流王座戦五番勝負第2局(▲加藤桃子女流四段△里見香奈女流王座)。中飛車対急戦で終盤に入りつつある局面です。△5二香が「下段の香に力あり」先手陣に利かせつつ、5三の地点を守り1二竜の横利きも緩和している攻防の一着です。この後も激戦が続きましたが、最後まで5二香が存在感を示す形で、後手が競り勝っています。

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写真:文

大山名人杯第31期倉敷藤花戦三番勝負第1局

【第3図は▲4五銀まで】

 第3図は大山名人杯第31期倉敷藤花戦三番勝負第1局(▲西山朋佳女流四冠△里見香奈倉敷藤花)。女流四冠同士の頂上決戦です。後手の里見倉敷藤花が居飛車急戦で迎え撃ちました。「開戦は歩の突き捨てから」で、△8六歩▲同歩△6五歩▲3五歩△7五歩と、互いに歩をぶつけて全面的な戦いの始まりです。この後の応酬で後手がリードし、快勝となっています。

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写真:武蔵

第13期加古川青流戦決勝三番勝負第1局

【第4図は▲4九玉まで】

 第4図は第13期加古川青流戦決勝三番勝負第1局(▲吉池隆真三段△藤本渚四段)。激しい戦いの後がうかがえる盤面ですが、局面は後手勝勢です。△4七歩が「一歩千金」の厳しい一着。角筋を止めながら先手玉に迫っています。以下▲4三飛に△3七銀と押さえて先手玉は一手一手になりました。続く第2局も藤本四段が勝ち、初優勝を飾っています。

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写真:翔

第73期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ

【第5図は△6三同金まで】

 第5図は第73期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ(▲羽生善治九段△永瀬拓矢九段)。難解な中盤で、次に△7七歩成と桂を取られる手が見えています。その前に▲7四歩が「金は斜めに誘え」の手筋。△7七歩成なら▲7三歩成の取り合いがあります。実戦は△7四同金ですが、▲5五銀△7七歩成▲5四銀△同歩▲6三角で金を責めて先手ペースです。この後は後手の猛追もありましたが、最後は先手が逃げ切り。永瀬九段はリーグ5局目で初黒星です。

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写真:生姜

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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