藤井が八冠制覇 10月上旬の注目対局を格言で振り返る

藤井が八冠制覇 10月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年10月24日

 王座戦五番勝負は挑戦者の藤井聡太竜王・名人が3勝1敗で奪取。史上初の八冠が誕生しました。竜王戦での同学年対決も見逃せません。

第71期王座戦五番勝負第4局

【第1図は▲7六桂まで】

 第1図は第71期王座戦五番勝負第4局(▲永瀬拓矢王座△藤井聡太竜王・名人)。角換わりの速攻から、深い研究を見せた永瀬王座がリードを奪いました。第1図の▲7六桂で銀を取れる形で局面は先手良しです。後手はどう粘るかですが、△4二玉が「居玉は避けよ」の玉の耐久度を上げた手です。少しでも寄りにくい形を作り、局面を長引かせます。本局の終盤は永瀬王座が勝勢になりましたが、最後の最後にドラマがあって大逆転。藤井竜王・名人が3勝1敗で奪取し八冠となりました。

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写真:中野伴水

第36期竜王戦七番勝負第1局

【第2図は▲4五歩まで】

 第2図は第36期竜王戦七番勝負第1局(▲伊藤匠七段△藤井聡太竜王)。史上最年少の対決となったシリーズです。相掛かりから早い戦いになりました。後手は飛車が狭いのが気になりますが、△7六歩▲8六金△4五飛と構わず踏み込みました。「一段金に飛車捨てあり」で、飛車を渡しても後手陣にはすぐに響きません。以下は▲3六銀△4六飛▲4七銀△5六飛▲同銀△2三歩▲3四飛△7八角と攻め込んで後手ペースです。的確な指し回しを続けて開幕戦は藤井竜王が制しました。

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写真:将棋世界

ヒューリック杯第3期白玲戦七番勝負第5局

【第3図は▲3一飛まで】

 第3図はヒューリック杯第3期白玲戦七番勝負第5局(▲西山朋佳女流三冠△里見香奈白玲)。西山女流三冠の3勝1敗で迎えた第5局は相振り飛車に。激しい応酬を制して局面は後手良しです。当然ながら△5一歩が「金底の歩岩よりも堅し」で後手陣は鉄壁。▲1一飛成と駒を補充しますが、△3七歩▲同桂△4六金と圧力を掛けて、先手は受け切れる形ではありません。里見白玲がカド番をしのいで第6局へつなぎました。

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写真:飛龍

霧島酒造杯第45期女流王将戦三番勝負第1局

【第4図は△5九角成まで】

 第4図は霧島酒造杯第45期女流王将戦三番勝負第1局(▲西山朋佳女流王将△香川愛生女流四段)。相振り飛車模様の出だしから、後手が居飛車を選び相穴熊になりました。▲8五飛と桂を取るのでは響きがありません。▲5三歩成が「5三のと金に負けなし」の大きな一手。△5六歩と後手もと金作りを目指しますが、▲5四金△5七歩成に▲同飛△同馬▲4四金と進めて、と金と堅さの差が大きく先手優勢です。

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写真:囲碁将棋チャンネル

第54期新人王戦決勝三番勝負第1局

【第5図は△6四金まで】

 第5図は第54期新人王戦決勝三番勝負第1局(▲上野裕寿四段△藤本渚四段)。上野四段は大舞台がデビュー戦となりました。うまく盤面を制圧して先手ペースです。▲4三歩成が「金は斜めに誘え」の手筋。△同金▲4四歩△4二金▲3五桂として、確実な攻めが約束されました。単に▲3五桂は△4二歩がありましたが、金をずらした効果で後手は受けにくくなっています。上野四段はデビュー戦を飾るとともに、新人王に迫りました。

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写真:虹

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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