ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2023年06月16日
西山朋佳女王に甲斐智美女流五段が挑戦した第16期マイナビ女子オープン五番勝負。開幕直前に甲斐の引退が発表されたことは世間を驚かせた。タイトルに挑戦するほどの実力を誇る棋士が引退するのは極めて異例だ。
第1局は神奈川県秦野市「元湯 陣屋」にて。西山の三間飛車に対し、甲斐は居飛車穴熊を選択。うまくさばいた西山がペースをつかむが、甲斐も堅さを生かした粘りで混戦になる。
【第1図は△4七歩まで】
実戦はここで秒読みに入って▲6八金としたが、△8七桂不成▲同銀△7九馬▲7八金△6九馬と進んで穴熊が薄くなり、先手の勝てない将棋になった。第1図では▲2八飛の辛抱や▲9六歩の催促なら後手も決めるのは簡単ではなく、激戦が続いたようだ。西山が防衛に向けて好スタートを切った。
写真:生姜
第2局は山梨県甲府市「常盤ホテル」にて。西山の三間飛車に甲斐は急戦模様の出だしから持久戦に切り替えた。西山がうまいさばきを見せて形勢をリードした。
【第2図は△6七歩まで】
後手は堅陣を生かして何とかと金を間に合わせようとしている。▲1五歩が後手の防壁を相手にしない端攻め。△同歩▲1二歩△同香▲1三歩△同香▲2五桂△2四銀▲1三桂成△同銀▲1八香打と徹底的に端を攻め立てて、後手のと金を間に合わせず押し切った。これで西山が2連勝。
写真:睡蓮
第3局は神奈川県藤沢市「時宗総本山 遊行寺」にて。西山の三間飛車に甲斐は急戦の出だしだったが、角交換してからじっくりした展開になる。形勢が揺れ動く大熱戦となり、勝負は一分将棋へ。
【第3図は△9五玉まで】
ここは▲8六金△同玉▲7七金と迫れば後手玉は詰んでいた。8七の地点には7九の桂が利いているため、9七に潜り込まれても詰ますことができる。だが、実戦は▲7五歩としたため、△9六角▲5九玉△5八歩成▲同銀に△6五桂と後手からも好防手が生じた。以下▲8六金から詰ましにいったが、後手玉は詰まず西山が熱戦を制した。△6五桂には▲同馬△同歩としてから▲8六金なら、△同玉▲7七銀からの詰みがあった。
苦しむ将棋もあったが、西山は3連勝で連覇記録を6に伸ばした。
写真:常盤秀樹
第1期マイナビ女子オープン五番勝負に登場し、第3期には女王を獲得もした甲斐。本棋戦で記憶にも記録にも残る活躍を見せた女流棋士が、本棋戦で最後の戦いを終えた。
写真:常盤秀樹
ライター渡部壮大