第5回ABEMAトーナメント~本戦トーナメント準決勝第二試合 チーム渡辺VSチーム斎藤 振り返り~

第5回ABEMAトーナメント~本戦トーナメント準決勝第二試合 チーム渡辺VSチーム斎藤 振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2022年09月22日

 9月17日(土)17時に放映された第5回ABEMAトーナメント本戦トーナメント準決勝第二試合、チーム渡辺「マンモス」(渡辺明名人・近藤誠也七段・渡辺和史五段)VSチーム斎藤「シン エンジェル」(斎藤慎太郎八段・木村一基九段・佐々木勇気七段)の戦いを振り返る。

 第1局は▲佐々木―△近藤戦。角換わりの将棋を佐々木が制した。2回戦ではチームの準決勝進出を決める勝利を上げた佐々木が、再びチームに大きな白星をもたらした。

【第4局 ▲近藤誠也七段-△斎藤慎太郎八段】

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 続く第2局は斎藤が渡辺和を、第3局は木村が渡辺明を破り、いきなりの3連勝。第4局では一気に決めるべく、チーム斎藤はリーダーが出陣。対するチーム渡辺は近藤が1回戦以来の登場となった。戦型は第1局と同じく角換わりだが、今回は近藤が先手番を持っている。

【第1図は△3三角まで】

 先手番を生かすべく、近藤は早めの桂跳ねから一気の猛攻に出た。厳密にはやや無理筋のようだが、フィッシャールールでは攻撃側を持つアドバンテージが大きい。第1図は斎藤が▲4四角の王手金取りに備えた局面だが、近藤は▲3四歩△同銀を利かせてから▲4四角。以下△同角▲同歩の局面は単なる金取りだけでなく、▲3一角の王手金取りも残っているのが後手にとってつらい。両方に備える△2三金には▲3二角が厳しい追撃で、先手がリードを拡大した。以下もよどみなく攻めきった近藤がチーム待望の初白星を上げた。

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 この勝利に勢いづいたか、第5局では渡辺明が佐々木を、第6局では渡辺和が木村を、第7局では再び渡辺明が佐々木を破り、逆にチーム渡辺が4連勝と、決勝進出へ王手をかけた。チーム斎藤にとって流れはハッキリと悪くなっているが、「3連勝4連敗は経験しているので、それほど気落ちはしていなかった」とリーダーの斎藤はいう。

【第8局 ▲近藤誠也七段-△斎藤慎太郎八段】

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 第8局は▲近藤―△斎藤戦。手番を含めて第4局の再現である。今度は角換わりではなく、矢倉となった。

【第2図は△1三角まで】

第2図から近藤は▲3三歩△同桂▲3四歩と攻めたが、△5七歩が怪しい垂らしだ。▲同角に△4五桂が角取りとなる。以下▲3九角に△2七銀▲2六飛△3八銀不成と先手の大駒に働きかけた後手が優位に立った。△3八銀不成は角取りだけでなく、△4七銀成も見ている。△5七歩には構わず▲3三歩成と踏み込んでいれば先手が指せていたようだが、自玉の左辺が壁になっていることもあって、次に△5八銀を打たれる順を気にするのはやむを得ないところだろう。「▲3三歩からの攻めに対して、うまく切り返されてしまった」と近藤は肩を落とした。

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【第9局 ▲渡辺和史五段-△木村一基九段】

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 運命の第9局。チーム斎藤にとっては二回戦に続くフルセットである。ベテランの木村と若手の渡辺和というのも対照的な構図だろう。渡辺和の先手となり、相掛かりに進んだ。

【第3図は▲8六桂まで】

 第3図は香取りになっているが、△9一飛と受けるのは▲9四桂△同飛▲5一角がうるさい。木村は△4五歩と突き、▲5七銀(▲4五同銀は△4四歩で銀が捕まる)に△5五歩と玉頭で動いた。以下▲9四桂△5六歩▲同銀△4六歩の局面は、次に△5五歩▲4五銀△4七歩成▲同金△4四歩と銀を捕獲する順があり、後手ペースになっている。渡辺和は▲4五香と打ち、△4七歩成▲同銀で銀を助けたが、△4四歩と得をした香を取り返される展開ではやはり先手がつらい。9四の桂を軸に後手玉に迫ろうとしても、右が広く捕まえにくい形だ。

 以下は着実にリードを広げた木村が勝利し、チーム斎藤が死闘の果てに決勝進出を決めた。「嬉しいです。勝利に貢献できたことと、最後の一局を戦うという良い経験をすることができました」と木村は喜びを語った。また佐々木は局後のインタビューで「矢倉が中心の戦いとなると思ったら、角換わりや相掛かりなど相手も戦型をちらしてきて、戦型の読みには課題が残る」と述べた。

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 決勝はチーム稲葉とチーム斎藤の対決に。リーダーはどちらも初の決勝進出だが、チーム斎藤の木村と佐々木は前回でも決勝を戦っている。その時は惜しくも準優勝だったが、今回こそ悲願達成となるか。24日(土)17時から生放送される決勝戦を、どうぞお楽しみください。

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ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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