第5回ABEMAトーナメント~本戦トーナメント2回戦第四試合 チーム渡辺VSチーム天彦 振り返り~

第5回ABEMAトーナメント~本戦トーナメント2回戦第四試合 チーム渡辺VSチーム天彦 振り返り~

ライター: 牛蒡  更新: 2022年09月07日

 9月3日(土)に放映された第5回ABEMAトーナメントの本戦トーナメント2回戦第四試合、チーム渡辺(渡辺明名人・近藤誠也七段・渡辺和史五段)とチーム天彦(佐藤天彦九段・梶浦宏孝七段・佐々木大地七段)の戦いを振り返る。

【リーダーがチームを引っ張る】

 第1局は▲近藤-△佐藤戦。近藤の勝利は目前だったが、最後の最後で佐藤の寄せが決まった。終盤の逆転劇は、この棋戦の醍醐味である。

 第2局は▲佐々木-△渡辺明戦。本局は中盤で生じた△5六桂▲同歩の打ち捨てが印象に残る。渡辺がねじり合いを制した。

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まずは天彦リーダーが勝利

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渡辺リーダーがタイに戻す。「ここからみんなで盛り立てていきたい」

【第3局▲渡辺和史五段-△梶浦宏孝七段】

 第3局は▲渡辺和-△梶浦戦。梶浦によれば、渡辺和とは小学生のころから将棋を指していたそうだ。

【第1図は△3三同桂まで】

 渡辺和の攻めが見事だった。第1図では▲4四歩△同金▲2四飛の狙いが見える。実戦は▲4四歩に△3四金とかわしたのだが、先手の攻めは二段構えだった。▲4三銀△同金▲同歩成△同玉▲5三金△同角▲同桂成△同玉に▲8六角で技あり。8六の歩を外したことで王手銀取りになっている。渡辺和の視野の広さがチームに2勝目をもたらした。

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渡辺和五段の快勝に沸く。「すごかったねえ」「一連の手順が強すぎ!」

【渡辺チームがリードを広げる】

 第4局は▲佐々木-△近藤戦。この二人も付き合いは長い。奨励会や練習将棋で何度も指したそうだ。近藤が角の打ち込みから攻め倒した。

 第5局は▲渡辺明-△佐藤戦。注目のリーダー対決だ。千日手模様を佐藤が打開。激しい攻め合いになり、渡辺明が優位を築いたものの、一瞬の隙を突いた佐藤が激戦を制す。ファンもおおいに盛り上がった一局だった。

 ちょっとした事件もあった。写真の局面から▲8二歩△6八金▲同玉と進んだのだが、代えて▲2一と△同飛▲1四桂△3一玉(△1二玉は▲1三香)に▲1三角成と角を助ける手があった。先手は10手ほど前から、いつでも▲2一とを指せたが、いつでも指せるがゆえにかえって盲点に入ったようだ。

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▲2一とに気づいていれば......。実戦は▲8二歩

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渡辺名人「ううー、そんな手があったー?」

 第6局は▲梶浦-△渡辺和戦。第3局から先後を入れ替えての再戦である。中盤で梶浦に攻め急ぎがあり、渡辺和の連勝となった。これでチーム渡辺は4勝2敗。

【第7局▲近藤誠也七段-△佐々木大地七段】

【第2図は▲2三歩まで】

 第7局は▲近藤-△佐々木戦。第2図は101手目▲2三歩、第3図は137手目▲4九歩の局面である。ふたつの図の変遷を想像するだけでも熱戦だったわかる。特に佐々木の粘りはすさまじかった。第2図における持ち駒の差を考えれば、近藤が押し切ってもおかしくなかった。

【第3図は▲4九歩まで】

 佐々木は第3図で△3七竜と引くと、最終的に△5五桂▲5七金から△5七竜▲同銀△6七金の筋に持ち込み、先手玉を仕留めた。佐々木の諦めない心がチーム天彦を救った。

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「本当によく頑張った。よく耐えたね」と天彦リーダー

【第8局▲梶浦宏孝七段-△渡辺和史五段】

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 第8局は▲梶浦-△渡辺和戦。このカードは3回目で第6局と先後も同じ。渡辺明は作戦会議の場で、第6局の検討内容を渡辺和に伝えた。「角を換えて△7八角があったんですよ」。短い言葉だったが、渡辺和はすぐに理解した。第6局と同じ形に誘導し、△7八角から馬作りに成功する。しかし梶浦もうまく指した。形勢不明で最終盤へ。

【第4図は▲8八金まで】

 ▲6二角△8六桂▲8八金と駒を打ち合って第4図。時間のない状況でも渡辺和は冷静だった。△7九金▲同玉△8七桂▲6九玉△6八歩で梶浦が投了。以下は▲6八同金△7九金▲5八玉△4八成桂でピッタリと駒が足りる。先手は▲6二角に代えて自玉周辺にカナ駒を埋めるなど、受けに徹していれば勝っていたかもしれない。200手に及ぶ大熱戦だった。

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ついに決着。この日は激戦が多かった

 チーム渡辺は渡辺和がMVP級の活躍をした。チーム天彦は熱い戦いを繰り広げたが敗退。予選からの佐藤の通算成績は7勝0敗だった。準決勝のカードはチーム永瀬VSチーム稲葉、チーム渡辺VSチーム斎藤と決まった。以下は今回のまとめ。【総合成績】の並びは、左がチーム渡辺、右がチーム天彦。

【総合成績】
第1局 近藤 ●-〇佐藤
第2局 渡辺明〇-●佐々木
第3局 渡辺和〇-●梶浦
第4局 近藤 〇-●佐々木
第5局 渡辺明●-〇佐藤
第6局 渡辺和〇-●梶浦
第7局 近藤 ●-〇佐々木
第8局 渡辺和〇-●梶浦
総合  5勝 ― 3勝

【個人成績】
渡辺名人  1-1
近藤七段  1-2
渡辺五段  3-0
佐藤九段  2-0
梶浦七段  0-3
佐々木七段 1-2

ABEMAトーナメント

牛蒡

ライター牛蒡

2010年、サラリーマンから「名人戦棋譜速報」の中継記者に転身。 現在は日本将棋連盟モバイルの中継業務も担当。ペンネームを「牛」に改名しようかと検討中。

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