ライター藤田華子
【PR:ローソン×服部慎一郎四段】漫才と山登りで自分を解放。どこまでも自由に、広がる世界――服部慎一郎四段の素顔
ライター: 藤田華子 更新: 2022年08月04日
好きなものを口にする時間は、ホッと一息つき、素の自分に戻る時。今回は服部慎一郎四段に、青春の味だというローソンの「からあげクン チーズ味」をお召し上がりいただきながらお話を伺いました。
「それまでの人生は、将棋しかやってこなかったんで...」服部四段の世界が広がったのは、高校時代に親友と路上漫才に立った時。恥ずかしいと言いながらも、優しい笑顔で語る様子からその時間があたたかく大切なものだったと伝わってきます。
2020年度、初参加の第79期順位戦C級2組では8勝2敗という成績を残し、2021年第11期加古川青流戦で棋戦初優勝。藤井世代のライバルとして注目される、新進気鋭の若手棋士。型にはまらない独創的な将棋は、かつては漫才で、そして現在は趣味である山登りで自分を開放する様子と通じる部分があるのかもしれません。どこまでも自由に、広い空を見上げて――22歳、服部四段の素顔に迫ります。
棋士仲間と山へ。高校時代に自分を変えた相方との出会い、路上漫才
――アウトドアがお好きということで、緑の中での撮影です。
山登りが好きなんです。六甲山や、大阪と京都の間にあるポンポン山に行きましたね。棋士だと、山崎さん(山崎隆之八段)、糸谷さん(糸谷哲郎八段)、都成さん(都成竜馬七段)、西川さん(西川和宏六段)...あとは奨励会員の仲のいいメンバーとも登りました。関西の棋士はフレンドリーなので、一緒に遊びに行くことが多いです。
――気持ちいいリフレッシュになりそうですね。
ふだん室内にこもっていることが多いので、外に出ると自分を解放した気分になるんです。山登りをする時は、神秘の力を感じる...とまでは言わないですけど(笑)、何か日常では得ることのない、そういう力をもらえたらと思っています。山頂で食べるおにぎりも、帰りに有馬温泉に寄るのも醍醐味です。
――アクティブなんですね、ランニングもされていると伺いました。
17歳の時に仲のいい奨励会員と一緒に走ろうという話になって、空いている日は毎朝7時に公園に集まっては走っていました。いまはひとりですが、対局日以外は5~6km走ります。
――ランニングのほかに、高校時代は路上や文化祭で漫才をやられていたとか。
高1~高3のあいだ、文化祭などのイベントに合計9回出ました。
――9回も!
そうなんです。恥ずかしいな...(笑)。友人に「文化祭で何かやろう」と誘われて、音楽もできない、踊れもしない、じゃあ漫才だと。
――ネタを作って話の練習をして、なかなかハードですよね。
もともとNON STYLEさんやサンドウィッチマンさんなど、漫才が好きだったのでやってみたかったんです。ネタは、放課後に2人で作りました。最初は適当に流して、いいパートをピックアップしてつなげていくんです。卒業や夏祭り、クリスマス、季節のネタを盛り込んでいました。
――漫才をやって、何か変化が?
それまでの人生、将棋しかやってこなかったんです。でも漫才を通して人前で喋ることにも抵抗がなくなり、将棋以外のことにも目を向けられて、世界が広がったような気がしました。僕はあがり症で、本番で噛み噛みになってしまうところがあって。相方からの提案で大阪駅とか京橋の広場とか、路上で練習するようになりました。
――それは度胸がつきそうです!
もちろん誰も立ち止まってはくれないんですけどね(笑)。せっかくやるなら、そういうところで揉まれなくちゃ意味がないという相方の意向もあって。膝が震えましたが、やるしかないなと。
――ちなみにコンビ名は?
「もぐら部隊」です。
――かわいい!
相方と学校からの帰り道に、工事現場の看板に描いてあるもぐらを見つけていいじゃんって。僕はボケ担当でした。いまでも、相方と遊びに行く時とかに映像を見返すことはありますね。
――相方さんとはいまも交流があるんですね。
嬉しいことがあったら伝えたくなるような、親友です。覚えているのは、僕が三段から四段に昇段してプロになった日。東京から帰った時に、新大阪の駅で相方が待っていてくれたんです。直接「おめでとう」を言うために。すごく嬉しかったですね。
「からあげクン チーズ味」は青春の味。目指すは『SASUKE』出場!?
――服部四段の青春を垣間見た気がします。
そうですね。青春といえば、今日いただく「からあげクン」は、学生の時から食べていました。漫才の練習の後とか近くのローソンで買って。
――思い出の味ですね。では、一口どうぞ!
おいしい!僕はチーズ味が好きなんですけど、まさしく青春の味です(笑)。本当によく食べました。緑のなかで食べると、また格段においしいですね。
――「からあげクン」はたんぱく質が豊富で、鶏皮を使っていないので低カロリー、トレーニングの後にも向いているそうです。
ランニングの後や対局中に小腹を満たしたい時にもいいですね。差し迫った局面で、かわいい「からあげクン」のパッケージに対局相手もびっくりかもしれませんが。そういえば僕、『SASUKE』っていうスポーツ番組が好きで。
――服部というお名前からですか?
いや、違うんですけど(笑)、あのアクションゲームの完全制覇に挑むMr.SASUKEこと、山田勝己さんを尊敬しているんです。小さい頃から観てきて、ひたむきに努力されている姿に感銘を受けました。実は僕も一度は出たいなと思ってジムで腹筋と懸垂をやったりしているんです。「からあげクン」にたんぱく質が豊富だと知ったので、トレーニングの後に食べて『SASUKE』を目指していきたいです(笑)。
先輩に背中を押された奨励会時代。独創的な将棋を追求して
――奨励会時代の印象深いエピソードを教えてください。
僕がまだ中学生で級位者だったころ、放課後は毎日、連盟の棋士室に通うことにしていました。本心では将棋を指したかったのですが、先輩が有段者や棋士の先生が多くて、迫力がすごくて。僕は棋士室のすみっこにいて声をかけられなかったんです。 そしたら、山崎さんから「待っているだけじゃなくて自分から声をかけに行かないとダメだよ」「有段者や強い方でも、声をかけられたら嬉しいから」とアドバイスをいただいて。それからですね、怖気づかずに「お願いします」と言えるようになったのは。
――山崎八段は、服部四段にとってどんな存在でしょうか。
奨励会に入る前から、山崎さんの独創的な魅せる将棋には憧れていました。奨励会に入った後もよく将棋を教えてもらい、僕にとっては特別な存在ですね。
――独創的で魅せる将棋というのは服部四段の将棋にも通じますね。
影響は受けていると思います。盤上だけではなく、人間としても。僕も、後輩が何か困っていたら声をかけたり、手を差し伸べたい気持ちはすごくあります。でも、いまの自分にそれができるかと言われると難しいところもあって...もう少し歳を重ねて、自分を成長させていきたいです。
――"藤井世代"のライバル候補として注目されることも多いですが、いかがでしょう?
藤井さんとはだいぶ差がついているのでちょっと恥ずかしいですね。頑張って差を埋めて、近い将来戦いたいなと思います。
――今後、若手の中でどういった存在になっていきたいですか?
自分にしかできない独創的な将棋を指して、第一線で活躍できる棋士になりたいです。自由度の高さ、個性や性格が出るところが、将棋の面白さだと思います。対局に向かう時「今日はどういう展開になるのかな」と毎回とても楽しみで。関西ではなく関東の方など、初めて指す先生は特にそうですね。
――4月に、初めての書籍『AI流 中飛車破り~旧型・新型・服部スペシャル』を出されました。おめでとうございます。
初めてだったので、書くと決まった時は期待と不安がありました。やってみたら、すごく楽しくて。どうやったら意図が伝わるか、わかりやすくなるかを考えて、約1年かけて完成させました。
――拝読したのですが、一人称が忍者みたいでしたね(笑)。
なんとなくですけど、「僕は~」と書くよりも「拙者~」みたいな感じで忍者と名乗りたくて。
――さすが、お笑いの要素を(笑)。『忍者ハットリくん』は1960年代の漫画ですが、ご覧になったことが?
作者の藤子不二雄Ⓐ先生が自分と同じ富山県出身なので、富山県で有名なんです。中学くらいの時にアニメを観ました。
地元・富山は自分のすべて。応援を受けて奮い立つ気持ち
――地元の富山県魚津市道下公民館の方が、SNSで服部四段の対局があるたびに熱いメッセージを発信されています。
すごく嬉しいですね。SNSを担当してくださってる方が誰なのかすら私は知りませんが、富山に帰るタイミングで伺いたいと考えています。富山にいなかったら将棋にも出合っていないですし、棋士にもなっていなかったと思います。地元は、今の僕のすべてです。
――将棋との出合いを教えてください。
もともと将棋のルールは知っていて、小学3年生の時に担任の先生からJT杯の案内をもらったんです。そこで負けて悔しかった気持ちをバネに、本格的に始めました。地元は将棋が盛んというわけではないのですが、先ほどの道下公民館に将棋サークルがあったのでそこに通って。小学5、6年生の時には棋士になりたいと決め、関西の大学に進学する姉と一緒に、中3で富山から大阪に引っ越しました。その時、父は新潟で単身赴任をしていて。離れて暮らすことになったのですが、応援してくれた家族には、本当に感謝しています。
――出口若武六段との第七期叡王戦・挑戦者決定戦には、北日本新聞と富山新聞の方がいらっしゃっていたと伺いました。
取材があることは聞いていたのですが、電話取材かと思っていたので、まさかいらっしゃっているとは思わなくて。びっくりしました。
――服部四段が挑戦者になられていたら、地元では号外を出す予定だったそうです。それで記者の方がお越しになっていたと。
えっ、本当ですか?号外...そうだったのか......それを聞いたら次は絶対勝ちたいですね。ちょっと今、応援していただいているのを感じて嬉しさもありますが、応えられなかった悔しさもわいてくる、そんな気持ちです。...いや、今になって悔しさ倍増してきましたね。
――富山県出身の棋士で、タイトルホルダーは?
おそらく、いなかったと思います。富山の悲願でもあるので...期待に応えられるよう、頑張ります。
10問アンケート
インタビューで聞ききれなかった10の質問を、服部慎一郎四段に伺いました。
- Q1
- お名前の由来を教えてください
- 服部
- 両親が、女の子だったら"~子"、男の子だったら"~郎"という字をつけたいと思っていたそうです。私は長男だったので"~太郎"か"~一郎"が候補になり、気に入った字と音が「慎」だったそうです。祖父の名前に一が入っていたので、その字をもらって慎一郎に決めた、とのことでした。
- Q2
- お好きなお店のお好きな一品は?
- 服部
- 関西将棋会館の1階にあるレストラン『イレブン』ですね。研修会のお弁当がイレブンだったのもあって、思い入れがあります。好きなのは「珍豚美人(ちんとんしゃん)」。金曜日の対局で食べるのでいつも楽しみにしています。お酒はそこまで飲まないです。オレンジジュースが多いです。
- Q3
- お好きな音楽は?
- 服部
- 移動中やランニングの時に、最近だと初音ミクの"千本桜"を聴いたりします。
- Q4
- 映画を観に行くことは?
- 服部
- 学生時代やコロナが流行る前は、漫才の相方とよく映画館に行きました。何を観るか10個くらい候補を挙げてルーレットで決めて。ホラーもあればラブロマンスもあれば。僕は『ロッキー』が好きで、最近は『激突!』という古い映画も観ました。
- Q5
- お好きな本は?
- 服部
- 『将棋の渡辺くん』がすごく好きです。ぬいぐるみを大事にするのは意外で、普段の渡辺さん(渡辺明名人)からなかなか想像がつかないですよね。
- Q6
- 昨年も今年も「ABEMAトーナメント」に出場されています。感想をお聞かせください。
- 服部
- 去年は棋士になってすぐのタイミングだったので、指名していただけて驚きました。今年も参加できて嬉しいです。団体戦は、嬉しさが三倍、悔しさも三倍になりますね。チーム一丸で頑張りたいです。
- Q7
- 棋士になっていなかったら何になっていたと思いますか?
- 服部
- あまりイメージがわきませんが、大学に行って就職していたのかなと思います。事務とかデスクワークですかね。
- Q8
- 行きたい場所はありますか?
- 服部
- 温泉が好きなので、温泉地ですね。城崎温泉がお気に入りです。いつか、相方とも行きたいです。
- Q9
- 10年後、32歳。どんな棋士になっていたいですか?
- 服部
- まずはプレイヤーとして、第一線で活躍する棋士になっていたいです。そしてやっぱり、地元での普及は取り組んでいきたいですね。まずは公民館の方に会いに行って(笑)。山崎さんのように、自分も子どもたちから憧れられる棋士になりたいと思っています。
- Q10
- 今日の感想と、応援してくださっている方にメッセージをお願いします
- 服部
- 僕は上がってしまうタイプで、実は今日もけっこう緊張していたんです。こういう服を着るのも、バンダナを巻くのも初めてで、新しい経験ができました。すごく楽しかったです。
いつもとは違う姿をご覧いただき、ありがとうございます。これからも日々精進しますので、服部将棋を楽しんで観ていただけたらと思います。
写真:阿部吉泰
服部慎一郎四段
1999年8月2日生まれ。富山県富山市出身。2013年4月、6級で中田章道七段門下に。2020年4月、四段。奨励会時代に出場した第9期加古川青流戦で準優勝を果たし、プロ入り前からその実力の高さを示した。2020年度、初参加の第79期順位戦C級2組では8勝2敗という成績を残す。2021年、第11期加古川青流戦で棋戦初優勝。居飛車党で、力戦を得意とする若手棋士。苗字にちなんで「ニンニン」という愛称で親しまれる。