ライター相崎修司
チーム稲葉VSチームエントリー 第5回ABEMAトーナメント~本戦トーナメント2回戦 第二試合振り返り~
ライター: 相崎修司 更新: 2022年08月24日
8月20日(土)に放映された第5回ABEMAトーナメント本戦トーナメント2回戦第二試合、チーム稲葉(稲葉陽八段・服部慎一郎四段・出口若武六段)とエントリーチーム(黒田尭之五段・折田翔吾四段・冨田誠也四段)の戦いを振り返る。
振り駒の結果、第1局はエントリーチームの先手で、▲黒田―△出口という組み合わせに。出口と黒田は四段昇段が2019年4月の同期である。オールラウンダーの黒田が三間飛車に振ると、出口は銀冠で対抗。中盤で黒田の動きをとがめてリードを奪った出口が、最後は長手数の即詰みに打ち取り、幸先のよい勝利を上げた。
【第2局▲出口若武六段-△冨田誠也四段】
続く第2局、エントリーチームは冨田が出陣したのに対し、チーム稲葉は出口が意表の連闘。冨田の四間飛車に対し、本局の出口は居飛車穴熊を目指す。穴熊の完成前に冨田が仕掛けて、後手が攻めきれるかどうかという展開になった。
【第1図は△3六銀まで】
途中は出口が受け切ったようにも見えたが、冨田も細かい攻めをつないで形勢は混沌としていく。そうして迎えたのが第1図だ。先手玉は△4七銀不成までの詰めろが掛かっている。
出口は▲3三馬と桂を外して、△4七銀不成に▲4五玉を用意した。実戦は▲3三馬に△4九竜▲6五歩△4七竜▲6六玉△5三銀▲7五桂と進み、自玉の安全を確保してから後手玉を寄せに出た出口が2連勝。
だが、▲3三馬は危うく敗着になりかねなかった。以下△4七銀不成▲4五玉に△2七角があり、▲4四玉△5三金▲3五玉△3六角まで、先手玉は詰んでいた。▲3三馬では▲3三歩成と、3四の地点を空けておく必要があった。しかし、後に馬の活用を図ることを考えると▲3三馬と引きたくなるのは致し方ないし、それでも先手玉が詰んでいることを発見するもの、10秒足らずの持ち時間では難しいだろう。
第3局は▲折田―△服部戦に。折田としてはチームの悪い流れを断ち切りたかったが、相居飛車の力戦から服部に攻めを受け止められてしまった。先手の攻めが完全に切れたところで終局となり、チーム稲葉が3連勝。
【第4局▲服部慎一郎四段-△黒田尭之五段】
第4局、まずは1勝が欲しいエントリーチームは、本戦一回戦で流れを変える勝利を上げた黒田が登場。対するチーム稲葉、今度は服部が連闘する。戦型は黒田が第1局に続いて三間飛車を採用した。服部は居飛車穴熊に潜って対抗する。中盤で玉頭戦が生じ、8筋の制空権を奪った服部が優位に立つ。
【第2図は△6三銀まで】
第2図から▲6九飛△6四歩▲7五銀でも先手優勢だが、服部はここで▲6三同飛成△同金右▲8三歩成と決めに出る。△8三同玉は▲6一角で寄り筋だ。黒田はやむなく△7一玉と引いたが、このと金が残るのは大きい。以下▲7二銀△6二玉▲7一角△5一玉▲6三銀成と進み先手勝勢。先手は自玉の穴熊が手付かずなのも大きい。
【第5局▲冨田誠也四段-△稲葉陽八段】
第5局、満を持してリーダーの稲葉が登場。チームメイトの奮戦で、団体戦としてはだいぶ余裕があるが、ここで負けたらリーダーの顔が立たないといったところか。冨田との一戦は、中飛車相手に後手番ながら積極的に動き、馬を作って中盤でリードを奪った。しかし冨田も見えにくい角打ちを放って差を縮め、簡単には土俵を割らない。
【第3図は△4三金寄まで】
第3図。後手の飛車が▲7五銀で取られる形だが、ここで自陣を引き締める△4三金寄が落ち着いた一着だ。対して▲7五銀は△8七飛成で飛車角交換となり、持ち駒を手放した先手が面白くない。実戦は▲9八角だが、以下△9六歩▲8七金△9七歩成▲8六金△9八と▲6一飛△3二金▲8一飛成△6八角と進んで後手の優勢がはっきりした。先手は8六金の離れ駒が痛い。
チーム稲葉が圧巻の5連勝で準決勝進出。予選Dリーグ第三試合での対チーム康光戦に続く、ストレート勝ちである。今回、チーム稲葉以外にストレート勝ちを達成したチームはなく、「サンライズワン」の強さが存分に発揮された。「いい流れを作ってくれたチームメイトの2人に感謝ですね」と、局後に稲葉は語った。準決勝ではチーム永瀬と戦う。
以下は二回戦第二試合の最終結果。
第1局 出口○―●黒田
第2局 出口○―●冨田
第3局 服部○―●折田
第4局 服部○―●黒田
第5局 稲葉○―●冨田
総合 5勝―0勝
【個人成績】
稲葉八段 1-0
服部四段 2-0
出口六段 2-0
黒田五段 0-2
折田四段 0-1
冨田四段 0-2