チーム渡辺VSチームエントリー 第5回ABEMAトーナメント~予選Eリーグ第二試合振り返り~

チーム渡辺VSチームエントリー 第5回ABEMAトーナメント~予選Eリーグ第二試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2022年07月20日

 7月16日(土)に放映された第5回ABEMAトーナメント予選Eリーグ第二試合、チーム渡辺「マンモス」(渡辺明名人・近藤誠也七段・渡辺和史五段)対エントリーチーム「下克上」(黒田尭之五段・折田翔吾四段・冨田誠也四段)戦の模様をお伝えする。

【第1局▲折田翔吾四段-△渡辺和史五段】

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 第1局は振り駒の結果、エントリーチームの先手番に。対戦カードは渡辺和―折田戦で、相掛かりの出だしから折田が矢倉、渡辺和が銀冠に組み合う持久戦となる。途中は渡辺明が「ダメ出ししまくっている、これは和史、あとで見たらショックだよ(笑)」というほど、後手の渡辺和が作戦負けの展開になっていたが、細い攻めをつないで混戦に持ち込み、最後は入玉した先手玉を即詰みに打ち取って逆転勝ち。「一発狙いみたいなのが決まって勝ちに持って行けたのはよかったかなと。内容はどうあれ、幸先のいいスタートが切れたと思います」と渡辺和は語った。

 第2局は渡辺明―冨田戦に。ここは渡辺が名人の貫禄を見せたが、冨田も非勢な将棋で容易に腰を割らず、200手超えの熱戦となった。「粘り強いよね。あれくらいじゃないとエントリーは勝ち抜けないよね」とは局後の渡辺明の言葉である。

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【第4局▲渡辺和史五段-△黒田尭之五段】

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 エントリーチームは苦しい出だしとなったが、第3局では黒田が近藤に快勝すると、続く第4局でも黒田が連続で出陣する。渡辺和との一戦は黒田の四間飛車で対抗形に。序中盤は「(黒田君は)もっといい作戦持っているでしょう」と渡辺明が言うほど、後手の作戦負けとなったが、エントリーチームに共通するのが粘り強さだ。

【第1図は▲8五歩まで】

 第1図からの△3六歩が一見、先手の玉頭攻めと比較して遅そうだが、次に△3七歩成~△4五角が実現すると、4二の飛車の活用も見えてくるので、後手の視界がだいぶ開けてくる。渡辺和は△3六歩に▲3四歩△同角▲3五金と前述の順を防いだが、ここに金を使わされたのは大きい。最後は後手が先手の8筋攻めを逆用する形で先手玉に迫り、逆転勝ち。黒田が2連勝でタイに戻した。

 第5局は渡辺明―冨田戦の再戦。冨田の中飛車穴熊から難解な終盤戦になり、先手にもチャンスはあったが惜しくも捕えきれず、渡辺明が勝利し、再び星を先行させた。

【第6局▲近藤誠也七段-△折田翔吾四段】

【第2図は▲2二歩まで】

 第6局は近藤―折田戦。「準備した作戦でいきまして、時間の面でも有利に進めることができた」という折田が仕掛けの段階からペースを握る。第2図の桂取りに構わず、△8六歩▲7六銀△4五銀▲同銀△6六桂▲6八金右△7八桂成▲同金△4六角と攻め立てた後手の快勝譜となった。

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 第6局を終えて3-3。改めての三番勝負となり、残る出番も全員が1局ずつだ。第7局は渡辺和―折田戦。タイに戻した勢いを生かしての連闘に出た折田だが、連投の疲れも出たか中盤で一失が生じ、これを渡辺和が逃さずに勝ち切る。この1勝でチーム渡辺の予選通過が決まった。

【第8局▲渡辺明名人-△黒田尭之五段】

【第3図は△1九成桂まで】

 第8局は渡辺明―黒田戦。ここまで2連勝同士の対戦である。だがここは名人が強かった。中盤からジリジリとリードを広げて完封状態に。第3図から▲1一馬でも勝ちだが、実戦は▲5六飛と歩を取り、△4三香▲同金△同歩に▲9八歩と受けた。「うおーっ、マジか」「これは辛い」と両チームの作戦部屋から悲鳴が上がる。▲9八歩を見て黒田はすぐに投げた。「横綱相撲ですね」とはチーム渡辺の作戦部屋。

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 チーム渡辺はリーダーの3連勝もあり、予選Cリーグの1位通過を決めた。残る1枠はチーム藤井対、エントリーチームの直接対決に全てが委ねられた。7月23日(土)放映の予選Eリーグ第三試合をどうぞお楽しみに。

【総合成績】
第1局 渡辺和○-●折田(第1局はエントリーチームが先手番。以下は交互)
第2局 渡辺明○-●冨田
第3局 近藤●-○黒田
第4局 渡辺和●-○黒田
第5局 渡辺明○-●冨田
第6局 近藤●-○折田
第7局 渡辺和○-●折田
第8局 渡辺明○―●黒田
総合5勝―3勝

【個人成績】
渡辺明名人 3-0
近藤七段 0-2
渡辺和五段 2-1
黒田五段 2-1
折田四段 1-2
冨田四段 0-2

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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